秋の七草の一つ“オミナエシ”がまぶしいくらいの黄色で咲いている。
草丈60㎝で枝分かれし、その頂上に数多くの黄色いつぼみを持ち、
そのうちのいくつかが5㎜程度の小さい花を開いている。
ひいて眺めると、黄色が滲み出し淡くボケていき、日本の秋の情緒をかもし出している。
(写真)オミナエシの花
オミナエシは、陽当たりのよい土手、草地などが生息地で、
冬前には雑草を刈り込むようなヒトの手が入る半自然半人工的なところが良い。
農業牧畜が支えてきた環境であり、このような環境は激減している。
最近では、ブルドーザーで土手の草を根こそぎ刈り取るので、
オミナエシには厳しく生息しにくい環境になっている。
オミナエシも園芸商品として庭に進出しないと生きにくくなっている。
万葉の秋の七草
秋の七草も現実不適合となりつつあるが、
万葉集の歌人 山上憶良が詠んだ2首が由来となり、次の詩が七草の具体名を詠っている。
『 萩の花 尾花 葛花 瞿麦の花 女郎花 また藤袴 朝貌の花 』(万葉集・巻八 1538)
(はぎのはな おばな くずばな なでしこのはな おみなえし またふじばかま あさがおのはな)
女郎花は、万葉集では14首が詠まれている。
そのうちの1首を
『 おみなえし 大伴池主
女郎花咲きたる野辺を行きめぐり 君を念(おも)ひ出 た廻(もとほ)り来ぬ 』
女郎花が咲いている野原をさまよい、あなたを思いながら回り道をしてきました。
とでも詠っているのだろうか?
オミナエシは、地域により“オミナメシ” 、 “アワバナ”などと呼ばれていた。
“メシ”“アワ”などは、粟の飯に似ていることから呼ばれたようだ。
かすかな記憶に、
ゴザを敷いたその上でオミナエシの黄色いつぼみを山盛り盛った“ままごとのごはん”。
これを見ていたような記憶がある。
ちょうど稲の刈入れの時期でもあり、オミナエシは、はかない恋を詠うだけでなく
農繁期で忙しい大人達に労を煩わせないための子供達の独立王国“ままごと”にも使われていた。
そう、この頃は陰暦で生活していたので、自然との一体感があった。
陰暦での生活を提唱している方がいるようだが、大賛成だ。
そして、農業の生産性を高めた“殺虫剤”、需給バランスに貢献した“防腐剤”
この二つの使用量を減らす技術革新・発想の転換があるともっと自然に近づいていける。
と思う のは野郎だからだろうか?
その野郎花にもチョッとふれておこう。
あまり話題にものぼらないが『男郎花(オトコエシ)』というのがある。
今回調べてはじめてわかったが、実物は野山で見かけることがある。
オミナエシよりも大柄で、8~10月に白い花を咲かせる。
「女郎花(オミナエシ)」のほうが人気があるのが良くわかる。
(写真)オミナエシの葉
オミナエシ(女郎花 Patrinia scabiosifolia)
・オミナエシ科オミナエシ属の多年草
・学名は Patrinia scabiosifolia Fisch. ex Link。英名はなし。和名がオミナエシ(女郎花)
・原産地は、沖縄を除く日本と東アジア全域で日当たりの良い草地に生える。
・草丈60~120㎝で、夏まではロゼット状という根からでた葉だけで、夏以降に茎を伸ばし枝分かれしその先に花をつける。
・開花期は8~10月で黄色い花をつける。秋の七草の一つ。
・乾燥させたものを敗醤(はいしょう)といい、解熱・解毒作用があるハーブ。
学名の由来(Patrinia scabiosifolia)
・属名の“Patrinia”は、
フランス人の鉱物・博物学者ユージーン・ルイス・メルヒオール・パトリン(Eugene Louis Melchior Patrin 1742-1815)に因む。
・種小名の“scabiosifolia”は、
scabiosaefolia=scabiosifoliaラテン語『マツムシソウscabiosaのような葉をもつ』を意味する。
・命名者Fisch. と Linkは
Fisch.:Fischer, Friedrich Ernst Ludwig von (1782-1854)ドイツの植物学者、サンクト・ペテルブルグ植物園長(1823-1850)
Link :Link, Johann Heinrich Friedrich (1767-1851)ドイツの植物学者
<参考>出典:ボタニックガーデン
オトコエシ(男郎花 Patrinia villosa)
http://www.botanic.jp/plants-aa/otokoe.htm