千葉市動物公園 その４：アジを銜えるドン（カリフォルニア・アシカ）

キキ、ミウ、ナデインのメスを従えているドンは、ハワイのシーライフ・パークで生まれたオス、今年23歳になる。
給餌（きゅうじ）の時間が近くなると、ドンはアシカ独特の鳴き声を発して餌をねだります。
水中から頭を出して「アオッ、アオッ、オッッッ、アオッ、アオッ、オッッッ」と吠え始め、その声は腹に響きます。

飼育員の叔父さんは、岩の上に陣取って給餌を待つキキ達が、頭から銜えられるようにしてアジを放り投げると、それを器用に銜えます。逆の場合、キキ、ミウ、ナデインは、どの個体も銜えたアジの向きを変えて頭から呑み込みます。うろこが邪魔をして食べ難くいからとは、叔父さんの解説です。
入園者が希望すれば、ドン達への給餌体験ができます。

ところで、キキたちはドンの周りに近寄りません。給餌時間になっても、岩場の上で餌を放られるのを待っていますし、銜えられずに水中に落としたアジを採ろうともしません。落ちたアジは、ドンが独占しています。

ドンは、繁殖期になるとメスを追い掛け回し傷つけたことがあったので、キキ、ミウ、ナデインたちはドンとの距離を置いているようです。ドンが陸に上がると、岩場に陣取っていたキキたちは泳ぎだします。傷つけられない様にドンを避けているようです（動物園アイドル図鑑）。

一方、水中観察通路からは、アジを銜えるドン（写真）が観察できます。
前脚が発達しているアシカは、左右の前脚を同調させて鳥が羽ばたくように動かし推進力を得て、時速３０ｋｍくらいの速度で海中を泳ぎ、イカやタコを捕食します。

飼育員の叔父さんは、アジを銜えるドンの行動が観察しやすいように、観察通路の窓際へアジを放ってくれます。
放り投げられたアジを見付けてから銜えるまでのドンの敏捷な動作からは、頭を上げ前脚で何とか陸上を歩く姿は想像も出来ません。身体をくの字に曲げてアジを銜えるドン、彼がアジを銜えるその瞬間に付き合っていると、彼の故郷、南北アメリカ沿岸で捕食する野生の生活を感じさせてくれます。

もし、水中トンネルのある水槽を泳ぐドンを見上げたら、青空を背に飛行雲を残して飛ぶジャンボ旅客機です。そこに、セスナ機のペンギンが飛んでくる。
野生のアシカは、ペンギンを襲って食べることもあるようですから、アシカとペンギンとの共存展示は無理な相談です。アシカ・ペンギン行動展示は、想像するだけにします。