ベルン大学神学部のウルリヒ・ルツ(
Ulrich Luz)名誉教授が70歳の誕生日を迎えられたのを記念して、献呈論文集(Festschrift)が出版されました。
Neutestamentliche Exegese im Dialog: Hemeneutik - Wirkungsgeschichte - Matthäusevangelium. Festschrift für Ulrich Luz zum 70. Geburtstag, hrsg. von Peter Lampe, Moisés Mayordomo und Migaku Sato, Neukirchen-Vluyn: Neukirchener Verlag, 2008.(『対話する新約釈義:解釈学-影響史-マタイ福音書 ウルリヒ・ルツ70歳祝賀論文集』)
Neukirchener社のホームページによれば定価39ユーロ90。
新約聖書学に少しでも関わった人間であれば、ウルリヒ・ルツの名前を知らない者はいないというくらいの、まさに20世紀後半を代表する新約学者の一人ですが(巻末の業績一覧によれば、最初の論文は1960年の Schweizerische Theologische Umschau 30 [S. 30-39] に掲載された Reform des Theologiestudiums?「神学研究の改革?」です)、ルツ教授が日本と深い関わりを持つことも、これまた日本の神学界ではよく知られているところです。
チューリヒ大学で博士号・教授資格を得た後、1970年から72年までルツ教授は国際基督教大学と青山学院大学で教鞭をとっており、その時の経験を基に、1973年には八木誠一氏と共編で Gott in Japan (München, 1973) を出版しています。その後、ドイツ・ゲッティンゲン大学、さらに1980年からはスイス・ベルン大学で新約学の教授を務めましたが、その間に多くの日本人学者が学位論文の指導を受け、あるいは客員研究員として厚遇を受け、交わりを深めてきました。ルツ教授のもとで学位論文を書いた学者には、佐藤研(立教大学)、加藤善治(関西学院大学)、嶺重淑(関西学院大学)の各氏がいます。私も1991年から95年までベルンに留学した際、論文指導教授ではなかったものの、同様の暖かい配慮を戴きました。学位論文の副査も務めて下さったばかりでなく、論文を書く過程で対話の相手にもなって下さった、まさに恩師の一人です。
そんな背景もあり、今回の献呈論文集には23人の寄稿者のうち、日本勢が6人も入っています。
小河陽(Ogawa Akira, Interpretive Strategies for Reading the Parables, S. 71-83)
佐藤研(Sato Migaku, Zen und Gnosis, S. 85-97)
辻 学(Tsuji Manabu, Die Intertextualität von 1Tim 2,1-3/Tit 3,1-2, S. 99-110)
八木誠一 (Yagi Seiichi, "Bashologie" im Neuen Testament und synoptische Evangelien, S: 121-131)
原口尚彰(Haraguchi Takaaki, Die Rezeption der biblischen Seligpreisungen bei den Apostolischen Vätern, S. 297-306)
嶺重淑(Mineshige Kiyoshi, Wer sind "die Armen im Geist"? Japanische Interpretationen von Mt 5,3, S. 307-318)
まだ解釈学に関する著作も執筆中とか。70歳を超えてますます意気盛んなルツ教授の健康が守られますように。
追記:ルツ教授の著作は、日本語にも訳されています。EKK註解シリーズの『マタイによる福音書』(小河陽訳。邦訳全4巻のうち1-3巻既刊。教文館)は、マタイ研究史の記念碑的著作ですが、その他にも以下のものがあります。
『マタイの神学:イエス物語としてのマタイ福音書』原口尚彰訳、教文館、1998年。3255円。
『マタイのイエス:山上の説教から受難物語へ』関西学院大学神学部編、日本キリスト教団出版局、2005年。1680円。
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