夢のもつれ

なんとなく考えたことを生の全般ともつれさせながら、書いていこうと思います。

レクイエム・ノート~意外な人のレクイエム

2005-07-04 | music

 結局、昨日はタワーレコードに行って、前回以上の衝動買いをしてしまいました。ボーナスが出てすぐの日曜日、渋谷は人がいっぱいで歩きにくくてしょうがない、どうせ大した用もないくせにうじゃうじゃ出てきやがってと思うと苦々しい限り、って自分を棚に上げたことを言ったのは内田百ですので誤解なきようw。くだんのタワレコもけっこう混んでました。ポイント2倍という人のボーナスを掠め取ろうという商法に引かれて集まるのは、あまり賢い人間のやることではありません。ましてや散々クラシックのフロアで買いながら、もうちょっとで3千円タダになるポイントカードが2枚になるからといって、場違い&混雑を極めたJポップのフロアに降りて東京事変のアルバムを買って、aikoのウタウイヌ&ウタウイヌ2と引き換えるに至っては、性格破綻者のすることでしょう。よい子は真似をしないようにw。

 元々はレクイエムで今まで高くて買えなかった(ふだんは1500円以上のCDは買いません)のを、ええいままよ買っちゃえってことだったんですが、リストを見ながらあちこち歩き回るのは疲れます。要領が悪いのは生まれつきでしょうがないんですが、それで適当なところで切り上げればいいものを在庫がないのに憤慨して、他のを買ってしまうのは冷静になった今考えると、自分のしたことと思いたくないですね。今日はその成果?も含め、レクイエム・ノートの番外編ってことで、私がレクイエムをまとまって聴き始めた頃に「へえ、こんな人がレクイエムを書いているんだ」って思ったそれなり有名な人を挙げてみます。

○ドニゼッティ(1835):「ルチア」とか「愛の妙薬」とかで有名なオペラ作曲家ですが、レクイエムも書いてます。いまだにCDにお目にかかってなくて悔しいです。狂乱はしませんでしたけどw。ウィーンのシュターツオーパーで見たグルヴェローバのルチアは総毛立つものがありました。
○ブルックナー(1849):25歳のブルックナーと言えばまだ赤ん坊みたいなものですがw、やはり有名なテ・デウムなどと比べるとかなり落ちますね。まだシンフォニーの習作すら手がけていない頃ですし。
○シューマン(1852):これも最初の頃から知っていますが、とてもさわやかな感じで秀作です。宗教曲の嫌いな人にもお勧めです。また、これに先立って、1849年にはゲーテの作品に拠る「ミニョンのためのレクイエム」というのも書いていて、これもシューマンらしいユニークな曲です。
○スッペ(1855):このオペレッタやその序曲「軽騎兵」で有名な人なんかはかなり意外度高いですね。昨日Getしました。ところがこのVirginのCDはコピーコントロールされていて(CCCD)、HDDに簡単には落とせないんです。くそー。いろいろ批判が高まったのでしょう、CCCDは一時の仇花で終わりましたね。解析してみるとコントロールのためにかなり領域食ってますから、クラシックに使う神経がわかりません。ああ、曲ですか? まだ聴いてませんから……
○リスト(1868):これがまだ聴けていないのは慙愧に耐えません。前にも記事(3/30)にしましたが、いろんな意味でユニークな人ですから、たとえ出来が悪くても何か変わったことをやってそうに思うので、ともかく聴いてみたいです。
○サン・サーンス(1878):少し前に聴きました。すみません、私サン・サーンスって「序奏とロンド・カプリチオーソ」とか「動物の謝肉祭」とか、ご本人がそんなんで評価してくれるなよって言いそうな曲しか評価してないんです。このレクイエムもシンフォニーとかと同じで、なんか大層に鳴ってるなって感じで、すごく印象薄いです。
○ドヴォルザーク(1890):これは先日書いたとおり、隠れた名曲だと思っています。
○グノー(1893):これも昨日Get。やっぱりまだ聴いてません(昨日はウタウイヌだけ……)。どうでしょうね。彼の本領は「ファウスト」とかのオペラなのかも知れませんが、バッハの平均律の劈頭によけいなメロディを乗っけた「アヴェマリア」の印象が悪いので。あんなの京菓子にジャムかけたようなもんですから。
○レーガー(1915):CD見つかんないです。バッハとかモーツァルトとかの主題による変奏曲とフーガなんかで知られています、っていう醒めた言い方になっちゃう作曲家です。変奏曲もフーガもご本家に比べてインスピレーションないですからね。
○ディーリアス(1916):これもCD見つからないです。彼はわりと有名だと思うんですけど、代表曲ってなんだろ。「村のロメオとジュリエット」なのかなぁ。
○クルト・ヴァイル(1928):有名な「三文オペラ」を含め、彼の作品はこのブレヒトの詩による「ベルリン・レクイエム」しか知りませんが、率直に言っておもしろいというより、安直な発想の曲です。レクイエムというものへの風刺とか皮肉なら十分成立すると思いますが、そうでもなくただ薄っぺらな音楽に聞こえます。
○ヒンデミット(1946):「画家マチス」の作曲家も書いてます。これは「遅咲きのライラックが前庭に咲いた時」という、ホイットマンがリンカーン大統領を追悼して書いた詩によるものです。ですので、厳密な意味ではレクイエムではないのですが、さわやかな、でもしみじみとした味わいのある佳曲です。
○カバレフスキー(1963):「道化師」でというか、この組曲だけで有名な人ですが、ソ連体制に順応した人のようで、「ファシズムと戦って死んだ人々に捧げる」として作曲されています。CDなかったです。
○リゲティ(1965):バリバリの現代音楽の彼も書いていますが、これもCDを見つけられませんでした。
○ストラヴィンスキー(1966):彼の宗教方面の曲では「詩篇交響曲」がなんといっても有名ですが、晩年(没年は1971)の「レクイエム・カンティクルス」はカメレオンと呼ばれ、変貌し続けた彼の最後の姿を聴くのに欠かせない気がしますが、やっぱりCDが見つけられないでいます。
○シュニトケ(1975):彼の作品はギドン・クレーメルなどが鋭角的な演奏をしているので、とても期待している曲でした。シンフォニーの4番とカップリングしたCDをGetしました。
○ルロイド・ウェッバー(1984):「キャッツ」や「オペラ座の怪人」の売れっ子がなんでレクイエムなんかを手がけたのかと思いますが、父親の死と、ポル・ポト政権下のカンボジアで、ある少年が四肢を切断された姉を殺すか、自分が殺されるかの選択を官憲に迫られ、後者を選んだという記事を読んだのがきっかけだそうです。……なるほど。レクイエムが今なお生命力を持つ理由がわかるようなエピソードですが、曲としても形式はカトリック典礼に従ったものです。今回Getしましたが、10万枚のヒット作でもあるそうなので、聴くのが楽しみです。

 こうして見ていくと、ヴェルディやフォーレなどだけでなく、ロマン派以降の脱宗教の時代においても多くのレクイエムが作曲されていて、音楽家が死の問題を考えるときに大きなインスピレーションを与え続けてきたことがわかります。他方、カトリック典礼からは離れていく傾向も見てとれます。

 ついでに、逆に書いてておかしくないのに書いてない人、書いててほしかった人もお遊びで挙げてみましょうか。
○バッハ:彼は夥しいカンタータや受難曲からわかるように、ルター派の作曲家ですが、ロ短調ミサを始めとしていくつかミサ曲を書いているので、おかしくはないでしょう。
○ハイドン:弟のミヒャエルは3曲も書いていて、モーツァルトのレクイエムにも影響を与えていると言われますが、兄のヨーゼフにはないです。たまたま機会がなかっただけだという気がします。
○ベートーヴェン:ミサ・ソレムニスの後にレクイエムを作曲する計画があったということです。
○シューベルト:彼もあまり有名ではないかもしれませんが、ミサ曲を作曲しているので、候補になりえますし、弦楽四重奏曲「死と乙女」(4/17)や最後のピアノソナタに見られるような死への深い洞察から、作曲されていれば必ずや傑作になったに違いありません。


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11 コメント

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わーお! (hippocampi)
2005-07-04 20:05:24
さっそく私もCDゲットに走ってみようかと思います。渋谷タワレコにないとすると、、銀座のヤマハとか。最近はAmazonで済ましてしまっているので久しく行って無いなあ。グノーのアヴェマリアはが京菓子にジャムってすごく笑えました。

あの、モーツアルトのレクイエム評はいかがでしょうか?
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そうですねw (夢のもつれ)
2005-07-04 21:58:23
銀座のヤマハは、最近行ってないですが、ちょっと期待薄のような気がします。渋谷のHMVは期待できるんですが、土曜日に3倍ポイントやっていたのを横目で見てただけに……せこい私w

アマゾンとかのネットはありえますね。HMVのは一時期よく利用してましたが、注文受けて来るまでにすごく時間がかかって、結局品切れですとかが続いていやになっちゃったんです。マイナーなCDを頼むことが多いからしかたないんですけど。



モーツァルトのはいずれ物語に出てくるんですよ。その時にでも……実演については4/12に書いていますから、よかったら読んでみてください。
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ウイーン! (hippocampi)
2005-07-05 15:16:32
4/12の記事を読ませて頂きました。素晴らしい!ウイーンでナマを聴かれたのですね。

小澤征爾と武満徹の「音楽」(新潮文庫)を読んでいるのですが、日本のホールはお金がかかって吸音板などがついてしまっているから、ワーンワーンという残響がまったくてナマの音が壁に跳ね返って響いてこない、とありました。バッハなどの時代、作曲や演奏は教会や木造建築で行われ、それに合った曲がつくられ、ホールと音楽が一体化する、と。

たしかに教会での演奏はわんわん残響がすごくて、速いメロディーがぜんぜん拾えず歯がゆい思いをしたことがあります。前の方の席ではよく聴こえるのでしょうが、これが本当の音楽の姿なんでしょうか。。。
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残響は…… (夢のもつれ)
2005-07-05 16:56:04
あんまりないほうがいいのかもしれません。少なくともザンクト・シュテファンみたいに巨大な空間の隅っこではどうしようもないです。ザルツブルクの大聖堂も巨大で、オルガンが有名なんですが、その真ん中辺りで聴いた音はすばらしいものでした。



近代のオケはおっしゃるように運動能力が高いので、コンサートホールで聴くのがいいのでしょう。ムジークフェラインはいわゆる靴箱型(サントリーホールもそうです)で、残響は少ないと思うのですが、いい音だと言われてますね。



ウィーンのシュターツオーパー(国立歌劇場)は、天井桟敷の方が音がふわっと上がってきて、いいようです。私は平土間はオペラを見るため、脇のボックス席は人に衣装を見せるためと言ってました。社交場ですからねw。
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音がふわっと… (hippocampi)
2005-07-05 21:45:55
「音がふわっとあがってくる」。。ああどんな音に聴こえるのだろう、と遠い目をしてしまいました。

この先、国内だけでなく、夢のもつれ様のようないい音楽、いいホールで一体感を味わって感激できるような、素敵な経験を得るチャンスがたくさん訪れますように、と今日から神様に祈ろうと思います。
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もう一つ、レクイエム見つけました (hippocampi)
2005-07-05 21:58:21
「音楽」の本によると、武満徹は「レクイエム」を書いているようです。小澤さんは絶賛していましたがいかがでしょうか?

以前、堤剛が武満徹の曲を弾いているのを聴いたことがあるのですが、あまり好きになれそうになく、よく分からなかったです。

もっと年齢を経て再度聴いたらまた違った感想が湧くのでしょうね。音楽って不思議です。
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これからですw (夢のもつれ)
2005-07-05 23:11:06
これからいい音楽を聴くチャンスはいくらでもありますよ。hippocampiさんの人生はこれからでしょうに。うらやましい限りです。



武満徹の「弦楽のためのレクイエム」(1957)ですね。ストラヴィンスキーが「この音楽は実に厳しい、全く厳しい。このような厳しい音楽があんなひどく小柄な男から生まれるとは……」と絶賛し、彼が世に認められるきっかけになった曲です。私は正直言って武満の音楽はあまりよくわからないのですが、後の「ノヴェンバー・ステップス」などと比べると若書きのように思います。

レクイエム=死者のためのミサ曲=カトリックの典礼曲ですから、あまりそうしたものから離れた、言葉のイメージだけ借りたようなものは認めたくないのです。例えば日本なら挽歌といった古代以来の言葉がありますから。

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いい音楽を聴くチャンス! (hippocampi)
2005-07-06 21:18:24
夢のもつれ様のように、たくさんいい音楽を知って、いい音が身体にしみ込んで、いい耳が持てるよう、日頃から感性を磨いておかなくちゃいけないと思いました。



余談ですが、小澤さんいわく、武満さんを神様だと思っているファンがヨーロッパやアメリカにたくさんいるのは、武満さんが「火星人みたいで、いつ死ぬかわかんない顔してる」からだって。すごくおかしかったです。

火星人みたいに小柄な人なんですね。
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武満徹は… (夢のもつれ)
2005-07-06 23:06:39
ストラヴィンスキーだって、小柄なくせにと言いながら、うれしそうだったとのことです。写真で見る限り彼の風貌には確かに火星人っていうか、ETっぽいところがありますね。
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事後報告。。 (hippocampi)
2005-07-11 18:55:34
レクエイム評を勝手ながらリンクさせて頂きました。こんなに比較できる人はそうそうおられないと思います。お許し下さい。事後報告致します
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