泣く理由
涙とともに心に溜まったものを洗い流すために人は泣くのだという説がある。
それってなんだか高い木の葉っぱを食べるためにキリンの首は長いのだとか、
赤ずきんちゃんを食べるためにおばあさんの口は大きいのだとか、
そういう機能から帰納した理由付けと似ている。
でも、赤ずきんちゃんを食べ損なってもおばあさんは大きな口をしているし、
高い木がなくてもキリンは長い首をしているし、
心に溜まっ . . . 本文を読む
通勤
朝は居眠りしたり、ゲームをしたりしている。
夕方はきょろきょろ空席を探したり、メールをしたりしている。
だんご虫のように自分に閉じこもっているか、
巣をつつかれた蜂のようにイライラしているか、
いずれにせよ幸福な人はほとんどいないだろう。
それどころか我々の見るところ、
この車両だけでも少なくとも7人は隣の人間に殺意を抱いている。
やれ化粧をしただの、背中の荷物が当たるだの、傘のしず . . . 本文を読む
魂の重さ
一人暮らしをしているとお菓子を作りたくなる。
名前ほどの違いもないコンビニ弁当と、
どれも人気のコンビニスイーツをぶら下げてしんとした部屋に帰り、
食べ終わってたくさんの燃えないゴミを片付けていると「バカヤロー」って言いたくなるから。
とは言え、お菓子作りには様々な道具が必要だ。
大きなボウル、ゴムベら、計量カップ、デジタル秤……
収納の少ないワンルームマンションなのにハンドミキ . . . 本文を読む
6/15の木曜日にサントリーホールで行われた読売日響の定期演奏会へ行って来た。指揮は秋山和慶で、リヒャルト・シュトラウスの没後60年ということで、組曲「町人貴族」と「家庭交響曲」の2曲だった。
「町人貴族」はとても小さな編成でぼくの席の前にはヴァイオリンがいないくらいだが、ピアノ(三浦友理枝)とハープがある。冒頭の軽快な音楽が「プルチネルラ」を想起させる。20世紀の調性的な音楽を聴くとストラヴィ . . . 本文を読む
5/28の木曜日にサントリーホールで行われた読売日響の定期演奏会へ行って来た。指揮はオラリー・エルツで、前半がシベリウスの「トゥオネラの白鳥」と「レンミンカイネンの帰郷」、バーナバス・ケレマンの独奏でプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番、後半がラフマニノフの交響的舞曲だった。
今シーズンから1階席の前方に変わった。第1ヴァイオリンの第3プルトを目の前に見上げるといった席である。これまでの管楽 . . . 本文を読む