「だって、オレ…夜中に起こさたことがあるんだ、トイレに付いてきて欲しいって」
「あっ古賀、誰にも言わないでくれって頼んだのに」
氷河が頬を染め、猛抗議した。
「どうして、トイレになんか…」
そこで、瞬は言葉を切った。
氷河は大の怪談嫌いであった。
ユーレイの話に怯える。
同じ冥界繋がりでも、冥闘士(スペクター)たちなら殴り直せるが、霊はそういうわけにはいかないと、ただひたすら怯える。
その氷河が、この学園のある富士の青木ヶ原樹海が、日本で有数の心霊スポットであることを知ってしまった。
今でこそ落ち着いたが、少しの物の影にも、確かに氷河は怯えていたときがあった。
「なーんだ、それでか…」
瞬が笑った。
「なーんだって――ここにも出るんだろう?」
氷河は左右を伺い、瞬の耳許に囁いた。
「出るって。なにが?」
氷河が兄に操られているわけではないと知り、瞬は機嫌を直した。
「ほら、夜中に…白い…ほら…」
それは夏頃から、囁かれ始めた噂であった。
深夜、この浴場から水音がし、覗くと誰も居ないという、典型的な検証の目撃談が上り、学校の調べでも確かに湯を落とし、乾燥している筈のタイルが、ある一部分だけ濡れていた、という報告が上がったことがあった。
学校はイタズラと決めつけたが、氷河の震えは止まらなかった。
それ以来、氷河は一人での入浴は避けるようになっていた。
「つづく」
「あっ古賀、誰にも言わないでくれって頼んだのに」
氷河が頬を染め、猛抗議した。
「どうして、トイレになんか…」
そこで、瞬は言葉を切った。
氷河は大の怪談嫌いであった。
ユーレイの話に怯える。
同じ冥界繋がりでも、冥闘士(スペクター)たちなら殴り直せるが、霊はそういうわけにはいかないと、ただひたすら怯える。
その氷河が、この学園のある富士の青木ヶ原樹海が、日本で有数の心霊スポットであることを知ってしまった。
今でこそ落ち着いたが、少しの物の影にも、確かに氷河は怯えていたときがあった。
「なーんだ、それでか…」
瞬が笑った。
「なーんだって――ここにも出るんだろう?」
氷河は左右を伺い、瞬の耳許に囁いた。
「出るって。なにが?」
氷河が兄に操られているわけではないと知り、瞬は機嫌を直した。
「ほら、夜中に…白い…ほら…」
それは夏頃から、囁かれ始めた噂であった。
深夜、この浴場から水音がし、覗くと誰も居ないという、典型的な検証の目撃談が上り、学校の調べでも確かに湯を落とし、乾燥している筈のタイルが、ある一部分だけ濡れていた、という報告が上がったことがあった。
学校はイタズラと決めつけたが、氷河の震えは止まらなかった。
それ以来、氷河は一人での入浴は避けるようになっていた。
「つづく」