『mid90s ミッドナインティーズ』、ジョナ・ヒル監督、製作、脚本。2018年、85分、アメリカ。原題は、『Mid90s』。サニー・スリッチ、キャサリン・ウォーターストン、ルーカス・ヘッジズ。
「君と出会って、僕は僕になった」「たちあがれ、何度でも」
ポスターの、この二つのコピーが、この映画のことをよく表しているように思う。
俳優として活躍するジョナ・ヒルによる、初の監督作品。舞台は1990年代半ばのロサンゼルス。
13歳のスティービーが、自分の新しい世界を見つけ、仲間に触発され成長して行く。
1983年、ロサンゼルス生まれのヒル監督の、自伝的ストーリーかと思えば、そうでもないらしい。とは言え「あの頃」に向ける(少し距離を置いた)温かい眼差しと、生き生きとした描写が感じられらる。
誰にでもある「あの頃」だが、作品の中の彼らはどうだろう?
スティービーが「自由でかっこいい」と憧れる年上の少年達にも、それぞれ色々な事情があることが、次第に明かされて行く。
スティービー自身もさんざんだ。思えば理不尽なその世界を懸命に生き、愛そうとするスティービーだが、世界はもっと広くバリエーションに富んでいるという事に気がつく。
不自由から自由へ。
不自由だったのは、スティービー自身の頭の中だった。成長するというのは、そういう事かも知れない。不自由から自由へ。不自由から自由へ。人生とはその繰り返しなのかも知れない。
みっともない「あの頃」を、それでも愛し、楽しさを見つけ出し、それを原動力にして、次へ、次へと進んで行く。
そのうち、不自由と感じていた世界も変わって行く。
幼さは、十分に不自由の原因たり得る。体の成長も伴い、誰にでも訪れる一番の冒険という意味で、青春映画はやっぱり面白い。もしかしたら、好きな青春映画のベストワンかも。
「お前が一番ひどい目に遭ってるな。」
「そんな必要ないのに。」
全編16mmフィルムで撮影。90年代の文化がふんだんに盛り込まれた。心が締め付けられるような感覚と、過ぎた時代への憧憬が入り交じる。
主演のサニー・スリッチ。↓撮影時は11歳だったとのこと。
スリッチ含め主な出演者は皆プロスケーター。↓初めての演技だった人も。
全米4館公開から、最終的に1200館まで広がったらしい。↓