22.
2005年5月18日。T南部地域病院で放射線照射の治療計画を立てる日だ。
初めて入った治療室の待合室は、大きなガラス窓から外の景色が望め、とても明るかった。壁一面にカラフルな明るい絵が描かれており、ソファの横にはテレビが置かれている。N医科大学付属病院の治療室が地下2階にあって暗い雰囲気だったのとは、対照的だ。きちんとした治療さえ受けられれば、この病院でよかったのかもしれないとさえ思った。
治療室に入ると、HPで「最新の自慢できるものが配備されている」と豪語されているCTの診断装置が横たわっていた。でも、私には、手術前にN医科大学付属病院で胸や上腹部を撮ったときのと同じように見える。
裸の上半身にバスタオルだけかけ、台に仰向けで横たわった。技師は30代の男性と20代の女性だ。いずれにしても、手術痕を見られるのにはやはり抵抗があった。彼らも見慣れているからこそ、患者のそんな心理を重々承知しているのだろう。「失礼いたします」と、とても丁重に頭を下げ、厳粛な態度でバスタオルをはずしてくれた。
腕を頭の上に上げるよう言われる。「痛くないですか?」と訊かれ、「放射線治療は、術後の傷が落ち着き、腕が上げられるようになったら開始する」と本に書かれていた意味が初めてわかった。私は乳房を温存できたし、リンパ節も切除していないので、腕を上げることにさほど痛みを感じないが、この姿勢をとることでさえ苦痛な人が少なからずいるのだろうと、思い至った。じっとしているように言い渡し、技師たちは部屋から出て行った。
ガラス窓の向こうで、M先生と技師がモニターか何かを見ながら機械を操作しているようだ。マイクを通してアナウンスがあり、台が勝手に動き、ドーナツのような機械の中に入った。ワッカというかトンネルの中で何かがクルクル回ったり、止まったりを何度か繰り返した。
10分ほど待たされただろうか、再び技師たちが入ってきて、照射部位にマーキングすると言う。治療器の寝台に寝かされ、慎重に体の位置を決めた後、光が当たっている場所に印をつけるらしい。紫色のヨードチンキみたいなインクをつけた筆で、2人がかりでやはり慎重に行われた。
術側乳房と脇の2箇所につけられた印を見ると、驚くというよりは、笑ってしまうほど大きな十文字だった。前回看護師から下着が汚れると言われたが、これでは無理もないと納得する。印が描かれた後、その位置が正しいかどうか確認され、その日の作業は終わった。技師さんは2人とも、終始とても感じがよかった。
前回行った諸検査の結果に問題はなかったので、予定どおり5週間、計25回照射するとM先生から告げられる。週明けから毎日10:30前後に来るように言われた。10:30前後と幅があるのは、同時刻に複数の予約患者がいて、その日の受付順に治療するからだそうだ。「通い始めたらペースがつかめてくると思うので、ご自分の都合や、混み具合などを見ながら、調節なさってください」と技師さんに助言される。
手術前から休んでいるヨガや体操教室のレッスンに、引き続き通えないことになる。あ~あ。
2005年5月18日。T南部地域病院で放射線照射の治療計画を立てる日だ。
初めて入った治療室の待合室は、大きなガラス窓から外の景色が望め、とても明るかった。壁一面にカラフルな明るい絵が描かれており、ソファの横にはテレビが置かれている。N医科大学付属病院の治療室が地下2階にあって暗い雰囲気だったのとは、対照的だ。きちんとした治療さえ受けられれば、この病院でよかったのかもしれないとさえ思った。
治療室に入ると、HPで「最新の自慢できるものが配備されている」と豪語されているCTの診断装置が横たわっていた。でも、私には、手術前にN医科大学付属病院で胸や上腹部を撮ったときのと同じように見える。
裸の上半身にバスタオルだけかけ、台に仰向けで横たわった。技師は30代の男性と20代の女性だ。いずれにしても、手術痕を見られるのにはやはり抵抗があった。彼らも見慣れているからこそ、患者のそんな心理を重々承知しているのだろう。「失礼いたします」と、とても丁重に頭を下げ、厳粛な態度でバスタオルをはずしてくれた。
腕を頭の上に上げるよう言われる。「痛くないですか?」と訊かれ、「放射線治療は、術後の傷が落ち着き、腕が上げられるようになったら開始する」と本に書かれていた意味が初めてわかった。私は乳房を温存できたし、リンパ節も切除していないので、腕を上げることにさほど痛みを感じないが、この姿勢をとることでさえ苦痛な人が少なからずいるのだろうと、思い至った。じっとしているように言い渡し、技師たちは部屋から出て行った。
ガラス窓の向こうで、M先生と技師がモニターか何かを見ながら機械を操作しているようだ。マイクを通してアナウンスがあり、台が勝手に動き、ドーナツのような機械の中に入った。ワッカというかトンネルの中で何かがクルクル回ったり、止まったりを何度か繰り返した。
10分ほど待たされただろうか、再び技師たちが入ってきて、照射部位にマーキングすると言う。治療器の寝台に寝かされ、慎重に体の位置を決めた後、光が当たっている場所に印をつけるらしい。紫色のヨードチンキみたいなインクをつけた筆で、2人がかりでやはり慎重に行われた。
術側乳房と脇の2箇所につけられた印を見ると、驚くというよりは、笑ってしまうほど大きな十文字だった。前回看護師から下着が汚れると言われたが、これでは無理もないと納得する。印が描かれた後、その位置が正しいかどうか確認され、その日の作業は終わった。技師さんは2人とも、終始とても感じがよかった。
前回行った諸検査の結果に問題はなかったので、予定どおり5週間、計25回照射するとM先生から告げられる。週明けから毎日10:30前後に来るように言われた。10:30前後と幅があるのは、同時刻に複数の予約患者がいて、その日の受付順に治療するからだそうだ。「通い始めたらペースがつかめてくると思うので、ご自分の都合や、混み具合などを見ながら、調節なさってください」と技師さんに助言される。
手術前から休んでいるヨガや体操教室のレッスンに、引き続き通えないことになる。あ~あ。