かねてよりあちらこちらで宣伝していた共著『ここが変わった!「聖書協会共同訳」』、ついに3月25日発売。私もようやく現物を手にすることができました。内容紹介は次の通りです(発売日が1日ずれました)。
本の中で取り上げたのは31項目。各項目は、長いものでも4頁、短いものだと2頁程度にまとめられています。目次を改めて眺めてみると、単に「聖書協会共同訳」の新しい点を紹介しているというよりも、聖書翻訳にまつわる様々な問題を取り上げて論じた本になっているように思えます。
たとえば、「③「蝮」ではダメなわけ」では、クサリヘビ科の蛇を「蝮」(まむし)と訳して疑わないことの背後に、日本における少数民族を顧みない心性が見て取れること(沖縄に蝮は自然に存在しない)が指摘されています。「④「その血は、我々と我々の子らの上にかかってもいい」は、ユダヤ人迫害の理由づけにさえも使われてきたこの言葉の誤訳が今回正されたことを明らかにします。また、「⑤「規定の病」?」は、ヘブライ語のツァラアトとギリシア語のレプラがハンセン病と結びつけられ、差別を強化することになった次第を省みると共に、「政治的に正しい」訳語が本当に正当なのかという問いも発しています。
「⑧「五千人」は人か男か」や「⑳「使徒たちの中で目立って」いる「ユニア」(女性)」、また「㉒「兄弟たち」か「きょうだいたち」か」は、聖書本文とその翻訳が生み出す性差別の問題に関わっていますし、「㉚「異なる肉の欲」」は、この表現が同性愛への非難だと誤って理解されてきた経緯を批判的に取り上げる項目です。
より「神学的」な項目もあります。「⑬「永遠の命」に関して」や「⑰イエスは「贖いの座」」、「⑲キリストの神性」、「㉖私たちが義とされる要件」、「㉗イエス・キリスト=神?」、「㉙神による罪の贖いか、神の怒りの宥めか」などがそれに当たるでしょう。
6人で手分けして項目を書きましたが、相互に原稿を交換し、批判し合いながら文章をまとめていきましたので、全体としての統一はかなり取れていると自負しています。上で述べたように、それぞれの項目は簡潔で、専門家でなくても十分理解できるように書いたつもりです。新しい聖書の訳語をめぐる意見が、読者からも出て来ることを期待しつつ、この本を私たちは上梓しました。
浅野淳博・伊東寿泰・須藤伊知郎・辻 学・中野実・廣石望著
『ここが変わった!「聖書協会共同訳」新約編』
日本キリスト教団出版局、2021年3月25日
四六判 128頁
ISBN 9784818410787
定価1200円+税
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