いきけんこう!

生き健康、意気兼行、粋健康、意気軒昂
などを当て字にしたいボケ封じ観音様と
元気印シニアとの対話。

千葉市動物公園 その2:直立して訴える風太(ふうた)の心

2009-03-01 17:19:15 | 散策
レッサーパンダは、小動物ゾーンに展示されています。
屋内展示場(以下・パンダ舎)を挟んで、屋外展示場が左右に配置されています。
右側は一家の大黒柱・風太、長女の風美(フウミ)は左側に、夫々が専用の展示場を持っています。
風太や風美の仕事(展示)時間中、パンダ舎へ出入りする正方形の通路は、鉄板の扉で閉められているので、自由に出入りできません。
パンダ舎には、風太とペアリングしたチイチイ、昨年6月27日に生まれたチイタとクウタが展示されています。

千葉市動物公園で飼育されているレッサーパンダの家系図が、パンダ舎の展示版で紹介されています。
話を進める前に、家系図を参考にして風太の家族関係と動向を整理します。

風太の父・風々(フウフウ):平成9(1997)年6月20日、東京都多摩動物公園生
風太の母・楢(ナラ):平成12(2000)年7月17日、広島市安佐動物公園生
チイチイの父・勇勇:平成2(1990)年6月25日、市川市動植物園生
チイチイの母・流星(リュウシン):平成9(1997)年6月20日、東北サファリパーク生

風太:平成15(2003)年7月5日、静岡市立日本平動物園生
チイチイ:平成15(2003)年6月16日、長野市茶臼山動物園生

風太の長男・ユウタ:平成18(2006)年6月2日生、翌々年10月7日秋田市大森山動物園へ
風太の次男・チイタ:平成20(2008)年6月27日生
風太の3男・クウタ:平成20(2008)年6月27日生
風太の長女・風花(フウカ):平成18(2006)年6月2日生、翌々年6月30日山口県周南市徳山動物園へ
風太の次女・風美:平成19(2007)年7月11日生
風太の3女・風鈴(フウリン):平成19(2007)年7月11日生、翌年6月30日長野市茶臼山動物園へ

双子の意味を広辞苑(第五版)で調べておきます。
二子・双子(ふたご)は、双生児(そうせいじ)に同じ。
双生(そうせい)は、同時に二児を生むこと、また、生まれること。
双生児は、同じ母から一回の分娩で二人生まれた子。一卵性と二卵性とがある。

まとめると、風太は、風々と楢の息子、チイチイは勇勇と流星の娘ですね。
風太とチイチイは一昨年7月11日、風美と風鈴を、その前の年はユウタと風花を6月2日に授かっており、昨年6月27日にチイタ、クウタが生まれたので、千葉市動物公園のホームページでは、「三年連続で双子が誕生しました」と紹介しています。

レッサーパンダは、1~4頭の仔を生むとされていますから、2頭の場合は双生ですね。
人の場合は双生児ですが、双子(ふたご)とも呼んでいます。
レッサーパンダに双子が生まれるかどうかの詮索は専門家に任せて、生まれることを前提にします。
人が双子を授かる確率は、その人が持っている遺伝的な要因が強い、とも言われています。
とすれば、双子で生まれた風太とチイチイがここへ移動して来たか、どちらかの血筋に双子の遺伝子が潜んでいる可能性があります。

さて、直立する風太の姿(写真)がメディアで報道されてから、彼は日本中のアイドルになってしまい、ここを訪れる見学者の多くは、それを期待してパンダ舎へ向かいます。
園内で飼育している動物を解説した看板やパネルは、飼育動物の展示場ごとに設けられていますが、パンダ舎に掲示されているパネル数が最も多く、先に紹介した家系図もそのひとつです。

それらの中に、風太とチイチイの子供たちが移動した先での近況を紹介しているものがあります。
残念だったのは、移動先の動物園での近況を紹介されている風鈴と風花は、彼女らが立つように道具立てした状況で写されていたことです。その点、ユウタは、さすがにオスです、カメラ目線で堂々と向かって来る写真でした。
余談ですが、パネルに書かれている内容以上に詳しいことを知りたい人は、説明書を納めてある箱に50円入れると出てくるようになっています。

さて、風太は、何を考えて直立しているのでしょう?
この日、午前10時の給餌時間直後にパンダ舎へ着きました。
風太がいる展示場の中央には、正方形に作られた採餌場(さいじじょう)が設けてあり、その右側前部に長さ1m位の竹筒を立て、餌となる笹の葉を下に向け、それを束にして括りつけます。
笹の葉は、直立した風太の口の高さにしてあります。食べやすくするのか、立って笹を食べる姿を見せるためなのかは、第三者には分かりませんが、アイドル風太の立ち姿を入園者に披露する配慮はなされているでしょう。

笹の葉を食した風太は、正方形に囲まれた屋外展示場の中をグルグル回り始めます。
一周して竹筒のところへ戻り、少しばかり笹の葉を食べると再びグルグル回りを始めます。風太はこれを繰り返すのです。
風太のグルグル回りは散歩のようにも見えますが、木登りが得意な夜行性の風太は、昼間は樹上で眠りたい時もあるはず。昼寝する樹がない展示場の中では、退屈しのぎをしているようにも感じられます。

風太の反対側にいる風美の展示場には、背の高い樹が1本植えてあり、彼女は樹上の餌を食べていますし、そこで食後の毛繕いも行っています。
風美は、風太と同じように正方形の展示場内をグルグル回りし、樹に登り餌を口にしてから地上へ降りて散歩する行動を繰り返しますが、風太のそれとは中身が違います。風太には、登る樹もなければ毛繕いをする樹もないからです。あるのは、笹を括りつけた竹筒と段違いに作った棚のようなものだけです。
風太と風美に共通している行動がひとつだけありました。
それは、グルグル回りをして同じ場所に行くと、尻をこすりつけて必ずマーキングをすることです。

先日書いたフンボルトペンギンの羽繕ろいを観察し終えた帰りに、パンダ舎へ立ち寄りました。
風美は樹の上で毛繕いをしていましたが、風太は、相変わらず飽きもせずにグルグル回りを繰り返していたのです。餌場の笹の葉は芯だけになっており、風太は見向きもしません。

一般に、親子パンダであっても相性が悪い場合は、トラブルを起こさなくなるまで別居させます。その間、飼育員はお互いが馴染むような策を試み様子を窺います。飼育員がもう大丈夫と状況判断を下すまでは、別居生活が続くのです。当然、家族と同居しないまま生涯を終える個体もいるようです。

ところで、風太はどのような背景があって、単独展示されているのか?
このテーマには興味が尽きませんが、それは動物園の展示形態に関わることです。
そこで、ひとつ提案を思い付きましたので、読んで下さい。
この案は、すでに、旭山動物園で実施している方式を借用したものです。

風太の家族同士の相性問題がありますので、実現するかどうかは判断できない提案ですが、風美と風太との展示場に吊り橋を渡しては・・・。吊り橋を吊る樹を植え、そこに踊り場を設けて往来できるようにする。

さて、風太がグルグル回りを繰り返すところは、踏み固められて細い路になっています。
その路上に直立している風太ですが、それまでは、笹の葉を食べて散歩に移る行動を繰り返しながらも、パンダ舎への出入口に寄り道をして、通路を塞いでいる鉄板の扉を前足で開けようとしていた。
風太は、この行動を数回繰りかえします。諦めきれずに何回も試みているんです。それほどまでしてもパンダ舎へ入りたかったのです。

ところが、出入口の戸が開かないと諦めて、何回目かのグルグル回りに移った時、突然、直立したのです。
その時間は、デジタル一眼レフカメラのピントを合わせ、シャッターを切る時間より僅かばかり長い時でしたから、数秒でした。

「チイチイやチイタ、クウタと一緒にいたい。戸が閉められ、パンダ舎へ入れない。どうしてだろう」

これが、物憂げな雰囲気に包まれ、屋外の展示場からパンダ舎を正面に据えて、直立している風太の真情でしょう。そこに至るまでの風太の行動を観察しているので、彼の心からの訴えが痛いほど伝わってきます。
この後、風太がパンダ舎への出入口へ寄ってから直立する素振りは、観られませんでした。

風太の一家が揃って展示場内を駆け回って遊ぶ姿を想像するだけで、胸がわくわく、どきどきしてきます。
風美が先頭になり、チイタ、クウタがそれに続いて並び一列になって吊り橋を渡る。
風太は、吊り橋の踊り場に座って、子供たちの列の殿を務めるチイチイを眺めている。
こんな光景は、絵になります。
おそらく、風太が直立してまで訴えたかったのは、家族と一緒に過ごしたい、この一言に尽きます。


コメント
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