--ワシを覚えておったのか、感心、感心…。
老人は皺襞(しわひだ)だらけの顔に笑みを浮かべた。
--ですが、なぜこんな所に。
この場は、あの忌々しい猫の幻術空間の筈であった。
--なぜ、ではないのだよ。
老人は笑みを収め、言葉を続けた。
--ワシは若いころに仙術を極め、諸国を旅しておった。
老人は大きな溜息を吐いた。
--じゃが仙術を極めたといっても所詮は人間…老いには敵わんでなぁ~。
また、溜息を吐いた。
--しかも、こんな老人から金を奪おうと複数で取り囲み、殴る蹴るの暴行…この国は、一体どうなってしまったんじゃ。
--オレにいわれても、解らん。
今は神でさえ、地上が欲しいからと、女神にも害を成す時代であった。
--じゃが世の中、そう捨てたもんでもなかたわい。ワシのようなか弱い老人を虐める者もあれば、助けてくれようとする者もある。
老人は自分の言葉に頷いた。
--あのときの礼ならもう…。
既に済んでいるという言葉が、途中で止まった。あの珍妙な実がもう2.3粒あれば、今度こそ自分も堪能できるのではないかと、一輝は思った。
--もう、なんじゃ。
問われ、一輝は老人から視線を逸らした。
--それはよい。ソレよりここからが本題じゃ。信じられぬかも知れぬが、お主には常人にはない“力”を有しておる。だから話すことにした。
持って回った言い方をする老人を、一輝は見つめた。
老人は皺襞(しわひだ)だらけの顔に笑みを浮かべた。
--ですが、なぜこんな所に。
この場は、あの忌々しい猫の幻術空間の筈であった。
--なぜ、ではないのだよ。
老人は笑みを収め、言葉を続けた。
--ワシは若いころに仙術を極め、諸国を旅しておった。
老人は大きな溜息を吐いた。
--じゃが仙術を極めたといっても所詮は人間…老いには敵わんでなぁ~。
また、溜息を吐いた。
--しかも、こんな老人から金を奪おうと複数で取り囲み、殴る蹴るの暴行…この国は、一体どうなってしまったんじゃ。
--オレにいわれても、解らん。
今は神でさえ、地上が欲しいからと、女神にも害を成す時代であった。
--じゃが世の中、そう捨てたもんでもなかたわい。ワシのようなか弱い老人を虐める者もあれば、助けてくれようとする者もある。
老人は自分の言葉に頷いた。
--あのときの礼ならもう…。
既に済んでいるという言葉が、途中で止まった。あの珍妙な実がもう2.3粒あれば、今度こそ自分も堪能できるのではないかと、一輝は思った。
--もう、なんじゃ。
問われ、一輝は老人から視線を逸らした。
--それはよい。ソレよりここからが本題じゃ。信じられぬかも知れぬが、お主には常人にはない“力”を有しておる。だから話すことにした。
持って回った言い方をする老人を、一輝は見つめた。