tokyoonsen(件の映画と日々のこと)

主に映画鑑賞の記録を書いています。

『汚れなき祈り』

2013-06-24 19:50:01 | 映画-か行
 クリスティアン・ムンジウ監督、2012年、ルーマニア・仏・ベルギー。

 2005年にルーマニアで起こった「悪魔祓い事件」を題材にした作品で、事件の舞台は丘の上の修道院。

 色んな人たちと色んな場所が、ほぼ同じトーンで描かれてた。
 なんでそんなことをあえて思うのかと言えば、まるで隣同士のような近い場所に、信じるものが全く違う、世界の違う人たちが普通に暮らしているからだ。その中で丘の上だけが切り取られてるんじゃなくて、民家も、病院も、薄いイコールで繋がっているように見えた。そこには、お互い行き来することの不自然さが全くない。だから、それが不思議。

 そんな中で行きあぶれてしまったのは、アリーナ彼女一人なのかもしれないな。
 どうして言葉にできなかったんだろうと、それが悔しいような、哀しいような。「普通の言葉でしゃべって!」と怒鳴った時の命綱から手を滑らせたかのような焦りと苛立ちが、思い返すと哀しい。

 草を踏み、雪を踏んでいく、修道院への丘を上る道のりが、とても美しかった。