チューリヒ、そして広島

スイス・チューリヒに住んで(た時)の雑感と帰国後のスイス関連話題。2007年4月からは広島移住。タイトルも変えました。

お通夜初体験

2010年10月29日 21時28分58秒 | Weblog
いつも親切にして下さっている近所のご家族のお爺さんがお亡くなりになったので、お通夜へ行くことに。広島での葬儀初体験でした。

西宮で言えば山手会館のような葬儀場でのお通夜。香典を持って出かけてみると、色々新鮮な事柄に出くわしました。

まずは、喪主さんが入口を入ったところでお出迎え。そこで丁重にお悔やみの挨拶をします。そして受付へ。ここがびっくりでした。

参列者用のカードに名前や住所などを記入します。それは珍しくないのですが、なんとカードの記入欄に、香典の額を書く欄があるのです。これは初めて見ました.なんとなく気恥ずかしいではありませんか。

そして香典袋を渡すと、受付のお兄さん、「改めさせていただきます」と言うが早いか、なんとその場で袋を開け始めたのです。そんなこととは思わず、香典袋にしっかり糊付してきたので、袋はびりびり。お兄さん、とてもバツが悪そうにしながら、それでもびりびりと袋を裂いて行きます。もしかして、袋に糊付しないのが礼儀だった?

中身を確認して、記入した金額と照合。それからやっと式場内に入れました。

葬儀は浄土真宗のお坊さんによって執り行われました。広島では真宗が多いとか。お経は、これまで聞いたことのないような独特の節回しをつけて読まれます。ふと気がつくと、周りで声を合わせて読経、いや暗唱?している人がちらほら。ステレオ効果でお経が聞こえてきました。

最初の読経の後、早くも焼香が始まります。焼香は、どうやら1回式(と言うのでしょうか)。焼香が終わって、遺族に挨拶して帰る、といういつものパターンかと思ったら、焼香後のご遺族への挨拶はありましたが、また元の席へ戻るのです。焼香が済むと、お坊さんの説話(と言うのか?)が始まりました。牧師さんの葬儀説教みたいなものですが、しかし故人についての話は冒頭の数分だけで、後は親鸞上人に関するお話。こういうことを仏式葬儀でもやるのは、キリスト教式の葬儀説教の影響でしょうか。

お話の後は再び読経。導師様ご退場の後、解散。再度ご遺族に挨拶してから帰ります。広島へ来てから3年半。今の家に越してきてちょうど3年ですが、ずっと親しくお付き合い下さったお爺さんが亡くなったのは何とも寂しい限りです。ご遺族の平安を祈りたいと思います。

【宣伝】翻訳書出しました

2010年10月16日 16時00分11秒 | Weblog
このたび、日本キリスト教団出版局から翻訳書を出しました。

W.マルクスセン『福音書記者マルコ:編集史的考察』

「聖書学古典叢書」の第1弾として出版されたこの本は、副題にもあるように、新約聖書の福音書研究における「編集史的」分析方法の先駆けとなった一冊です。イエスに関する福音書の記述は、口頭で伝えられた断片伝承を寄せ集めて「編集」したものですが、その編集の仕方には福音書を書いた著者の思想や経験が反映しているというのがこの分析方法の基本的な考え方です。

伝えられた伝承そのもの(はイエス自身の史実に遡る可能性が高いわけですが)よりも、その伝承に著者が施した枠付けや改変に注目し、そこから著者の思想を読み取ろうとするこの研究は、ハンス・コンツェルマン『時の中心:ルカ神学の研究』(1954年。邦訳1965年、新教出版社)によってルカ福音書に適用されて始まりましたが、この方法に「編集史」(Redaktiosgeschichte) と命名したのは、この本の著者ヴィリ・マルクスセンでした。それ以来、この名前は方法自体と共に広く受け入れられ、聖書研究の基本的考え方となりました。

初版が出たのが1956年。翻訳は1959年の第2版に基づいています。初版が出てからもうすぐ55年。これを古いと見るか、新しいと見るかは意見の分かれるところかもしれません。同じ「聖書学古典叢書」収録予定の他の本は、みな1900年代前半に出たものばかりですから、その中では「新参者」ではあります。が、20世紀後半に発展した聖書学の歴史を考えると、まさにその出版点にある古典的1冊なことは間違いありません。

新約聖書研究ではもう当たり前過ぎる方法なので、今さら「編集史」と銘打つ研究もあまり見ませんが、旧約聖書研究では今でもバリバリの現役で、「編集史的研究」と名の付く学位論文がドイツでは21世紀に入っても出されています。この方法が元来は旧約聖書研究から取り入れられたことを考えると(フォン・ラートやノートの研究はその先駆けです)、不思議な気もします。

原書はもうドイツでは絶版になっているようです。そんな本が今頃日本で新刊書として出て来たわけですが、聖書の研究をやるなら編集史の考え方は必ず通る道ですから、基礎文献にさっと目を通すことができるという意味で存在価値はあるかと思います。

税込み3990円。4000円でちょっとだけお釣りが来ます。聖書研究に携わる(予定の)方、聖書解釈に関心のある方、よろしくお願いいたします。