あたしの抽斗
子どもの頃には抽斗が開けにくかった
引っ張っても、叩いても
怒っても、泣いても
開かない時は開かない
そのくせ母親が引くと難なく開いて
夜中に勝手にすうっと開いたりもした
コツがあるのよね
こうやって抱き起こすみたいに引くの
それでも開かない時は待つしかないのよ
母親はくすくす笑いながら言っていた
あたしはふくれっ面をしていた
最近になってあたしにもコツがわかってきた
ちょっと心を澄ませて引くと
いろんな抽斗が開く
むずかしい本も新しい音楽も
古いアートも見知らぬ人まで
待つことを我慢さえできれば
世界は大きな箪笥みたいだなんて
大人になった証拠とは言えないね
抽斗って漢字、雰囲気ありますね。
いい感じで読み進んでいたんですが、最後の「世界は大きな箪笥」っていうので突然九十九神妖怪のようにそびえる箪笥、というのが見えて笑ってしまいました、ごめんなさい