現代美術アーティスト・風間サチコさんは、私の贔屓筋の作家の一人です。
撮り溜めていた、2017年以降の展覧会(いずれも会期は終了)から、シリーズで作品を紹介します。
その前に、当ブログでの紹介歴を
風間サチコ展 「没落THIRD FIRE] 2012/12/23
18th DOMANI・明日展を観て 2016/02/15
風間サチコ 「悪い予感のかけららもないさ」展&「たゆまぬぼくら」公開制作 2016/11/22
今回、シリーズで紹介するのは次の4展です。
★2017年夏、横浜トリエンナーレにおける風間サチココーナ(横浜美術館)
「僕らは鼻歌で待機する」
★2018年初夏の風間サチコ展 (原爆の図丸木美術館)
「ディスリンピア2680」 ※アーティストトーク含む
★2019年3/28,29 無人島プロダクション『移殖』展から
「不死山トビ子(復活)」
★2019年6、7月 『東京計画2019 vol.2』(ギャラリーαM )
「風間サチコ(バベル)展」 ※アーティストトーク含む
それでは、2年前の横浜トリエンナーレ2017から
行ったのは、8月16日(水) 雨でした。
写真は、横浜美術館の正面で、中国の作家、アイ・ウェイウェイの作品「安全な通行」一部(救命ボートや救命胴衣が取り付けられています)
風間サチコさんの作品は、横浜美術館の大きなコーナが割り当てられており、ビッグネームになってきたのが感じられました。
展示コーナの中央に、《黒い花電車-僕の代》という立体作品が置かれ、周りに版画等の作品を配置されていました。
右壁に展示されているのが、今回のメインである《第一次幻惑大戦(グレートダズルウォー)》
非常出口のサイン灯のところが入口で、学校をモチーフとした作品が取り囲んでいました。
展示コーナのタイトルは《僕らは鼻歌で待機する》 ・・・うーん どういう意味なんだろう?
学校モノの作品には、鬱積した不満と、破壊のエネルギーが充満している。 これは、後で出てくる、風間サチコの小中学校時代の来し方と関係していると思います。
以前の展覧会でも見ましたが、迫力があって好きな作品の一つです。
中央にある立体作品《黒い花電車-僕の代》
風間サチコさんのブログ「窓外の黒化粧」には、作品解説が一部、載っています。
とても分かりやすいので、引用させていただきます。
【よく聞かれる質問のコーナー】
Q:黒い花電車の台車の彫刻は自作ですか?
A :いいえ違います。ヤフオクで入手した欄間(廃材)を利用してます。お値段は長い欄間は一組 ¥1000で、短い方は一組10円です。
そうなんです。 風間サチコさんは、高級・高価なものは、排して、極力、庶民的で、安いモノを好むようです。
そうしたことが、作品にも垣間見え、 社会の底辺の目線で、権力や商業主義を揶揄して、鋭い表現となっているのですが
一方で、軽いパロディやユーモアも宿していて、鋭さと緩さがうまく同居しています。
《人間富嶽》 府中市美術館での「たゆまぬ僕ら」公開制作時で見て以来です。
風間サチコさんのブログ「窓外の黒化粧」からの引用です。
【よく聞かれる質問のコーナー】
Q:屏風は銀箔が貼ってあるのですか?
A:いいえ違います。アルミホイルです。8m巻き一本90円のやつです。
この展示でのメインで新作の《第一次幻惑大戦》
風間サチコさんのブログ「窓外の黒化粧」からの引用です。
第一次幻惑大戦:梗概(1)
新作「第一次幻惑大戦(グレートダズルウォー)」の細部を解説する前に、この作品の概要を説明いたしましょう。
構図をまとめるのに恐ろしく苦しみ、結果ゴチャゴチャになった絵の向かって左側には、光と炎を操る近代的な合理
世界が、右側には氷と闇が支配する意味不明の非合理世界が配置され、双方が対立し衝突する様を描いています。
(大航海時代の英雄はカンテラを片手に、未開の闇を切り拓き野蛮を成敗する。何事も(未知の将来も)明るみに晒
さずには置けない近現代の闇恐怖症も然り!)
どうして私が、このような滑稽な戦争を空想しているのか?それは小中学校時代に遡り(少々面倒くさい)説明をすると
、小三で発病した喘息をきっかけに登校拒否半分で学校に行かず、自宅にこもって過ごす毎日だったので、さすがに辛く
子供の浅知恵で自分を正当化し「普通の勉強なんて意味がない」と早まった結論を出してしまった。(この大変な誤謬に
気付いた頃はすでに手遅れ!)中1あたりでビアトリクス.ポター(ピーターラビットの作者)の孤独な少女時代に憧れて
ちょっとしたお嬢様気分(現実は安サラリーマン家庭)になり、さらに中2頃から大人の本を読み始めると、思い込みは
深刻化し「ボードレールのような高等遊民になる」という絶望的な夢を抱くまでに…。お布団の中で「悪の華」を読むのが
デカダンスの一日。オカルティズムへの興味もあいまって現実社会への否定は加速し、学校に通う健康な生徒たちは平民で
、病弱な自分は貴族という、一切の負けを認めない自己肯定にたどり着き、通信簿オール1の没落貴族が誕生した。
ネットスラングの「中2病」の意味を知ったとき「な〜るほど!あの時のアレか!」と膝を打ったが、よくよく考えると
今現在も罹患中である。(つづく)
この怖い絵は中学時代のお気に入りの一枚。
ハリー・クラークによるE.A.ポオの短編小説「メエルシュトレエムに呑まれて」の挿絵
(幻惑大戦の右下にある渦潮の原点)
幻惑大戦(登場人物)
「近代的な諸徳その他の南風のもとに生きるより、むしろ氷の上に生きるにしかず!」
このニーチェの吐いたありがた〜い暴言をスローガンに掲げて20余年、もちろん今も実践中でーす!
ヨコトリ展示中の新作「第一次幻惑大戦」の画面向かって右側は、この冷たく排他的な「氷上」の世界を
設定して描いてます。今日はその登場人物(物品)をご紹介しましょう。
妖術使い児雷也と大ガマは、さっぽろ雪祭りの雪像(陸自第11旅団制作)という設定。
幻の大渦潮に乗って攻めてくる四角い物体は流氷で、これは網走流氷祭りのイメージ(圭子の網走番外地は心の歌)。
ファミコン、テレビ、ゲームウォッチ上で待機する忍者軍団も見える。
こう取り上げてみたものの、北海道は未踏の地だし、ファミコンもサーフィンもしないのが現実…
ファンタスティックな絵葉書ケースに魅せられて…。この素晴らしい雪像の数々は、北の護り陸自第11師団(現旅団)
隊員が制作しているという。さっぽろ雪祭りこそ恒久平和の象徴だ!
知っても得しない秘密
会期残りわずかとなった横浜トリエンナーレの評判はというと…厳しいご意見が怖いので自分では調べませんが
聞くところによると私のコーナーはヨーロッパの人に大好評らしいです。漫画みたいな木版画で日本っぽい。
というのが凡その理由のようですが、じつは新作「第一次幻惑大戦」画中には有名欧州画家の影響が(参考にしたから)
所々にあり、明確には判らなくとも何となく親近感を持たれたのでは?というのが私の推測です。
そして日本人からは藤子不二雄Aや、どおくまんの作風を想起させる等の感想が聞かれます。おお超えられぬ双璧の名よ!
畏れ多いけれど嬉しい。
このようなシャシャシャとした線は、もっとも私淑するドイツ表現主義の画家キルヒナーからの影響です。
ビル型砲台は、ドイツロマン主義の画家フリードリヒのかっこいい名画「氷海」からの引用。
下から光線が当たってる感じは、ウイリアム.ブレイクの絵を参考にしてみたヨ。
(ガロ系だったら鈴木翁二が好きかな?)
左の屋上建屋でマンガを読んでサボってる男子学生は私自身の姿。現実逃避を得意とする私に絶望は無い!
さて、展示コーナ以外にも、風間サチコさんの面白い”企て”がありました。
それは1階ロビーと2階展示室を結ぶ階段の踊り場に設けられた、《ぼんやり階級ハンコ》コーナです。
風間サチコさんのブログ「窓外の黒化粧」からの引用です。
大人気!「ぼんやり階級ハンココーナー」
(意味を理解せぬまま)いたいけな児童が楽しげに押しているスタンプは厨二/情弱/ぼっち/社畜…無邪気に
押されたそれら蔑称を高所より傍観してる私にも(ちょっとだけ)良心の呵責はある。
私が写真を撮った時も、前にいた親子(母・娘:小学生くらい)が、スタンプを押しながら、”リア充”って何?と娘さんが
母親に尋ねたが、母親も分からないらしく、適当に誤魔化していた。 ・・・実は私も知らなくて、今、調べると
”「リアル(現実世界)が充実している」の略。 掲示板などでは活発に活動しているが、現実の世界では引きこもりがちだったり
ニート生活を送っていたり、満たされない生活を送っている本人が自嘲の意味を込めて用いる場合や、インターネットに詳しくない
人を揶揄する意味などを込めて込めて、様々なニュアンスを込めて用いられる。(IT用語辞典バイナリから引用)”
へー、そうだったのかと、納得。
ところで、私は何のスタンプを押したのだっけ?・・と思い出そうとして・・・確か、展示パンフに押しているはずだが
今、それを探して、見るのが怖い。