栽培植物の起源と伝播 No1
(写真)メキシコの遺跡
メキシコシティの南東部に位置するテワカン市にあるテワカンバレー(Tehuacán valley)の洞窟から最も古いトウモロコシ、インゲン豆、ひょうたん,カボチャ、チリペッパー、トマト、アボガド、綿などの栽培された植物が見つかった。
このテワカン市は、1549年に建設されたメキシコでも古いスペインの植民都市だが、テワカン・バレーは、紀元前9000年頃からの狩猟採集生活、紀元前1500年頃からの農耕生活の遺跡がある古い地域であり、半乾燥地のために遺跡の保存状態が良く、豊かな植物相のところでもある。ここにある洞窟からは、メキシコ原産の植物が多数発見されている。
おや~? メキシコに“ひょうたん”があった。確か“ひょうたん”はアフリカ原産のはず? と、かすかな疑問程度で済ませていた。
その当時は、
① アメリカ大陸にも独自の“ひょうたん”の原種があったのか、
② 或いはまた、アジア大陸からベーリング海峡を経由してアメリカ大陸に移動したモンゴロイドがもたらしたのか、
③ さらには南太平洋を島伝いに南アメリカに渡った可能性がある“海のモンゴロイド”がもたらしたのか
④ 椰子の実が遠き島より流れ着くように、“ひょうたん”の実が海流に乗りアメリカ大陸にたどり着いたのか
などが脳裏をよぎった。
この謎解きは次回以降に譲ることにして、植物は移動しないが移動を仲立ちするものがあり、固有の種(原種・原産地)とその伝播という広がりには、その背後に人間の営みである物語が隠されているはずだ。
この物語を掘り出してみたくなった。
近年になって、植物資源を保護する動きが出てきた。
昆虫・動物が関わった場合はその行動範囲が限られるのでオリジナリティが守られやすい。しかし、人間が関わると短時間で広範囲に広がり、また、“より大量に”“より美味しく”“より美しく”など様々な目的を持って品種改良を施すのでオリジナリティが消滅する。
1845年から1849年の4年間にわたってヨーロッパ全域でジャガイモの疫病が大発生し、ジャガイモを主食料としていたアイルランドでは、人口の20%が餓死および病死、10%から20%が国外へ脱出したという“ジャガイモ飢饉”が起きた。
原因は、収穫が多い品種に絞って栽培していたため遺伝的な多様性がなくなり、メキシコの特定地域にしかいなかった病原菌が入ってきて致命的な作物被害をもたらしたためだが、現在の主要作物も同じような問題を抱えている。
主要作物の原種および原種に近い植物の遺伝子は、ここに戻ればやり直しが利くという意味でも重要になってきている。
植物は、食料だけでなく人間の営みのあらゆるところで役に立っているので、原産国はこの権利を守りたいというのは当然だろう。
だが、こういった難しいこととは一線を画し、食卓に上った食材を美味しくいただくための昔物語を始めようと思う。
特に、1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見してから、アメリカ大陸原産の植物がヨーロッパに伝わり、日本にも伝わってきた。
代表的なのは、ジャガイモ、サツマイモ、スイートコーン、カボチャ、トマト、トウガラシ、キャッサバ、カカオ、落花生、ズッキーニ、ピーマン、イチゴ、パイナップル、アセロラ、アボガド、グアバ、バニラ、タバコなどであり、今では、私たちの日々の食卓を美しく・美味しく・楽しく、そして健康的にも不健康的にもしてくれている植物・食材が豊富にあり、これがアメリカ大陸原産だったのかと思うものすらある。
ヨーロッパ人にとっての新大陸原産の植物の起源と伝播という歴史を、食欲を刺激するように仕立てていこうかなと思っている。
ジャガイモ、サツマイモ、タバコに関しては過去に掲載したのがあるので興味があれば参照していただきたい。
【ときめきの植物雑学】
その4 :世界を変えたジャガイモ
その5 :サツマイモの伝播①
その6 :サツマイモの伝播②サツマイモ>ジャガイモ Way? ⇒ サツマイモは媚薬と信じられていた
その7 :サツマイモの伝播③ペルー沖から102日の漂流で南の島に!
その8 :サツマイモの伝播④サツマイモの伝播には、人類大移動のロマンがある
その28:コロンブスが見落としたタバコ(Tobacco)
その29:タバコの煙で精霊との交信
(写真)メキシコの遺跡
メキシコシティの南東部に位置するテワカン市にあるテワカンバレー(Tehuacán valley)の洞窟から最も古いトウモロコシ、インゲン豆、ひょうたん,カボチャ、チリペッパー、トマト、アボガド、綿などの栽培された植物が見つかった。
このテワカン市は、1549年に建設されたメキシコでも古いスペインの植民都市だが、テワカン・バレーは、紀元前9000年頃からの狩猟採集生活、紀元前1500年頃からの農耕生活の遺跡がある古い地域であり、半乾燥地のために遺跡の保存状態が良く、豊かな植物相のところでもある。ここにある洞窟からは、メキシコ原産の植物が多数発見されている。
おや~? メキシコに“ひょうたん”があった。確か“ひょうたん”はアフリカ原産のはず? と、かすかな疑問程度で済ませていた。
その当時は、
① アメリカ大陸にも独自の“ひょうたん”の原種があったのか、
② 或いはまた、アジア大陸からベーリング海峡を経由してアメリカ大陸に移動したモンゴロイドがもたらしたのか、
③ さらには南太平洋を島伝いに南アメリカに渡った可能性がある“海のモンゴロイド”がもたらしたのか
④ 椰子の実が遠き島より流れ着くように、“ひょうたん”の実が海流に乗りアメリカ大陸にたどり着いたのか
などが脳裏をよぎった。
この謎解きは次回以降に譲ることにして、植物は移動しないが移動を仲立ちするものがあり、固有の種(原種・原産地)とその伝播という広がりには、その背後に人間の営みである物語が隠されているはずだ。
この物語を掘り出してみたくなった。
近年になって、植物資源を保護する動きが出てきた。
昆虫・動物が関わった場合はその行動範囲が限られるのでオリジナリティが守られやすい。しかし、人間が関わると短時間で広範囲に広がり、また、“より大量に”“より美味しく”“より美しく”など様々な目的を持って品種改良を施すのでオリジナリティが消滅する。
1845年から1849年の4年間にわたってヨーロッパ全域でジャガイモの疫病が大発生し、ジャガイモを主食料としていたアイルランドでは、人口の20%が餓死および病死、10%から20%が国外へ脱出したという“ジャガイモ飢饉”が起きた。
原因は、収穫が多い品種に絞って栽培していたため遺伝的な多様性がなくなり、メキシコの特定地域にしかいなかった病原菌が入ってきて致命的な作物被害をもたらしたためだが、現在の主要作物も同じような問題を抱えている。
主要作物の原種および原種に近い植物の遺伝子は、ここに戻ればやり直しが利くという意味でも重要になってきている。
植物は、食料だけでなく人間の営みのあらゆるところで役に立っているので、原産国はこの権利を守りたいというのは当然だろう。
だが、こういった難しいこととは一線を画し、食卓に上った食材を美味しくいただくための昔物語を始めようと思う。
特に、1492年にコロンブスがアメリカ大陸を発見してから、アメリカ大陸原産の植物がヨーロッパに伝わり、日本にも伝わってきた。
代表的なのは、ジャガイモ、サツマイモ、スイートコーン、カボチャ、トマト、トウガラシ、キャッサバ、カカオ、落花生、ズッキーニ、ピーマン、イチゴ、パイナップル、アセロラ、アボガド、グアバ、バニラ、タバコなどであり、今では、私たちの日々の食卓を美しく・美味しく・楽しく、そして健康的にも不健康的にもしてくれている植物・食材が豊富にあり、これがアメリカ大陸原産だったのかと思うものすらある。
ヨーロッパ人にとっての新大陸原産の植物の起源と伝播という歴史を、食欲を刺激するように仕立てていこうかなと思っている。
ジャガイモ、サツマイモ、タバコに関しては過去に掲載したのがあるので興味があれば参照していただきたい。
【ときめきの植物雑学】
その4 :世界を変えたジャガイモ
その5 :サツマイモの伝播①
その6 :サツマイモの伝播②サツマイモ>ジャガイモ Way? ⇒ サツマイモは媚薬と信じられていた
その7 :サツマイモの伝播③ペルー沖から102日の漂流で南の島に!
その8 :サツマイモの伝播④サツマイモの伝播には、人類大移動のロマンがある
その28:コロンブスが見落としたタバコ(Tobacco)
その29:タバコの煙で精霊との交信