チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

国際キャッシュカード

2004年10月31日 01時10分17秒 | Weblog
こちらでの生活費は、日本の銀行口座から、国際キャッシュカードで引き出しています。スイスに銀行口座を開いて、そこに振り込んでもらうという手もあったでしょうが(最初の留学の時はそうしました)、半年だけの滞在のために口座を開設するのは面倒だし、口座維持のための手数料を差し引かれたりして、いい気持ちもしないので(口座を閉めるのにも手数料が要るはず)、国際キャッシュカードに今回も頼ることにしました。スイス銀行に口座を持っているというと聞こえがいいでしょうけれど。

この国際キャッシュカード、短期滞在には実に便利なカードです。こっちの銀行のATMで現金を引き出せば、日本の口座から引き落とされる仕組みで、手数料が1回に200円かかるのと、換算レートが若干悪いのが難点といえば難点ですが、1回に1000スイスフラン(今なら9万円前後)まで引き出せるし、現金を引き出せる銀行も非常に多くなっています。以前は UBS だけだったように思いますが(しかも1回500フランまでだった)、今回試してみると、Credit Suisse や ZKB (Zuercher Kantonalbank) でもできました。

現金の出費がかさむと、国際キャッシュカードの使用回数も増え、手数料もそれに伴ってかさむので、まとまった額の出費はクレジットカードで行い、現金は国際キャッシュカードで引き出すという具合にしています。スイスは、これだけ銀行の発達した社会でありながら(だからこそ?)、現金取引が意外に幅を利かせているので、やはり手持ちの現金がある程度ないと不便します。

日本の口座にお金がいくら残っているかも、こちらの ATM で確かめることができるのですが、それにも手数料が1回100円かかります。これはさすがにもったいないので、大手銀行ならたいていやっている(はずの)インターネットバンキングのウェブ通帳を利用する方が賢明でしょう。

当然ながら、国際キャッシュカードで引き出した額は、そのときのレートで円に換算されて、日本の口座から引き落とされるわけですから、外貨レートの変動に敏感になります。以前は、街の銀行が掲示しているレートを見に行っては一喜一憂したものですが(最初の留学時に、1スイスフランが70円近くになった時期があり、貧乏留学生としてはずいぶん助かったものでした。今は90円前後でしょう)、最近はこれもインターネットで見ることができます。インターネットの発達で、留学生活もずいぶんと便利になったのを実感しています。

国際キャッシュカードに頼っていて怖いのは、カードの磁気がダメになって使えなくなった場合です。キャッシュカードでその経験をしたことはまだありませんが、前回(2度目。5年前)のスイス滞在時に、VISA カードの磁気がおかしくなって、結局再発行してもらったことがありました。VISA の場合は、再発行が割合早くできましたが、国際キャッシュカードで同じことが起こったら、外国から再発行させるのは難しいのではないかと思います。

前回の滞在時に使った国際キャッシュカード、磁気が弱っていたら怖いので、今回は新たに作り直してもらったものを持参しています。それでも使うたびに、うまく行くかどうか少々緊張します。

du か Sie か?

2004年10月29日 06時12分40秒 | Weblog
ドイツ語を話していて困るのは、相手によって du (お前、君)と Sie (あなた)を使い分ける必要があるということです。日本語の敬語と違って、上下関係の表現ではないので、使い分けの境界線を知るのが難しいわけです。

今日の夕方神学部で、旧新約聖書学専攻の博士候補生・助手・教授が集まって「研究セミナー」が開かれました。2週間に1度開かれるこのセミナー、2時間ほど発表・討議をした後で夕食に行くのですが、新しい知り合いを作る良い機会でした。(キリスト教神学専門の方々へ: テーマは「エノク書と黙示文学」です。)

しかし、そこで困ったのがこの du/Sie です。教授相手なら、基本的に Sie で行けば良い。とはいえ、かつての指導教授のように、すでに du で呼び合っている人もいるので、Sie で呼ぶ相手と Du で呼ぶ相手が混在するとちょっとややこしくなります。というか、注意して話さないとこんがらがる。(疑問: du で呼ぶ相手と Sie で呼ぶ相手をまとめて呼ぶときは ihr だろうか、Sie だろうか? 習った気がするけど、忘れてしまった。)

食事の席で隣にいた女性は、助手をしている(と思う)人だったのですが、最初は僕に du で話しかけていました。ところが、最後になって、du で良かったのかしら、ということになり、この話題になりました。僕が教員だと知ると、それなら Sie かな、ここでも教授には基本的に Sie だからと言うのですが、教授と助手の間でも、付き合いが長いと du で話すことも多いそうで、社会的地位や年齢などで一概に決められないところが難しいわけです。実際僕も、博士候補生(日本で言えば博士課程の大学院生)の時から指導教授と du で話していました。これは、教授の人柄にもよりますから、どの博士候補生でも同じというわけではありませんが。

du か Sie かは、上下関係を表すというより、横関係の近さ・遠さを表すという方が感覚的に当たっています。(面白いのは、お祈りで神さまに Du で呼びかけることです。神さまに「君、あんた」と呼びかけている感じで、どうも違和感を感じるのですが。)

結局、さきほどの彼女とは du を使うことにしました。したがって、ファーストネームを使うことになります。こっちの人は、苗字は複雑で覚えにくいのが多いけれど、ファーストネームはだいたいパターン化しているので楽です。彼女は Christine という名前でした。こっちのファーストネームを覚えてもらうのは大変でしたけど。

聯華貿易公司

2004年10月28日 04時34分02秒 | Weblog
世界中どこに行っても中華料理屋はある、とよく言われますが、中華食材店もまた然り。チューリヒの町にもちゃんとありました。

その名は聯華貿易公司。Lian Hua と表記されています。チューリヒ中央駅から、トラム10番ないし14番で Berninaplatz 下車。停留所のすぐ左側にその店はあります。

こちらではたいていそうみたいですが、中華食材店といっても、中華だけではなく、アジア料理の食材を幅広く扱っています。キムチもあれば、タイ料理、そして日本食も置いてある。面白いのは、日本以外の国で売っていそうな「日本食」を置いているということです。

写真は日本のインスタントラーメンですが、なんと「明星三昧」という名前。中華三昧ではありません。1袋約70円。青い方が「東京しょうゆ」で、緑が「函館しお」。ちゃんと日本語でそう書いてあるのです。

「函館しお」を試食しました。悪くありません。インスタントラーメンなら、ミグロでも売っているのですが、値段は3倍近くする上に、とても(日本人の口には)ラーメンとして常食できない味なことが多い。異常に辛かったり、30年くらい前のラーメンといい勝負な代物だったりします。(そういう種類の「怪しい」ラーメンも Lian Hua にはたくさん置いてあります。)

その点、この「明星三昧」は、クセはあるものの、日本のラーメンといって差し支えない味です。麺も、中華三昧を思い出させるようです。英語で Low Fat, No Cholesterol と書いてあるのがちょっとひっかかりますが。タイで製造し、輸出しているようです。調理法はタイ語で書いてあります。

ちなみに、「出前一丁」には幾つもの種類があります。元祖「出前一丁」(に一番近い味のもの)もありますが、パッケージの色を変えて、チキン味だのポーク味だの、5つから6つくらい揃っていたような……。

この Lian Hua が、開店2周年記念セールということで、今週は15%割引をしています。エビや魚などの冷凍ものを箱買いすると、20%から30%割り引くのですが、そんなものを入れる冷凍庫は当然家にありません。

妻と出かけて、いろいろ買物をしてきました。明星三昧も少しだけまとめて買いました。日本では今やほとんどお目にかからない、「ハウス本豆腐」も健在です。ミグロなどに行くと、本当に角に頭をぶつけて死んでしまいそうな「TOFU」を売っているのですが、本物の「豆腐」にはほとんどお目にかからないだけに、これも購入しました。

感動したのは、昼食を振舞っていたことで、焼きそばやあんかけご飯を作って、来店した客に出しているのです。もちろんタダ。ご丁寧にも、店の前の通りにテーブルと椅子を出して、ミネラルウォーターまで用意している。気前の良さに驚きました。これも開店2周年記念のサービスのようです。

Lian Hua には、食材のほか、食器類もあります。炊飯器も置いているのですが、これがなんと、1960年代の製品かと思うような古典的な代物です。買う人がいるのだろうかと心配になるくらい。

日本食の食材だけほしい向きは、Nishi's Japan Shop へどうぞ。トラム停留所 Milchbuck 下車2分のところにあります(追記[04.10.29]。トラム7番か14番に乗って Guggachstrasse で下車すれば目の前です)。チューリヒおよび近郊に住んでいる人なら誰でも知っている有名な店です。

真夜中の電話

2004年10月27日 04時06分48秒 | Weblog
今朝、というよりまだ真夜中の3時半のこと。突然、居間においてある電話が鳴りました。

寝室でその音に気づいたので、意識朦朧とする中でようやく電話に出たのですが、相手は何も言いません。

こちらの名前を言ったのですが(ドイツ語圏では、電話に出る時いきなり自分の名前を言う)、反応がありません。そこで、「もしもし」と日本語で言うと、

「あ、松本さんですか?」

「……。いえ、違いますけど。」

「あ、すみません。ガチャッ。」

国際間違い電話。

電話が切れた後、ベッドに戻ったのですが、驚きと不愉快さですぐに寝つけません。そこで考えてみました。どうしたら、いったいこういう現象が起こりうるのかと。

チューリヒに住んでいる松本さんという人に電話しようとしたのだろうか? それなら、その松本さんは、こんな真夜中に起きている(ことを相手も知っていた)ということになる。あるいは、7時間の時差というものを計算していなかったのかもしれない。いま何時だと思ってるんだ!と言いそうになったが、いまここが何時かを相手はわかっていなかったとしたら……。余計に腹が立つ。

この家に以前、松本さんという人が住んでいた(電話は家の管理会社のものなので、常にこの家はこの番号)のだろうか? しかし、妻が階下の人に尋ねてくれたところ、そんな人は住んでいなかったとのこと。

かける国を間違えたのだろうか? もしそうなら、ふざけるな!と言いたい。国番号くらいよく調べてから電話するものだ。

いずれにしても、非常識な電話でした。おかげで寝不足です。時差というものをよく考えてもらいたい。

ちなみに、夏時間は今週いっぱいで終り。来週からは時差が8時間になります。日本の正午がこちらの朝4時。国際電話をするときは時間をよく考えましょう。もう真夜中の電話はゴメンです。


健康保険加入免除

2004年10月26日 04時36分32秒 | Weblog
今日、チューリヒ州の衛生局(Gesundheitsdirektion)から1通の手紙が来ました。「あなたとご家族の健康保険加入義務を2005年3月31日まで免除します」。この通知をもらうまでが長かった。

事の始まりは、チューリヒに住み始めて2週間ほどしたとき、8月25日付けでチューリヒ市の衛生部門から来た手紙でした。それによれば、1996年から発効している健康保険法により、スイスに居住する者は皆、スイスの健康保険に加入することが義務づけられているとのこと。3ヶ月以内に健康保険に加入しないと、罰として2倍の保険料を支払わされるという丁寧な脅し付きでした。手紙には、スイスの主な保険会社と保険料の一覧表まで付いており、それによれば、会社によって差はあるものの、だいたい3万円前後の保険料が一人当たり(子どもはずっと安くなっていましたが)必要なようです。

ただし、添付された法律条項のコピーによれば(これを丁寧に読まないと気づかなかったのですが)、この義務が免除されるケースがあり、僕のような期限付き滞在の研究者はそれに該当することがわかりました。しかし、日本から保険に入ってきている(海外旅行保険を8ヶ月間かけてある)という事実だけではダメで、その旨を証明書類一式と共に申し出て、免除の認定を受けないといけないというのです。研究者であること、こちらに一時的に研究のため滞在していること(チューリヒ大学の客員教員であること)、そして日本で保険にちゃんと入っていることをそれぞれ証明する書類が必要になりました。

大学の証明は事前に用意してあったので、あとは保険加入の証明だったのですが、それには、衛生局のホームページから所定の書類をダウンロードし(PDF)、それに保険会社の署名・捺印をもらわないといけません。幸い、日本の保険会社が迅速に対応してくれたので(さすがは日本のサービス精神!)、送った書類に署名・捺印をもらって、他の証明書と一緒に衛生局に送り(市の衛生部門に送ったら、免除の承認は州が行うからというので、州の衛生局に転送されました)、今日やっと無事に承認の手紙を受け取ったという次第です。正直言ってホッとしました。こちらで高い保険料を払わされてはたまったものではありません。

最初に来た通知によれば、この法律は1996年から発効しているということなので、前回ベルンに住んだ1999年~2000年の際も同じことがあったはずなのですが、なぜか前回はベルン市から何も言ってきませんでした。この一件もまた、チューリヒの印象を悪くするのに十分役立ったことは言うまでもありません。

妻に言わせれば、健康保険に加入していない外国人の医療費未払いなどが重なって、厳しくチェックするようになったのではないかとのことですが、案外そうかもしれません。チューリヒ州はとくに外国人居住者の割合が高いので、この種のチェックがベルン州などより厳しいのかも。

それにしても今回は、税金だ保険だと面倒な手紙がいろいろ来ます。チューリヒ市のマークが入った手紙が郵便受けに入っているとドキッとします。

ピザ宅配とケバップ

2004年10月25日 04時52分17秒 | Weblog
今回チューリヒに来て目につくのは、ピザの宅配です。5年前にベルンに来た時もたぶん存在したのでしょうが、気づかないままでした。10年前は確実に存在しなかったはずです。それが今では、日本みたいに宅配のチラシはあるし、家の近くに2件も宅配の店があります。頼んだことはまだありませんが、値段表を見ていると、店で食べるのとそう値段も変わりません(もともとが高いってことか)。

2件のうち1件は、いつも行くスーパー「ミグロ」の近くにあるのですが、ケバップも併せて売っています(どっちがメインかよくわかりません)。写真は、その店の値段表。

ケバップとは、トルコのファストフードで、薄く削いだ羊肉を野菜と一緒にパン(ピタパンを使う場合と、ピザ生地のようなパン[Fladenbrot]の場合とあります)に挟み、香辛料やヨーグルトソースをかけて食べるものです。下のホームページにもう少しはっきりと写っている写真があるのを見つけました。

http://www.realiser.org/020816.htm

この食べ物、トルコ人がドイツやスイスにたくさん住んでいるのに応じて店も多く、チューリヒの旧市街、ニーダードルフ通りを歩けば、5分のうちに4つも5つものケバップ屋にお目にかかるという「大流行」です。ドイツでは値段も安いらしいのですが、スイスでは1つが7フランから8フラン50くらいします(630円から760円くらいってとこですか)。ドイツに詳しい人なら「うわ、高い!」と思うでしょうが、スイスではこれでも安くて手軽な食べ物ということで人気があるのです。肉は、羊ばかりではなく、最近は牛肉や鶏肉のものもあります。一緒に挟む野菜はチョイスが効くし、香辛料の分量もそのつど尋ねてくれますからお好み次第です。店をやっているのはたいていトルコ人(かどうか怪しい場合もありますが)。

値段表の店は、Pizza Paradiso Kebap Kurier という店で(やっぱりピザがメインか?)、月曜から土曜の10時開店、24時閉店。日曜日も11時から23時まで営業という、スイスにあっては感心な営業姿勢です。もっとも、そのくらい無理して働かないと食っていけないのだと解釈すべきかもしれません(旅行でチューリヒに来られる人のために:ニーダードルフ通りに行けば、日曜営業のケバップ屋はいくらでも見つかります)。この店、ピザやケバップのスタンプカードを用意していて、どちらも10回目はタダになります。(スタンプカードという代物も、今回スイスで目につく新現象の一つです)。それから、50フラン以上注文すると、ワインを1本タダでくれるとのことですが、どんなワインをくれるのかはわかりません。

妻と2人で、ピタパンのケバップとピザ状の生地のものとを1つずつ注文し、家に持って帰ってお昼に食べましたが、ボリューム十二分で、夕食時になってもお腹が減らないくらいでした。

土曜に行ったシュタイン・アム・ラインの町でもケバップ屋を見かけましたから、相当普及しているようです。日本でもケバップがぜひ広まってほしい。日本でときどき無性に食べたくなります。



霧のち晴れのライン川

2004年10月24日 06時13分26秒 | Weblog
このところ、暗くて寒い、天気の悪い日が続いていたのですが、今週の金・土・日曜日は、珍しいことに晴天で気温も20度を越すとのこと。お出かけしない手はないということになり、チューリヒから右斜め上に上がっていったところ、ボーデン湖のすぐ近く、ライン川のほとりの小さな町、シュタイン・アム・ライン (Stein am Rhein) に遠足に出かけました。

金曜日に続き、土曜日も朝から快晴。11時前の近郊電車 (S-Bahn) に乗り、途中ヴィンタートゥール (Winterthur) で乗り換えて、1時間少しでシュタイン・アム・ラインに到着。ところが、ヴィンタートゥールで乗り換えた電車の中から景色を見ていると、見る見る間に白い煙、いや霧が。あたり一面は真っ白。ほとんど何も見えない状態です。

この状態はシュタイン・アム・ラインに着いてもあまり変わらず、見通しはいいものの、霧に包まれて肌寒くさえ感じる有様。快晴で暖かい、気持ちいい!というので出かけてきたのに。

とりあえず腹ごしらえをしながら霧の晴れるのを待つことに。旧市街の中のレストラン「アドラー」に入り、魚料理を頼みました。僕が頼んだのは、Rheinaesche という、聞いたことのない魚のバター焼き。マスのような魚でしたが、ライン川で取れる名物のようです。

これと白の Sauser がよく合いました。1匹まるまる食べれば腹一杯です。半身ずつ皿に取ってくれて、骨もとってくれるという親切さでした。

食事をしている間に、期待通り霧も晴れてきて、暖かい最高の天気に。19世紀の生活様式を保存して展示してくれている「リントヴルム博物館」や、ザンクト・ゲオルゲン修道院を見学した後は、川岸のベンチに腰掛けてひと休み。子どもたちは川に向かって石投げに興じていました。それが結構楽しかったそうです。ゆったりとした流れのライン川を見ていると気持ちもゆったりとしてきます。流れの速いベルンのアーレ川や、橋の上をトラムや自動車がせわしなく行き来するチューリヒのリマト川にはない落ち着きをここのライン川は感じさせてくれます(写真)。

シュタイン・アム・ラインでは、遊覧船にも乗れるのですが、あいにくと9月までで終り。10月はもはや季節外れで、閉めているホテルやレストランもあるくらいです。しかし、珍しい晴天、上着が要らないほどの暖かい土曜日とあって、我々のような観光客で町は賑わっていました。国境が近いこともあってドイツからの路線バスも来ており、町ではユーロ(ドイツ語ではオイロと言っていますが)も通用します。

スーパーに行って、土地のワインを赤白1本ずつ買い、旧市街にテーブルを出しているレストランで夕方もう一度 Sauser を飲んだ後、チューリヒに戻ってきました。明日日曜日もいい天気だそうです。

チューリヒの新聞

2004年10月22日 04時53分09秒 | Weblog
20 Minuten(20分)という新聞があることは以前に何度か触れました。この新聞、駅のプラットホームやトラム・バスの中、街角にボックスがあって、そこから自由に取れるようになっています。つまりタダ。トラムやS-Bahn(近郊電車)の中でこの新聞を読んでいる人を実によく見かけます。

この新聞、小さなサイズで(写真)、記事もそれぞれが短く、まさに20分で全体を読み流せるような感じになっています。下世話な記事も多く、前に書いたようにまさに『夕刊フジ』っぽい雰囲気です。

同種の新聞には Blick というものがありますが、こちらは有料(ってか、つまり買うわけです)。20 Minuten が自己宣伝的に載せていた記事によれば、スイスで今一番読まれているのは 20 Minuten だそうです。まぁタダですから、それはそうなんでしょう。でもいったい、タダで取ることができて、電車の中で読み捨てられる新聞の読者数をどうやって計算しているのか。ボックスから取られた数ってことでしょうか。

「普通の」新聞としては、チューリヒには Tages-Anzeiger と Neue Zuercher Zeitung (NZZ) の2紙があります。どう違うのか、読み比べたことがないので、細かいことはわかりませんが、雰囲気から察するに、Tages-Anzeiger の方が一般向けで、NZZ はちょっと硬い、というところでしょうか。購読数は Tages-Anzeiger の方が多いそうで、実際、NZZ を電車などの中で読んでいる人にはあまりお目にかかりません。

どちらの新聞にも言えることで、これはスイスの新聞全体に当てはまることと思いますが、第一に、それぞれの記事が長い。日本の新聞との顕著な違いはこれです。頁全体(サイズは日本のものよりひと回り小さい)を使った記事も珍しくありません。スイスの記事、海外記事それぞれに長いものがいくつも並び、スポーツにも何頁も費やすし、天気予報だけで1頁を使っています。

それに応じて全体の頁数も、日本の新聞よりだんぜん多くなっています。今日の Tages-Anzeiger は60頁。ドイツ語が達者でない自分にはとても全部読みきれない分量です。もっとも、不動産や自動車の広告だとか、スーパーの安売り広告だとかも多いので、記事の頁はそんなに多くないわけですが。アパートなどの賃貸情報もたくさん載っています。

20 Minuten の影響も手伝ってか、新聞を自宅で購読する人の割合はあまり高くないように見受けられます。そもそも、新聞はキオスクなどで買う人が多いので、新聞社は、部数安定のため購読のキャンペーンをしばしば張っています。それぞれの新聞のホームページを見ると、購読の案内が載っていて、Tages-Anzeiger の場合、半年で176フラン(16000円くらい)、1年契約だと320フラン(29000円くらい)です。最初の半年は、Kennnenlernen-Abo(お試し契約)もあって、これだと100フラン(9000円くらい)。NZZ は、最初の5週間はタダというサービスもしています。通常の契約なら、日本の新聞といい勝負かなと思いますが(ただし夕刊はない。とはいえ、この厚みなら夕刊はあっても読む気にならないでしょう)、日本の新聞みたいな「おまけ」の習慣はまるでないみたいです。毎週1回、週間テレビガイドみたいな冊子がついてきたり、特別な読み物がついていたりということはありますが、テレビをあまり見ないので、ありがたいという感じもそれほどしません。

こういった新聞は、日曜日は休刊です。その代りというか、日曜日には日曜日専用の新聞が発行されています。SonntagsZeitung や NZZ am Sonntag がそれです。これらは、市内のトラム停留所などに自動販売機があって(キオスクなどが休みだからでしょう)そこで買えるようになっています。買物もあまりできず、テレビも面白くない日曜の昼間、コーヒーでも飲みながらこの新聞を読んで過ごすのかもしれません。

追記:スイスは、九州ほどの大きさしかない国ですが、全国紙というものがほとんどないようです。上に書いた 20 Minuten や Blick、それから SonntagsZeitung はどこでも売っているみたいですが(ベルンでも売っていたので)、「普通の」新聞は地方紙になっていて、チューリヒは上記の2紙、ベルンには Berner Zeitung と Der Bund があります。バーゼルはどうだったか……。Basler Zeitung があることは知っているのですが。これだけ地方分権の強い国だから、新聞が地方ごとに分かれているのも当然でしょう。

女性運転手、女性牧師

2004年10月21日 04時27分56秒 | Weblog
チューリヒでトラムやバスに乗っていると、女性の運転手が多いことに気づきます。

いちいち運転手が女性か男性かを確認しているわけではありませんが、次の停留所を告げる声でわかるわけです。

考えてみれば、男でないと出来ない仕事では決してないので、不思議に思う必要もないのかもしれませんが、日本で「運転手」と言うとやはり男性を思い浮かべるだけに、チューリヒの女性運転手の多さは印象的です。統計を見つけられなかったのですが、チューリヒ交通局に勤めている女性の割合は約15%とありました。感覚としては、4人から5人に1人くらいが女性運転手という感じです。

日本では(阪急電車や阪神電車、JR西日本の阪神間、および阪急バスを見た限りですが)、女性の運転手がほとんどいないように思いますが、男性に限って採用しているのでしょうか? 最近、女性のタクシー運転手はよく見るようになりましたが、バスや電車ではほとんどお目にかかりません。

女性の多さが印象的なのは、教会の牧師さんもそうで、実際に見に行ったわけではないけど、教会や教区のホームページを見ると、女性の名前がたくさん出てきます。

神学部に行けば、女子学生がたくさんいるのだから、卒業生にも女性が多いのは理の当然でしょう。博士候補生や助手にも女性が多いし、教授にだって女性は(割合から言うと少ないけど)日本よりもたくさんいます。

とはいえ、女性が牧師として受け入れられるまでの道のりは決して平坦ではなかったようです。グロスミュンスターで行なわれているブリンガー展に行った話を前に書きましたが、そこには、現在のチューリヒの教会についての展示もあり、見ていると、最初にチューリヒで女性が牧師資格を取ったのは1918年になってからのことだったそうです。ローサ・グートクネヒト(写真上)とエリーゼ・プフィスター(下)の二人がそうですが、二人は最初、牧師代行としてしか受け入れたもらえなかったとのこと。女性が正式な牧師として認められるようになったのは、なんと1963年の話だそうで、少なからず驚きました。それくらい、牧師というのは「男仕事」と見なされていたわけです。

関西学院大学の神学部にも女子学生はたくさんいますが、日本の牧師に女性が占める割合もまた低いのではないかと思います(手元に統計がないので、確かなことはわかりかねますが)。女性の神学者となるとこれまた少ない。

バスの運転手も牧師・神学者も、もっと女性が増えていいはずです。

8時からの授業

2004年10月20日 03時30分34秒 | Weblog
「冬」学期になっているというのに、世間はいまだに「夏」時間。10月の最終日曜までこの夏時間は続きます。

近頃、朝起きたら真っ暗。夜が明けてくるのはようやく7時半ごろです。暗い中で朝ごはんを食べるこの異様な雰囲気には、ようやく慣れたとはいえ、やはり、一日頑張ろうというモチベーションに欠ける気がします。

それにしても、スイス人の早起きにはいつも驚かされます。6時半に起きて、窓の外を見ると、あちらこちらの家に明かりがついており、通りにはすでに出勤している人が。バスの時刻表を見ると、6時台が一番本数が多いのです。店が7時や7時半に開くなんてことも珍しくありません(パン屋さんだけではない)。

知り合いの娘さんが通っている小学校は、朝7時20分から授業が始まるそうです。授業開始時はまだ暗いはず。ということは、子どもたちは暗い中を登校しているわけです。スイスならありそうな話ですが、そんな学校に子どもが通っていたら、と考えるとちょっと怖い。親はいったい何時に起床せねばならないのか?

大学には、さすがにそんな早く始まる授業はないようです。かつては、朝7時から講義を始める教授がいたそうですが、今は、一番早くて8時。大学の講義は15分遅れて始まるのが通例なので、実際には8時15分始まりということになります。

それでも、8時15分始まりは早い。ベルンに留学した最初の学期(1991年冬学期)、8時15分始まりの授業に出席してみたことがあったのですが、当時住んでいた学生寮を7時半ごろに出て行くのがつらくて(だって暗いし、霧は出ているし、とても寒い)、次の学期からは、朝早い授業には出ないことにしたのを思い出します。(博士候補生だったため、授業に出る義務はそもそもなかったので助かりました。ドイツ語の練習がてら自主的に出ていたわけです。)

日本にいるときは、8時過ぎに大学に来ているので、早いこと自体は平気なはずなのですが、やはり暗さが意欲を失わせるのでしょう。

チューリヒ大学神学部の講義要綱を見ていると、8時(15分)始まりの授業が少ないような気がしましたが、以前からそうだったのかどうかはわかりません。やっぱり教授も、朝早いのはご免なのかも。気のせいか、夕方4時から6時というような授業がよく目についたような。午前の授業は、10時(15分)始まりが多いようです。