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映画レビュー ~米国の放射能汚染「SILENT FALLOUT」~

2025年02月26日 | 政治・社会

(↑ 町田市「薬師池公園」にて2025年2月16日撮影
※記事内容とは関係ありません。)

 アメリカ大陸全土の放射能汚染の実態を米国民に知らせる目的で作られたドキュメンタリー映画「SILENT FALLOUT」を、東都生協が私の地元で主催した映画会で観てきました。フォールアウトとは核爆発による放射性降下物、いわゆる「死の灰」のことです。

    

 監督は伊東英朗(ひであき)氏。私や妹と同世代の伊東氏が放射能の危険性について調べるきっかけとなったのは、1950年代に米国が太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験による被爆を受けた船が、第五福竜丸だけではなく1,000隻以上にも及んでいたという事実(こちらの過去記事の<第五福竜丸 豆知識>欄をご参照ください)と、日本政府が60年もの間それを隠していたという事実を知ったことだそうです。そして最初に制作したのが、それを扱ったドキュメンタリー映画「放射能を浴びたX年後1」、さらにその3年後に制作したのが「放射能を浴びたX年後2」です。

 それらに続いて制作された今回の「SILENT FALLOUT」は、「日本は世界で唯一の被爆国ではなかった。アメリカ政府が行った核実験によって、アメリカは101回の被爆国だ。アメリカ全土が放射能で汚染されている」という印象的な文言で始まります。伊東氏は、汚染の実態とアメリカ政府がその事実を国民に隠したことを知らせ、声を上げるように促す活動「SILENT FALLOUT Project」を展開中です。

 この映画では、特に核実験の回数の多かったネバダ州の核実験場周辺での放射能被害に焦点を当てています。東側に隣接するユタ州のソルトレイクシティ(Salt Lake City)は谷間に空気がたまりやすく、家族全員がガンになったり亡くなったりしている住民が多数おり、核実験による健康被害は明らかだったにも拘わらず、政府からの補償は受けられていませんでした。
 一方、同じユタ州のアリゾナ州に近い場所(核実験場から100km東)にあるセイントジョージ(St. George)という都市の住民からは、ソルトレイクシティの住民を上回る量のセシウム131が検出されており、核実験との因果関係を認めた政府から補償を受けていました。実験場との間に高い山のような遮るものがないため、偏西風によって降下物が運ばれたことが認められたからです。
 そこで、ソルトレイクシティの医師でもある母親、ルイーズ・ライス氏は、子どもたちの抜けた乳歯を集めて放射線量を測定、被爆の証拠として示しました。ストロンチウム90がカルシウムと元素構造が似ており、骨に蓄積されやすいことに着目したのです。やがてそれは母親たちの間に大きな活動として広がり、それを知った当時の大統領であるJ.F.ケネディは彼女から電話で傾聴、1963年6月10日、大気圏内核兵器実験の停止を国民に宣言するに至りました。西海岸近くのネバダ州から3,600Km離れた東海岸のニューヨーク州の住民からも、放射能は検出されていたのです。

 さらに、水爆が広島型原爆1,000個分の威力を持つと言われていた当時、キリバス共和国のクリスマス島では、イギリスとアメリカが計20回以上の水爆実験を行っています。イギリスが自国の若い兵士を多数立ち会わせて水爆実験を行ったところ、彼らの間に被爆によるものと思われる疾病が後に広まったことも、この映画では取り上げられています。
 参照:「日本原水協」 『国際情報資料9』より
  「生涯つづく『クリスマスプレゼント』ー論議を呼ぶ1958年のイギリス水爆実験ー」 
    英オブザーバー紙(『ジャパンタイムズ』 1997年12月25日付)
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 クリスマス島の人口は3,000人だが、50歳を越える人はほとんどいない。平均余命は55歳である。医療記録は存在しないが、一人しかいない医師は、年のいった住民が、実験のあと「奇妙な病気」を訴えたと言っている。イギリスが補償を払ったことはない。

 先月、ヨーロッパ人権裁判所において、イギリス政府を相手取り、実験期間中クリスマス島で役務についていた部隊から訴訟が起こされた。ほとんどが徴集兵からなるおよそ12,000人の軍人が実験を目撃し、そのおよそ60パーセントが放射線にかかわる疾病にかかった。10月末、スコットランドのダンディー大学の研究者たちが発表した研究は、「若年死の率が加速」していることを明らかにしている。兵士の多くは50歳代で死亡しており、その死因にはしばしば白血病や多発性骨髄腫が見受けられる。
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 自国の兵士を多数立ち会わせた目的は何だったのでしょう? 被爆による人体への影響を調べるため、つまり人体実験だったのでしょうか? どこの国の政府も、自国が他国より優位に立つためには、自国民の多少の犠牲は辞さないということでしょうか...。

 アメリカの被爆者が「被爆者には伝える責務がある」と、被爆者の妻が「生きている限り夫のことを伝えていく」と、映画の最後に振り絞るようにして言った言葉が心に残りました。日本の被爆者と思いは同じなのでしょうね。そして、伊東監督の「この映画を観た人がなんらかのアクションを起こしてくれると嬉しい」という言葉を私は受け止めたので、私なりのアクションの一つとして今回ここで伝えました。

                

 伊東氏作成の冊子『SILENT FALLOUT 北米上映ツアー報告』によると、2024年には43日間にわたって全米20ヵ所で上映ツアーを行い、600人以上と意見を交わした結果、米国民は兵器としての核と原発としての核という2種類の核と共存していること、核と隣り合わせの生活をしていることを痛感したそうです。ワシントン州ポールスポにある「グラウンドゼロ非暴力行動センター」はキトサップ海軍基地に隣接しており、「立ち入り禁止」の表示から1マイル先には1,000基の核弾頭が存在するとか...。
 今年以降はさらなるツアーが北米やヨーロッパで計画されています。今後の目的であり課題は、
 1.アメリカ大陸全域の放射能汚染の事実を伝え、米国民があまねくヒバクシャであることを自覚し、
   当事者意識を持った上で核問題を議論してもらう。
 2.米国議会でこの問題を議論してもらう。
 3.核問題を地球規模の環境問題として世界中の人が認識する。
 残念なことに、過去3年間で1,000万円近くの赤字が出ているそうですが、伊東氏は老後のための資金を注ぎ込み、「放射能汚染のない地球を22世紀の子どもたちにバトンタッチしたい!」という初志を貫徹する覚悟でプロジェクトを続けています。私はこの映画を観て、アメリカではもちろんのこと、日本で、世界中で、ぜひ多くの人に観てほしいと思っています。機会があったらぜひご覧になってみてください。そして、広島の被爆二世として、プロジェクトへのカンパもお願いします。寄付はこちらからできます。

 「放射能を浴びたX年後1」のサイトに掲載されている動画(「SILENT FALLOUT」の映画でも紹介されています)でわかりますが、米国の機密文書からわかったデータによると、1954年3月にビキニ環礁で行われた米国の水爆実験「ブラボー」による放射線降下物は、1週間で米国本土に達しています。また、その2ヵ月後に行われた実験「ヤンキー」による降下物は、同様にほどなく日本に達し、全土を覆っていたことがわかります。
 私は40代で乳ガンを発症しましたが、母(胃ガンの内視鏡的手術を3回受けました)の被爆との因果関係はわかりませんし、当然証明もできません。さらには、米国等の核実験全盛期に生まれ育っているので、その影響があるに違いないとずっと思ってきましたが、この動画を見てその思いを強くしました。でも、やはりこれも証明できません。
 「日本人の2人に1人が生涯のうちにガンになる」とよく耳にします。「日本人女性の9人に1人が乳ガンにかかる時代」とも言われています。「寿命が延びたことが原因」「食の欧米化が原因」ですか? 「みんなでガンになれば怖くない」ですか? 世界一食品添加物の基準が緩い国とはいえ、そんな冗談のような詭弁の刷り込みはもう止めてほしいです。(因みに、私の母校の女子大の1年次のゼミメンバー18名のうち、6名がガンに罹患、さらにそのうちの3名が他界しています。まだ60代後半に入ったばかりですけれど...(^^;)
 因みに、ソルトレイクシティは、2002年に冬季オリンピックが開かれたことで日本でもその名が広く知られるようになったと思われますが、我が夫は仕事で30回以上行っているのです。でも、彼も私も、かの地が米国内での放射能汚染地の代表格であることなど知る由もありませんでした。

 

                        

 

 ここからは、このトピックに付随・関連する情報を記しておきます。

この映画を主催した東都生協からの情報です。
米国の調査では、原発から半径160Km以内では乳ガン患者が多発していることが確認されている。全国に50基以上原発がある日本では、全土がその地域に当てはまってしまう。 
チェルノブイリ原発事故のときは、放射線降下物が偏西風に乗って地球を2周半していたことがわかっている。
『僕と核』(shing02というペンネームで核について解説されているウェブサイト)

『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』 広瀬 隆著 文藝春秋刊行(1986年)
 本書では、ネバダ核実験場の近くのロケ地で撮影された映画「征服者」の出演者(ジョン・ウェインなど)や関係者の多くがガンや白血病で亡くなっている事実が取り上げられている。

1945年~1998年に地球上で起こった核爆発と行われた核実験2,053回を、時系列・実施場所・実施国・実施回数の四次元で視聴覚的、動的に表示した動画「世界の核実験地図」(橋本 公(いさお)氏制作)がウェブ上で公開されています。こちらの過去記事をぜひご参照ください。

 

 今回もまた長~くなりました(^^; 最後までご高覧くださり、誠にありがとうございましたm(__)m

 

 字幕がとても見づらく(位置が右横の縦書きだったことと、私の左目の黄斑前膜のせいだと思います)、英語部分はほとんど英語で聴いたので、理解が間違っている部分があったらお許しくださいm(__)mのtakuetsu@管理人でした(^^ゞ

 


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