たぶん。私の青春であった。
銀座八丁目。シャンソニエ鳩ぽっぽ。
初めて、マイクを持って歌った。
初めて、シャンソンを歌った。
ここで始まり、ここで育った。
沢山泣いた。沢山笑った。
銀座の柳はいつも見ていた。
10年以上、月曜日から土曜日まで、毎日歌った。
毎日でなくなってから、週に何回、月に何回。
回数が減ったけど、気がつけば古株になっていた。
ワカモノに席を譲って、老兵は消え去らねば。
そう思いながら18年。思えば遠くへ来たものだ。
私が消え去る前に、店は閉店した。
お疲れ様。ありがとう。言葉では言い尽くせない。
この複雑な思いは、自分だけがわかっていれば良い。
ラストの日。思い残すことは無い。
駆けつけた歌手沢山。それぞれが熱唱。
涙を流すお客様も。店は花で溢れた。
私はめずらしく素面で、静かに、熱く、持ち歌を歌った。
店が跳ねてから、しこたま飲んだ。
朝になっていた。
この銀座の朝の匂い。光の色。大好きだ。
柳は蒼蒼と、私を見おろしていた。
移転前の元のビルの前で、私の泣き笑いが詰まったあの3階を見上げた。
あの頃の私の顔が浮かんだ。ありがとう。さよなら。
鳩ぽっぽを愛してくださった全ての方へ、ありがとう。
鳩ぽっぽがあったから出逢えた全ての方へ、ありがとう。
そして銀座の柳よ、ありがとう。
出逢いとご縁に、心から感謝。
Merci...Au revoir !!!