走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

100%の社員が幸せになる会社

2011年07月22日 23時24分58秒 | びっくり
 もうすぐすると誕生日なので、眼鏡屋へ行く。
 齢とともに、目の焦点が変わってくる。
運転などには危ないので、場合によってはレンズ交換が必要になるかもしれない。
ちょうどレンズが割れていた眼鏡があったので持参する。

 入店すると、既に私の前にたくさんの客が並んでいる。
仕方がないので店舗にティスプレイしてある眼鏡を見て回った。

 驚いたことに、他店の半額並みである。

 自分の順番が来たので、受付してくれた若い店員さんに「なぜ、この店はこんなに安いの?」とたずねてみると、「儲けないからです」みたいな答が返ってきた。内心、「そんなバカな!」である。


 気になったので、帰宅してホームページでその会社を検索してみた。

 驚くことに、信じられないような経営モデルを確立してある会社だった。
以下、紹介しよう。

 メガネ21は広島を中心に全国で128店舗を持つ年商83億円のメガネチェーンです。
21の店舗では常時全ブランドを4割引きで販売しているそうなのですが、面白いのはその安さの理由です。
普通安低価格にするためには、大量仕入れや人件費のカットなどでコストを低く抑えてという方法が考えられます。
しかし、メガネ21ではそういった事はしていません。
仕入れ値は他社と同じぐらいで、原価率は70%ぐらいだと言います。
それではいったいどうやって安くしているのかと言うと、売り上げによって得た利益の半分をすべて値引きのために当てているのです。
こうする事で安い価格を維持して客を多く呼び寄せ、たくさん商品を買ってもらい、そこで得た利益でまた低価格を維持すると言う事をやっているようです。
こうやって他社よりも安い価格で売り上げを伸ばしていけば、当然利益も膨らんで行きます。
 一方、利益のもう半分はすべて社員の給料とボーナスにつぎ込まれる仕組みになっていて、それが社員のやる気を引き出します。
販売実績を上げて店舗の売り上げに貢献すればするほどそれだけ多くのボーナスを貰う事ができるので社員はみんな頑張って働く訳です。
しかも、社員は、販売ノルマは課せられていないため過剰なプレッシャーを受けずにのびのびと働く事ができます。
ただ言ってみれば、成果主義でもあるので、逆に利益が上がらない時はボーナスが減るという事になるそうです。
しかし、普通の会社なら内部留保として溜められるはずのお金をすべて商品の値下げと社員のボーナスに当てるので、売り上げが良い時はかなり高いボーナスがもらえます。
 普通、内部留保を持たない会社はやっていけなくなります。
それなのにメガネ21はどうやって内部留保なしで経営をしているのか。
内部留保とは、簡単に言うと売り上げから原価と人件費と株主への配当などを引いて後に残った利益、つまり儲けの事で、このお金は普通の会社では将来への設備投資や、何か問題が起こった時のために溜めて置きます。
特に資金繰りのお金が必要になった時、銀行からお金を借りないといけませんが、内部留保がないとそれが難しくなるためどの企業もある程度の内部留保を持っておこうとします。
しかし、メガネ21は資金が足りなくなっても銀行からは借りず、グループ内の店舗からカンパや協賛金という形でお金を集めています。
グループ内のどこかしらに余っているお金を融通してもらうい何とかしているという訳です。
 それから将来的な投資、例えば新しい店舗を作るとかいう場合にも、銀行から融資を受けたりするのではなく、社内から出資者を募ります。
これは無担保で、配当は年1回、利息は最高で10%というもので、基本的に店舗の中核を担う人が一番の出資者になるようですが、新店舗を助けたいと思った人が出資すると言います。
実際社員の多くがそういった出資をしていて、その総額は約10億円にもなるそうです。
出資をすると、人事評価が高くなり給料にもそれが反映されるため、お金のある社員は出資をし、その店舗がうまくいくように応援をします。
つまり、銀行からお金を借りなくても自分達だけでうまくやっているから内部留保を持たなくても良いと言う訳です。
これまで無借金経営の会社と言うのは聞いた事がありますが、内部留保なしというのは初めてでこの方法には本当に度肝を抜かれました。
 また、社員が出資者になる事で所謂株主と経営者と労働者による対立の構図が薄れて、経営者は出資者と労働者の両方の利益を考えた経営をするようになります。
普通の会社ですと、出資者と経営者がとにかく利益を追求する余り社員の人件費削減などに努めようとしますが、社員が同時に出資者でもあるためそういった一方的な事はできなくなります。
経営者のボスは出資者であり、社員が出資者になっているのですから当然と言えば当然です。
逆に社員の方も出資者として会社の将来に関してリスクを負っていますから、自分勝手な事はできなくなり、何が会社のためになるのかを真剣に考えて会社に貢献しようと努めるようになります。
 番組の説明だけではメガネ21の経営がどのように行なわれているのかいまいちわからない部分も多かったのですが、更にすごいと思ったのは社長が交代制で、しかも管理職がいない事です。
社長は名ばかりで、各店舗の社員が交代でやる事になっていて、判子を押すなどの社長業とされる仕事は本部にいる社員がやっているとの事でした。
それから管理職ですが、メガネ21では店舗の社員はみんな平等の立場で店舗の責任者となる人はいますが、上司になる訳ではなく管理職にあたる人は置いていません。
創業者の平本さん曰く、すべてをネットで公開すると、管理職は必要なくなるとの事でした。
例えば、仕事の悩みを上司に相談したい時も、社内ネットのページに書き込めば、他の社員の誰かがそれに答えてくれるので上司は必要ありません。
 また、物品購入などの社内稟議は、ネットに書き込んでから三日間反対意見がなければ、承認されるという仕組みになっています。
一部の誰かが決めるわけではなく社員みんなの意見を参考にして決めるため、より良い案が出てきたりして効率的だと言います。
その他にも21の社内ネットには、各店舗の経営状況から社内会議の報告、人事評価、給与明細などありとあらゆる情報が載せられていて、社員なら誰でもそれを見る事ができるようになっています。
こうやってすべてを公開する事でやましい事や悪い事はできなくなりますし、社員同士や会社に対する疑心暗鬼がなくなり、深い信頼を築く事ができます。
基本的には一部の人が勝手に物事を決めるのではなく、ネットを介してみんなの意見を聞いてから決めているので、社員みんなが情報を共有していて、ああしろ、こうしろと指導する中間管理職を置く必要がないという事だろうと思います。
 それからメガネ21は人事もかなりユニークです。
採用される人は転職者が多いそうですが、本部の人が採用面接をした後、自分が働く事になる店舗の社員による面接をパスする必要があるそうです。
こうする事で採用された人は採用してくれた店舗の先輩に対して繋がりを感じるようになります。
あと、先ほども書いたようにネット上で人事評価と給料明細がすべて公開されているため、他の人がどんな評価を受け、どれだけの給料を貰っているか知る事ができます。
そして、人と比べて自分の評価に不満がある場合には、反対意見をネット上に書き込む事ができるようになっています。
もうひとつ極めつけなのが、ギブアップ宣言と言うものがあり、職場に合わない人がいる場合は、異動を願い出る事ができるそうです。
 ここまでメガネ21の経営方法について書いてきましたが、私が斬新で画期的と言った意味が少しはわかってもらえたかと思います。
平本さんは、社員のための会社を作ろうとこの会社を立ち上げ、論語の恕の精神、簡単に言うと思いやりの精神を基に会社の経営方法を作ってきたそうです。
しかし、ただ単に思いやりと言う事ではなく、企業と社員が直面する現実をしっかり見定めて、どういったやり方をすれば、社員の力を一番引き出せるのか、どうすれば効率的な運営ができ、他社との競争に勝てるのかという事を真剣に考えた結果ではないかと思います。
まあ、一般の企業とはかけ離れた事をしてますし、業種が違えば、経営のアプローチも変わってきますので、メガネ21のやり方をそのまま取り入れるのは難しいかもしれませんが、他の企業でも参考に出来る事はたくさんあるのではと思います。

 そして、社訓(みたいなもの?)がユニークです。

 ・社長の年収は、社員の最高額を超えてはならない
 ・「怪しい会社」から「珍しい会社」に
 ・自宅と自分の職場は、自分の金でつくろう
 ・資本主義は博打だから、リスクも覚悟
 ・長期雇用が保証されている
 ・「仲間主義」と「献身主義」の会社
 ・人は厚遇されていれば、他人をとやかく言わない
 ・どこよりも安く売っていく
 ・強い共同体意識で結ばれた会社
 ・採用条件は、自分の給与を削っても、仕事をともにしたい人
 ・社長は何もしない、自分の足跡を残さない
 ・4年で社長交代を顧客に公約
 ・人間信頼の「絶対評価」、人間不信の「相対評価」
 ・親は選べなくても、上司は選べる―――上司拒否権
 ・ノーワークノーペイが原則だから、有給休暇を先に買い取る
 ・パートさんは時給正社員、取締役にもなれる
 ・サービス第一主義だから、接客こそが命
 ・「心性」が「人間の魅力だ」

 どうですか?法人税も欲しいですが、こうやると社員さんが消費して、地域経済にはメリットがたくさん出てくると思います。