リオのオリンピックを見ているといろんなことを感じます。どの選手も国家の期待を担って戦っていることは、中継アナウンサーがいろんな競技で繰り返し叫んでいます。オリンピックは平和の祭典だそうですけど、裏から言えば形を変えた戦争でもあるわけです。それはかつてユーゴスラビア連邦を構成していたコソボ代表のケルメンディ選手が女子柔道52キロ級で金メダルを勝ち取った試合を見ていて、ひしひしと感じました。金メダリストは祖国の英雄です。アメリカのような金メダリストが掃いて捨てるほどいて、1人で何個も取っちゃうような選手がめずらしくない国でもそうでしょう。ましてや建国してまだ10年も経たない国で初の金メダリストなら、独立戦争の英雄にも匹敵するんじゃないですか。
世の中にはひねくれた人は必ずいますから、オリンピックのそういうところが嫌いだ、日の丸や君が代なんか見たくも聴きたくもないとわざわざ周りに言い散らしたりしてドヤ顔を決めたりしてるんでしょう。でも、ぼくはそういう人って実は自分の中の大和魂みたいなものが頭をもたげて、身体がぞわぞわするのが嫌で嫌で仕様がないんじゃないかなって想像しています。日本人ってめんどくさいですね。
ブラジル人はもっとシンプルに愛国心を爆発させちゃって、サッカーだと自国の選手がちょっとへまなことをやれば容赦のないブーイングですし、棒高跳びで自国選手と競り合って負けた銀メダリストの表彰式でブーイングしちゃうんですから、スポーツマンシップなんてカケラもないです。日本選手を負かした相手を称えるなんて、なんて甘いマスコミなんでしょう。近隣国なら焼き討ちされちゃうかもですね。
昔の日本のサッカーはクリーンだと言われてて、褒められてるって思ってたおめでたい日本人が多かったみたいですけど、あれって小馬鹿にされてたって思いません? ファウルすれすれ、場合によってはイエローカードやレッドカードもらってでも勝ちに行く、レフェリーが見ていなければ何をやってもかまわない、ビデオ判定になれば流れがこっちに来るかもしれないっていうのが国際常識でしょうから、ルールに反しない限り、限りなくずるいやり方をやらなくてどうして金メダルが取れるんでしょう。
うんうん、柔道で銅メダルをいっぱい集めたのはいいですけど、覚えきれないから5個で銀1個、10個で金1個とキョロちゃんみたいに交換してくれたらいいなって思わず口を滑らしたら、ホントだよね!ってウケました。潔い負けとダーティな勝ちを比較すればそんな感じだってことは、選手のインタビューを聴いていると誰しも感じることなんでしょう。結果がすべて!金メダルがいいに決まってる!てね。潔さなんて、女子レスリングみたいにすぱんすぱんと金メダルを取れるようになってから、好きなだけじっくり考えればいい話じゃないですか?
いくら抗議だかチャレンジだかしたって、無理なものは無理ですし、勝者が決まってから覆るのはよほどのことがないとむずかしいように感じます。シンクロナイズドスイミングが典型的ですけど、人間がartistic impressionを判定する競技は特にそうでしょう。体操は採点方法が細かくなる一方みたいですが、それでも内村航平は審判にえこひいきされてるんじゃないかって海外のメディアは思ってるみたいですから、ぐらぐらしてたら判定する方が落下しちゃいます。
ジャマイカのボルトの真似をしたつもりなのか、200メートルの準決勝で最後余裕かましたのか、決勝に進めなかったアメリカのガトリンって輝かしかったり、みっともなかったり紆余曲折の人らしいですけど、リオではただの引き立て役、ピエロにしか見えないって思ってるアメリカ人はいっぱいいそうです。敗者に掛ける言葉などないというのは至言です。
はいはい、自分じゃなんにもできないくせに、テレビの前でえらそうなことを言ったり、挙げ句選手の血のにじむような努力や涙なくしては聞けないような屈辱や無神経と言うより攻撃的で敵対的とさえ思えるようなマスコミの取材に対する忍耐といったメンタル面も含めた苦労の数々を知りもしないで、ブログを書いたり、ツイッターをテレビ局に投稿して採用されただけで周りに自慢してる人はいっぱいいるでしょうね。
そんな他人事ではなく、オリンピック会場に少しでも足を運んで自国選手だけをひたすら応援し、力の限り相手国の選手のやる気を削いで少しでも動揺を誘って、祖国に1つでも多くの金メダルを齎すのに貢献している愛国的な観衆の方がずっといいのはわかりきった話でしょう。それは現代の戦争がバトルフィールドだけじゃなく、SNSを含めた様々なメディアをも戦場とした戦いであり、戦争犯罪とならないようありとあらゆる手段を講じていることとそっくりじゃないですか? なんとかの一つ覚えみたいに万歳突撃、玉砕ばかりで歴史にも残らず、捕虜や現地人虐待で汚名だけを今に残すなんて、お話しにもなりません。
そんなのより、国家ぐるみで長年ドーピングをし、それをごまかし続け、国としては参加できない崖っぷちに追い込まれたりして、腐敗しきってたことも忘れたようなIOCにギリギリまで翻弄されながら、金メダルを獲得していくロシア選手の精神力の強さに見習うべき点は多いでしょう。
次はいよいよ東京オリンピックですから、国民が一丸となって金メダルを取るんだ!との一念に挙国一致すべき!と今から拳を突き上げるべきなのかも知れないなぁって気がしたりもするんですが、とりあえずリオは地球の裏側、あまりにもアウェイです。