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夫を殺し、子供の前でレイプを繰り返したロシア兵にも法の裁きを 英紙がウクライナの検事総長に独占取材
ロシアがウクライナに侵攻してから2ヵ月以上が経ったいま、ウクライナ検察当局が最初の戦争犯罪裁判を開こうとしている。英紙「ガーディアン」記者らが首都キーウで検事総長に独占取材した。
ウクライナ戦争で最初の戦争犯罪裁判を開くことをウクライナの検事総長が明らかにした。その被告席に立つのは、ウクライナ市民を狙った、または殺害した疑いのあるロシア人の戦争捕虜3人と、ウクライナ人の男性を殺してからその妻をレイプしたとされる兵士1人だ。
開戦以来、イリーナ・ベネディクトワ検事総長率いる検察当局によって届け出られている犯罪は、1万700件以上になる。だがいままでに正式に提訴されている事件や、開戦から2ヵ月が経ったこの重要な分岐点で提訴の備えができている事件はひと握りだ。
最初に出廷することになっているのは、現在ウクライナで拘留されているヴァディム・シシマリン(21)だ。ロシア第4親衛戦車師団(通称「カンテミロフスカヤ」)の司令官で、68歳の男性を殺害した疑いがかけられている。
シシマリン軍曹は、ウクライナ北東部のスーミ地方で戦闘中の2月28日、チュパヒウカ村で一般市民を殺害したとされる。 軍曹はウクライナ人兵士らから逃げようと、盗んだ車に兵士4人を乗せて運転し、それから、自転車に乗って電話していた無防備の男性を射殺したとして告訴されている。
検察当局によれば、軍曹は「その男性が自分たちのことをウクライナの防衛部隊に報告しないよう殺せ」と命じられたという。 この犯罪は被害者の自宅近くで起こり、殺害にはAK-74(カラシニコフ自動小銃74年式)が使われたという。
この事件は5月の第2週に、刑事裁判所に提訴された。「彼はここ(ウクライナ)にいる。われわれが捕まえている」とベネディクトワは首都キーウにある厳重に警備された本部で語る。
当局の報道官は次のように補足する。 「検察とSBU(ウクライナ保安庁)の捜査官は、彼が戦時国際法の違反に加えて計画的殺人にも関わったという充分な証拠を収集している。有罪が確定すれば、懲役10~15年か無期懲役になるだろう」
夫を殺してから妻を繰り返しレイプしたロシア兵士
この事件とは別に、ウラジーミル・プーチン大統領の「特別軍事作戦」が始まった2月24日、ウクライナ東部のハルキウ州にあるコザチャ・ロパニ村で、ロシア兵2人がソ連時代のトラック搭載型122mm多連装ロケット砲で民家や民間施設を砲撃したとされている。
彼らはロシアのベルゴルドから、ウクライナのデルハチ市にある「教育施設」を攻撃したともされている。この兵士らは国境を越えてウクライナに入り、ハルキウ地方で砲撃を続けた疑いがある。
だが、その後ウクライナ軍の捕虜となり、いまは裁判を待っているところだ。 戦時国際法を犯した容疑が挙げられている彼らは、ウクライナの刑事手続法廷にも提訴されているが、その名前と写真はまだ公開されていない。 4人目の被告は、おそらく欠席裁判となる見込みだ。
胸に熊の大きなタトゥーを入れたミハイル・ロマノフという名の兵士は3月に、キーウ郊外のブロワルイ地域にある集落の民家に押し入り、男性を殺害して、4歳の子供がいるその妻(33)を何度もレイプしながら「暴力と武器で彼女と幼児を脅した」として訴えられている。
また別の兵士もこの女性を犯した。事件はまだ裁判所に提訴されてはいないが、検察当局は、被害者の女性が犯人の男を見つけるためにソーシャルメディアで使われていた写真を提供することができた。 ロマノフについてベネディクトワは次のように言う。
「いまのところ彼の居場所はわかりません。まだ戦闘中かもしれないし、ローテーションでロシア連邦に戻っているかもしれないし、死んでいるかもしれない。
いずれにせよ、われわれは彼を欠席のまま起訴したいのです」 「こうした犯罪者にわれわれはあなたがたを見つけ出すということを示したいのです。そして、われわれは他地域にいるほかの人々の死を防ぎます」
ウクライナによる戦争犯罪の可能性も捜査中
ベネディクトワによれば、特定された戦争犯罪の容疑者36人が起訴されているが、その進捗状況はさまざまだという。 壊滅的な被害を受けている港湾都市マリウポリなど、ロシアに占領されているウクライナ東部や南部の領域からさらに多くの犯罪が出てくるのではないかと恐れているとベネディクトワは言う。
無数の残虐行為がなされていると言うベネディクトワの机のうえには、ウクライナ南部のヘルソン市で見つかったロシアのクラスター爆弾の薬莢が置かれている。 「ロシア連邦は自分たちがウクライナに来たら誰もが歓迎してくれるだろうと決め込んでいた。でも全国民から共通の敵として反撃されていると理解したとき、何をしてでもウクライナ国民を怖がらせることにした。
これが私の仮説です」 3月末に、ウクライナ兵士らが戦争犯罪に関わったことをうかがわせる動画がいくつか出てきた。ロシア人の戦争捕虜3人がウクライナ兵に足を撃たれる様子をとらえた動画もあった。こうした申し立てなどについても当局は捜査を続けているとベネディクトワは言う。
「野蛮な者としてではなく法の支配を理解する者として行動すべきです。われわれはなお捜査中ですが、私が理解するに、そうした事実のなかにはでっちあげのものもありえます。いずれにせよ、われわれはその1件だけでなく、複数について捜査を始めています」