戦後まもなく国民から公募して生まれた「平和百人一首」を紹介するシリーズです。昨年末にお知らせしたように、今年はこのシリーズの掲載頻度を高めます。
「平和百人一首」とこのシリーズについての解説は、初回記事と2回目の記事をご参照ください。前回記事はこちらで見られます。
なお、かなづかいや句読点は原文のままとするので、読みづらい点はご了承ください。
平和百人一首
春の野をわが恋ひくればみなし児の くろき片手にれんげ匂へり
埼玉県浦和市針ヶ谷 町田 知世*
6月12日は土曜日のこととて、潮風の心地よく吹く浜離宮には、午後の陽を一ぱいに受けて務人、学生子供等が三々五々集り、海を眺め、草に憩ひ、土を蹴ってあそんでいる。
私も心から開放された気持で、青空の下、人人のそれにならつて緑のしとねに座る。何と静かなのだ......
ふと前方を見やると、敷きつめたれんげ草の中に、靴磨きの2人の少年が商売道具の小さな台を傍に放出して手いつぱいにれんげを摘んでいる。
12、3歳と見られる大きい方の少年が誰に教えられたかまたは覚えていたのか、花の首飾りをせつせつと編んでいる。
その無心な様は、久しい間忘れられていただけに涙の出てくる程に懐かしく、底知れぬ暖かい想いで包むのだつた。ああこの様をただ一人眺めるには余りに物足りなく、泌泌と感じるままに拙い一首を詠みました。
(知世子*)
(*オリジナル通りに記しました。表記の違いの理由はわかりません。)
前回紹介した戦争体験者である知人と、その後メールでやりとりしました。また、この場を借りて、彼女のメッセージをご紹介します。
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今はあの戦前と実に類似しています。ぞっとして震えが起きるくらい似ています。
ですから気が気ではありません。知らない方達がのほほんとしていらっしゃるのが、
歯痒くて歯痒くて、こんな大事な事なのにとはらはらいらいらしています。
気がついた時では遅すぎるのです。また同じ轍を踏んではなりません。
若い方達しっかりしてください。年寄りの体験を馬鹿にしないで聞いて下さいと
申し上げたいです。
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