チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

ボストンのT

2014年07月23日 13時35分03秒 | Weblog
前回、自宅近くを走る路面電車、LEX を取り上げたところ、マサチューセッツにあるボストン・カレッジで在外研究中の友人が、路面電車に興味があるのなら、ということで送ってくれた写真を紹介します。ご提供ありがとうございました。

友人が大学からの帰りに乗るという路面電車、地下に潜るので、当地では地下鉄扱いだとか。全米で最初の地下鉄というこの電車「T」という愛称で呼ばれているそうです。路線は色分けされており、上の写真はグリーンライン。


グリーンラインの車両。


こちらはレッドライン。なるほど、こうして見れば確かに地下鉄です。


車体に「T」の字が見えます。


レッドラインにある Harvard Square Station の駅構内

他にはオレンジライン、ブルーライン、シルバーライン(高齢者向けの路線ではない。厳密に言えばバスだが地下鉄扱いなんだとか)があるとのこと。詳しくはウィキペディアか、マサチューセッツ湾交通局のページをどうぞ。



これが、「チャーリー・チケット」(紙製)および「チャーリー・カード」(プラスチック製)と呼ばれるプリペイドの乗車カードです。「チャーリー」とは、アメリカで良く知られている(らしい)"Charlie on the MTA" と呼ばれる曲に登場する、5セントの追加料金が払えないために、ボストン地下鉄(当時は Metropolitan Transit Autority = MTA)から永遠に降りられない(架空の)人物なんだそうです(Wikipedia による)。

アメリカに行くことがあったら、一度乗ってみたいものです。この「地下鉄」。

乗ってみました 「グリーンムーバ― LEX」

2014年07月08日 19時06分27秒 | Weblog
昨年から宇品線を走り出した、路面電車の新型車両、その名も「グリーンムーバ― LEX」(上の写真は広島電鉄さんのページから拝借)。LEX といえばラテン語で「法律」ですが、名前の由来は Light Excursion からだそうです。「小旅行、周遊旅行」の意味を込めているそうですが、たぶんそれを連想できる人はほとんどいないでしょう。

先日、たまたま乗る機会があり、車内も空いていたので、ちょっとだけ写真を撮りました。

これが車内。緑のシートが明るくて清潔な感じを出しています。


運転席。撮ったのは、進行方向と逆の席です。広島駅で折り返し運転になるのですが、その時、運転席にいた運転手さんが、逆の運転席へと一目散に走る光景が見られます。駅で待っているお客さんを待たせまいとする熱意が感じられるダッシュです。


この座席、向かい合って座るのか、それとも横向きに座るのか、考えてしまいます。テーブルつきなので、空いているときはその上で書き物も一応可能。


この LEX、快適で良いのですが、問題は、一番前、すなわち運転手さんの横からしか降りられないため(ワンマン運転です)、最後部に乗った場合、降りるために電車2両分を歩かねばならないことです。空いているときはそれも大した苦痛でないのですが、混んでいる時は大変。

しかし、宇品線にもようやく綺麗な電車が走るようになったか、と感慨深いものがあります。この路線はいつも、昭和40年代に京都や大阪、福岡で走っていた「おさがり」の車両がほとんどでしたから。4月から運賃が10円上がって160円になりましたが、綺麗な車両なら、まぁいいか、という気にもなります。

【神学関係】あると便利シリーズ(3) W. G. キュンメル『新約聖書概論』

2014年07月02日 13時49分41秒 | Weblog
「あると便利」というか、新約聖書の研究やるなら必携というところでしょうか。

Werner Georg Kümmel, Einleitung in das Neue Testament, 21. Aufl., Heidelberg: Quelle & Meyer, 1983.

いわゆる「新約聖書概論」(新約各文書の成立事情や内容について解説する書物)の、もはや古典といっても良いかもしれません。第21版(1983年)とありますが、元来はドイツの新約学者パウル・ファイネ(Paul Feine, 1859-1933)が1913年に著した同名の書を、第8版(1936年)からヨハネス・ベーム(Johannes Behm, 1883-1948)が改訂し、さらに第12版(1963年)からこのキュンメル(1905-1995)が手を加えています。ですから年輩の方々なら、「ファイネ・ベーム」または「ファイネ・ベーム・キュンメル」の名前でご存じかもしれません。

写真のものは1983年発行の第21版ですが、これは第17版(1973年)の本文と変更がなく、「補遺」(Anhang)として、1971年12月から1983年3月までに刊行された(あるいはその期間にキュンメルが知った)文献を補っています。ドイツ語版はこれ以降改訂されていないようです。英訳(Introduction to the New Testament, Abingdon Press, 1996)は第17版に基づいているとのこと。

キュンメル自身は比較的保守的な立場の学者で、例えば第二テサロニケ書については、これをパウロの真筆だとする立場を採っています。しかし同時に、自分のそれとは異なる見解も、論拠と共にきちんと紹介しているので、キュンメルの立場に賛成でなくても安心して読める「概論」です。

昔は、購入した本に日付とサインを(生意気にも)入れていたので、扉を開くと、この本を1988年4月11日に買ったことがわかります。当時は大学院前期課程の2年生でした。どうやら教文館から買ったようで、「6670円」と値段が鉛筆書きされています。



当時は、ヤコブの手紙に関する修士論文にかかりきりでしたから、何度もこのキュンメルを読み返しました(ドイツ語を読むのが非常に遅かったせいもあります)。そのせいで、ヤコブ書のところだけページが取れてしまっています。もともと製本がしっかりしていないせいもありますが。

最近では「新約概論」というと、Udo Schnelle のものが参照されることも多くなりましたが(Udo Schnelle, Einleitung in das Neue Testament, UTB1830, 7. Aufl., Göttingen: Vandenhoeck & Ruprecht, 2011. これも英訳あり)、やはり「新約概論」というと真っ先に思い浮かぶのは、今でもキュンメルのものです。実際、事あるごとに必ず参照しています。

キュンメルの新約概論は、上述したとおり、20世紀初めからのドイツ新約学が継承してきた遺産のような書物です。田川建三先生も「この種の学問的伝統の継承の仕方は、うらやむべきものがある」と記しておられますが(『書物としての新約聖書』勁草書房、1997年、187頁)、同じ気持ちです(カトリックには、同じような継承の成果として、「ヴィーケンハウザー・シュミート」の新約概論があります。A. Wikenhauser/J. Schmid, Einleitung in das Neue Testament, 6. Aufl., Freiburg: Herder, 1973)。

日本で書かれた新約概論としては、名著である山谷省吾『新約聖書解題』(新教出版社、1948年)があります。その後となると、『総説新約聖書』(日本キリスト教団出版局、1981年)およびその新版『新版総説新約聖書』(2003年)くらいしかありませんが(翻訳ものはあります)、どちらもオムニバス形式であるため(後者では私も加えていただきました)、執筆内容やスタンスにばらつきがあるのは否めません。

キュンメルの新約概論、いまでは古本でないと手に入らないようです。見つけたら即購入を勧めたい1冊です。