夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

チャイコフスキー:弦楽四重奏曲と弦楽六重奏曲

2006-04-04 | music

 チャイコフスキー(1840年-93年)の室内楽と言えばモスクワ音楽院の創設者N.G.ルビンシュタインの追悼のために書かれたピアノ三重奏曲イ短調の「ある偉大な芸術家の思い出のために」が有名ですが、他の主な作品としては3曲の弦楽四重奏曲と弦楽六重奏曲があります。ボロディン・カルテットを中心としたメンバーによる2枚組みのCDで聴きました。

 弦楽四重奏曲の第1番ニ長調(1871年)はウクライナの民謡に基づくと言われる第2楽章のアンダンテ・カンタービレがとても有名で、アジアふうのヴァイオリンの歌い回しが我々には親しいものです。ただちょっとそのメロディに耽溺しすぎていて室内楽としてはゆるい感じがします。その他の楽章もとても聴きやすいものです。

 第2番へ長調(1874年)は第1楽章はベートーヴェン以来の伝統に則った厳しい音楽を作ろうとしているようですが、その後の楽章は良かれ悪しかれチャイコフスキーらしいメロディアスな音楽になっています。

 第3番変ホ短調(1876年)は重く暗い奇数楽章と明るく快活な偶数楽章が交代する曲で、親しいヴァイオリニストの死を悼んで書かれたものだそうですが、奇数楽章の延々と続く嘆きにはちょっと付き合いきれないって感じがします。第6シンフォニーの最終楽章のようなわけにはいかないようです。

 弦楽四重奏曲が書かれた1870年代は「白鳥の湖」やシンフォニーの第2番から第4番が書かれた頃で、管弦楽曲には彼らしい巧みさを見せていたのに、この3曲では弦楽四重奏曲に必要な緻密な書法といったものを感じることが少なくて、この分野に向いてなかったのかなって思います。

 弦楽六重奏曲ニ短調「フィレンツェの思い出」(1890‐92年)は晩年の作品で、「くるみわり人形」と同じ頃です。第1、第2楽章は甘いメロディが次々と出てくるチャイコフスキーらしいもので、ブラームスのそれとやや似た印象があります。第3、第4楽章はロシアふうの主題を器用に展開したものです。ということで、フィレンツェに滞在したときの思い出を描いたものってことになっていますが、どこの国の街なんやろかって気がします。でも、弦楽によるディヴェルティメントと思って聴くといい感じです。

 ブラームスもそうですが、無駄のない音楽を強いられる弦楽四重奏曲よりもピアノが入ったり、楽器が増えたりした方が彼らの個性が発揮されているように思います。もっとあっさり言ってしまうと、弦楽四重奏曲はシンフォニー以上にベートーヴェンの重圧が大きくて(なんせ16曲もあるしw)中途半端になってしまって、20世紀に入らないとこれという曲はないようです。つまり弦楽四重奏曲=弦楽によるソナタという固定観念から自由になって、このジャンルがもう一度おもしろくなったように思います。



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