モノトーンでのときめき

ときめかなくなって久しいことに気づいた私は、ときめきの探検を始める。

No29:プリングルが採取したサルビア その11

2010-12-03 15:18:33 | メキシコのサルビアとプラントハンター
メキシコのサルビアとプラントハンターの物語 No29 

29. Salvia texana (Scheele) Torr. (1858). サルビア・テキサナ
 
(出典) Texas AgriLife Research and Extension at Uvalde


(出典) Lady Bird Johnson Wildflower Center

テキサスからメキシコ北部にかけて乾いた岩が多いところに自生するサルビア・テキサナは、草丈30cm程度で、ローズマリーのような細長い葉に特色があり初春からパープルブルーの花を咲かせる。コモンネームは、テキサスセージ(Texas Sage)、ブルーセージ(Blue Sage)であり、テキサスの代表的なサルビアでもある。
1847年にメキシコでグレッグがこのサルビアを採取していて、ハーバード大学の植物学教授グレーの師でもあるトーリー(Torrey, John 1796-1873)が1858年に命名している。
プリングルは、1886年9月から10月の間にメキシコ、チワワ州でこのサルビアを採取した。魅力的なサルビアなので育ててみたい一つでもある。

30. Salvia thymoides Benth. (1833).  サルビア・ティモイデス

(出典)flickr

霧が多い森林ではコケが生え独特な植生を作り出すが、サルビア・ティモイデスは、霧と雨が多いプエブラ州の狭いエリアが原産地で、草丈30cm、タイムのような葉をしていて、青紫の小さな花を冬から初春に咲かせる。
名前の由来は、葉がタイム(Thyme)に似ている(=oides)ことから1833年にベンサム(Bentham, George1800-1884)によってSalvia thymoidesと名付けられたが最初の発見者はわからない。
セッセ探検隊なのかもわからない。
プリングルは、メキシコ、プエブラ州の1950mの霧が多い森林で1895年11月21日にこのサルビアを採取した。

31. Salvia verbenaca L. (1753),又はSalvia verbenacea L サルビア・バーベナカ

(出典) University of California, Berkeley

バーベナセージ(Verbena Sage)とも呼ばれるように、バーベナに似た葉を持ち、青紫の花が夏場に咲く。草丈60㎝程度とあまり大きくなく、野生種のクラリーセージ(Wild clary)とも呼ばれる。
クラリーセージ(Salvia sclarea)は、南ヨーロッパからアジアに生息するサルビアで、ロゼット状の立ち上がりで150㎝と比較的大型だ。
ちなみに、種小名の“verbena”は、葉が多い枝を意味し、確かに多すぎる嫌いがある。
古くから知られたサルビアでもあり、プリングルは、1901年7月7日にメキシコシティでこのサルビアを採取している。

32. Salvia veronicaefolia A. Gray (1886)

(出典)ミズリー植物園

写真は、プリングルが採取した植物標本で、このように整理されて保管される。
しかしこのサルビアは、プリングルだけしか採取していない。採取したのはハリスコ州のグアダラハラ1889年6月に採取している。

33. Salvia vitifolia Benth. (1835) サルビア・ビティフォーリア

(出典)Robin’s Salvias

サルビア・ビティフォーリアは、「No7:サルビア・パテンスを園芸市場に持ち込んだプラントハンター、ハートウェグ」でも紹介したが、サルビア・パテンスに良く似た素晴らしいブルーの花を咲かせる。

最初の発見・採取者は、謎のアンドリュー(Andrieux, G.)で、1834年6月にサン・フェリペで採取し、サルビア・パテンスを英国の園芸市場に持ち込んだハートウエッグも1839年にこのサルビアを採取している。
プリングルは、1894年5月26日にオアハカ州2300mのところで採取している。
プリングルが採取したサルビアの中でも傑作のひとつだろう。

34. Salvia xalapensis Benth. (1848). サルビア・キラペンシス

(出典)Robin’s Salvias

サルビア・キラペンシスは、明るい青紫の小さなが咲くサルビアで、初期の採取者は、1839年にベルギーのプラントハンター、リンデン(Linden, Jean Jules 1817-1898)であり、同じ頃にベルギーの地質学者でプラントハンターとなったガレオッティ(Galeotti, Henri Guillaume 1814-1858)、そしてドイツ人のシエデ(Schiede, Christian Julius Wilhelm 1798-1836)もこのサルビアをメキシコ南西部で採取している。
シエデはあまり説明していないので簡単に紹介すると、ドイツの医者・植物学者で彼が30歳の時の1828年にメキシコに移住し、ナチュラリストのFerdinand Deppe (1794-1861)とともに、メキシコの動物・植物の標本をヨーロッパの博物館などに収集し販売する活動を始めた。1830年後半には、この商売がうまくいかず活動を断念し、1836年彼が38歳の時にメキシコで死亡した。
プリングルがこのサルビアを採取したのは、1901年6月21日にベラクルーズだった。


こうしてみると、プリングルは、1880年代から彼が亡くなる1911年までの30年間メキシコのあらゆるところを訪問し植物採取を行っていた。
物心両面で彼を支えたハーバード大学のグレーがいなければプリングルの名前もその足跡も残らなかっただろうと思う。

プリングルが採取したサルビアの中で、植物情報がわかるものに限って34品種をとりあげたが、植物情報がわからないものが数多くある。
もちろん、プリングルはサルビア以外にも多くの植物を採取しているが、これだけのサルビアを採取したプリングルのコレクションはすごいの一言に尽きる。

(後日、植物情報がわからなかったものをまとめて掲載する。)

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