(実画像使用!!)
今から10年くらい前のこと。
とあるマンションの中庭にある、
木椅子(画像)に、
スーツを決めたジジイと、
ドレス姿のババはんが来て、
同時に腰掛けた。
ジジイは大声で、
「領主が着座いたしたのだぞ!誰もおらぬのか⁉️」と大声出した。
すると、
マンションから、
ぞろぞろ人が集まって来た。
その中から、
マンションの自治会長の男性が現れ、
「これは御領主と奥方様!ご機嫌よろしゅうございます」と、
うやうやしく語りかけた。
ジジイとババはんは、
「よきにはからえ」と答えた。
集まった人々も、
「御領主様!奥方様!」と呟きながら一礼した。
ジジイは人々に、
「お前たち。なぜ年貢を納めぬのじゃ⁉️」と強く言い放つと、
人々は、
「御領主!奥方様!生活が苦しゅうございます!」と答えたので、
ジジイは、
「いかがいたしたのじゃ⁉️」と尋ねた。
人々は、
「砂嵐に山火事にイナゴの大群に苦しめられ、作物は枯れ果てました!」と口々に答えると、
ジジイは「不憫よのぉ!」と同情して、
ババはんが用意した財布から、
集まった人々に千円ずつ手渡した。
人々はうれしそうに、
「ありがとうございます。御領主様。奥方様」と感謝の言葉を述べると、
ジジイとババはんは、
満足そうに帰って行った。
ここでこのジジイとババはんの正体やけど、
定年退職した地方公務員夫婦に認知が入った姿やった。
二人揃って認知が入り、
こうして時々、
御領主御着座専用木椅子(勝手に命名)に、
二人は腰掛け、
最初は年貢を要求するも、
生活苦を演じるマンション住民を憐れみ、
ひとりひとりに千円をやるのが常やった。
マンション住民はとても喜びながらも、
「地方公務員が痴呆公務員になった」と同情した。
そんな御領主と奥方こと元地方公務員夫婦が、
この出来事の3年後に、
蓮の咲いているところに旅立った。
マンションの住民たちは、
あの、
御領主御着座専用木椅子をいつも見ながら、
新しい、
気前のいい、
御領主が現れて来るのを待ち望んでいるという。