『アメリカ現代神学の航海図』(栗林輝夫セレクション2)
(大宮有博、西原廉太編、新教出版社、2018年12月、4900円+税)
昨年12月は、新しい聖書翻訳「聖書協会共同訳」が出たこともあり、訳文などの検証作業に追われて年末年始が過ぎていきました。やっと先日この本を手に取ったのですが、ぱらぱらと目を通すだけでもう魅力が溢れてきます。残念ながら2015年に亡くなった栗林輝夫氏の著作選集、その第1巻『日本で神学する』は一昨年5月に出され、この欄でも紹介しました(2017年9月号)。
第1巻は、「解放の神学」や「環境と技術の神学」といったキーワードを手がかりに、日本で神学するための課題を浮き彫りにしていますが、この第2巻は、その神学を展開していく方法を、アメリカ現代神学と向き合いながら示していこうとする、まさしく「航海図」となる1冊です。フェミニスト神学とウーマニスト神学(第1章)、北米アジア神学(とアジア系アメリカ神学、第2章)、ポストモダン神学(第3章)、ポストリベラル神学(第4章)、修正神学(第5章)、そしてプロセス神学(第6章)と、著者はアメリカの現代神学に広く目配りして、そこから何を批判的に吸収し、再構築して日本で神学する肥やしにできるかを丁寧に探っています。
巻末には、著者の「弟子」である大宮有博氏が、栗林氏がアメリカ現代神学の総説を目指した背景、そして各論文の簡単な解説を記してくれていて、この本の「航海図」となっています。まずここから目を通すと、それぞれの論文が持つ意義がよくわかると思います。
「セレクション」の2冊は、日本で神学するための「視座」と「方法」を提示しているペアだと言えるでしょう。「神学」することの意味、その必要性を教えてくれる貴重なこの著作選集、日本で「神学」を語る人間は――著者の考えに賛成であれ反対であれ――必ず読んで対話すべき書物です。栗林に触れない日本の神学書はまやかしだと言ってもいいくらいだと思います。
(「広島聖文舎便り」2019年2月号掲載の拙稿です)