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韓国発デジタル漫画「ウェブトゥーン」が世界的成功、日本に欠けている視点とは

2022-08-26 07:04:20 | 韓国
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韓国発デジタル漫画「ウェブトゥーン」が世界的成功、日本に欠けている視点とは

主にスマートフォンで読むことを想定した、韓国生まれの縦スクロールのデジタルマンガ「ウェブトゥーン」が、韓国を飛び出して、日本を含む世界で成功している。米国で大きな賞を受賞したり、ウェブトゥーンを原作とする人気ドラマが世界中で配信されたりしているのだ。このウェブトゥーンの台頭は、何を意味しているのだろうか。日本のマンガにはなかった、成功のポイントとは?(韓国在住ライター 田中美蘭) 

 韓国生まれ、スマホに最適化したデジタルマンガ  韓国で生まれた「ウェブトゥーン」(Webtoon)が海外でも注目と人気を集めている。ネットに掲載されているという意味の「Web」と、マンガ「Cartoon」を組み合わせたデジタルコミックのことだ。Webでの掲載という特性を生かして、作品は縦スクロール、全編カラーというのが特徴であり、コメディー、ラブストーリー、ファンタジーからアダルト物までさまざまなジャンルの作品がそろっている。

日本でも「ピッコマ」や「LINEマンガ」といったアプリや作品のネット広告がひんぱんに掲載されているので、その存在を知っている人やウェブトゥーンという言葉を知らずに読んでいたという人も多いのではないだろうか。 

 韓国で急速にインターネットが普及し、「IT大国」と呼ばれていた2000年代初めにウェブトゥーンは登場した。当初は韓国以外では成長が見込めないものとみられていたが、スマホやタブレット端末の普及により、今では日本や米国など海外でも多くのウェブトゥーン作品が現地語に翻訳され、注目を集めるようになっている。

● 米国でウェブトゥーン作品がマンガの賞を受賞  7月22日、「マンガ界のアカデミー賞」とも呼ばれる「アイズナー賞」の授賞式が米国で行われた。この賞は米国で権威あるマンガ賞の一つとされ、創造力や影響力がある作品へ、部門ごとに賞が贈られる。過去には大友克洋氏の「AKIRA」や、浦沢直樹氏の「20世紀少年」、東村アキコ氏の「東京タラレバ娘」も、アイズナー賞を受賞している。

そして今年、「ベスト・ウェブコミック部門」を受賞したのは、韓国のネイバートゥーンで連載されている「ロア・オリンポス」という作品だった。  「ロア・オリンポス」は、ニュージーランド出身のマンガ家、レイチェル・スマイス氏の作品。

ギリシア・ローマ神話を現代風に再解釈した、ユニークなストーリー設定と独特な画風の作品である。2018年3月に韓国で連載がスタートし、現在まで韓国、欧米の他、日本でも「LINEマンガ」で配信されている。  

またこの作品は昨年も、同じく米国のマンガ賞である「ハーベイ賞」の「デジタル図書部門」を受賞している。米国でまさにウェブトゥーンの力を見せつけている作品なのである。 

 ウェブトゥーンといえば、この「ロア・オリンポス」のように歴史的な話を再解釈したものや、主人公が転生したり、ある人物に憑依して別世界で生きることになったり……という設定やストーリーが定番である。日本のようなマンガ・アニメ大国から見れば、ウェブトゥーンはまだまだ歴史も浅く、作品の層やジャンルに薄さや物足りなさを感じてしまう人もいるだろう。

 ドラマ化され、Netflixで世界配信される  

ウェブトゥーン作品の成功パターンとして大きいのが、作品のドラマ化である。「女神降臨」「わかっていても」「D.P.-脱走兵追跡官-」「キム秘書はいったい、なぜ?」「今、私たちの学校は…」など、ウェブトゥーン発の人気ドラマはたくさんある。

また、これらの多くはNetflixで世界配信されており、ウェブトゥーン作品が広く知られるきっかけになっている。  日本ではしばしば、マンガ家の休養のニュースが報じられると、その働き方が話題になる。特にマンガ雑誌に週刊連載するとなると、アシスタントを起用していてもマンガ家の制作時間は非常にハードといわれている。 

 一方、ウェブトゥーンは、ストーリー構成、作画、彩色などの作業がチームによる分業制で進められるので、日本のマンガ家に比べると作者が疲弊しにくい。

また、この制作スタイルのおかげもあって、ストーリーや作画が映像化をイメージしやすい仕上がりになっているという点も、ドラマ化のしやすさにつながっている。

こうして、ウェブトゥーンを原作とする映像作品をNetflixが制作し、世界中に配信するという流れが出来上がった。両者がタッグを組むことによって世界的なヒットになるという方程式が確立しつつある。

日本の出版業界も変わりつつあるが…… 

 雑誌や本など、紙媒体の発行数が減少しているという話は度々話題に上る。コロナ禍による巣ごもり需要で2020年~21年にかけては一時的に本の売れ行きが伸びたものの、書店の閉店も相次いでおり、厳しい状況が続いていることは間違いない。  

日本に一時帰国したときには地元のなじみの書店が廃業していたし、韓国でもデパートに入店していた大手書店の撤退や規模縮小が相次いでいる。紙媒体の発行数と書店の減少は世界的な傾向といえるのかもしれない。 

 その背景にある理由は、少子高齢化や活字離れもあるだろうが、それよりも大きいのはやはり、コミック、小説、雑誌の書籍全般とニュース記事などを手軽にネットで読むというスタイルが定着したからではないだろうか。

  2021年12月の朝日新聞の記事によると、2019年に日本のコミック販売金額はウェブが紙を逆転した。

2020年には、紙冊子のコミックは2706億円、ウェブトゥーン(コミック)は3420億円と、紙冊子に大きな差をつけていることが分かる。ウェブトゥーンの勢いは当面続き、2028年頃には世界市場で約3兆5330億円に達するという見方も出ている。 

 日本の出版社も、コミックのデジタル化に力を入れるようになってきている。KADOKAWAが縦スクロールのウェブトゥーンレーベル「タテスクコミック」をリリースした他、今年4月には小学館や集英社もウェブトゥーンに本格参入した。

また今や、マンガ雑誌を発行していた出版社の多くはそれぞれにアプリを出し、自社のコミックスをスマホで読めるように配信している。このように日本の出版社もデジタル化を進めてはいるのだが、全体的に「紙のコミックスのデジタル化」という面が強く、制作体制やビジネスモデルを見直すといった根本的な変化とはいえない気がする。 

 日本のマンガやアニメ作品は、世界的に、かつ世代や性別を問わずに愛されヒットするものが多い。そしてそれはウェブトゥーンにはまだ超えられない壁であると思う。

だからこそ、メリット、デメリットを踏まえた上で、韓国のウェブトゥーンのようにインフラを積極的に作り世界市場へチャレンジしていく姿勢が、今の日本の出版業界にも必要なのではないだろうか。

 ウェブトゥーンの死角は、盗作、著作権問題への意識の低さ  韓国は近年、ウェブトゥーンやKPOPなどのカルチャーで世界に存在感を示しつつあるものの、死角があることもまた事実だ。それは、度々起こる盗作問題である。

  5月にネイバーウェブトゥーンで連載を開始した「魑魅魍魎(イメマンリャン)」は、日本の人気マンガ「チェンソーマン」に酷似しているという指摘があり、ネットは騒然となった。この結果、ネイバー側は連載を中止し、謝罪する事態となった。

この他にもウェブトゥーンを巡っては度々、日本のマンガ作品のコンセプトやセリフをまねた、盗作したと思われる作品が問題になっている。

  マンガ作品に限らずで、先日は著名な音楽家、ユ・ヒヨル氏が坂本龍一氏など日本の複数の作品を盗作したのではないかという疑惑が持ち上がり、やはり騒動に発展した。

度々このような問題が起こること自体、韓国ではまだまだ著作権などへの意識が脆弱(ぜいじゃく)であると言わざるを得ない。 

 今は韓国でも、教育現場においては、音楽や美術の芸術系の授業で著作権などについて触れるようになってきている。とはいえやはり、世界に市場を広げていくのであれば、こうしたモラルを守るのは基本的かつ重要なことだ。

こうした問題がいつまでも頻発するようでは、ウェブトゥーンブームはすぐに廃れてしまうであろう。

 日本でマンガやアニメを学ぶ、若い世代の韓国人も  それでも、先日は日本で開催された「まんが甲子園」(全国高等学校漫画選手権大会)で、韓国の女子高校チームが最優秀賞を受賞するという快挙を成し遂げた。

日本のマンガやアニメに幼い頃から慣れ親しんだ世代が、最近では日本の大学や専門学校に留学し、マンガやアニメを学ぶという話も身近に耳にする。

  韓国のウェブトゥーンの進化はどこまで続くのか。また、「マンガ・アニメ大国」である日本はこれからどのようにウェブトゥーンブームを受け止め、変化を遂げていくのか。今後の展開を楽しみに見守っていきたいと思う。

田中美蘭


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