生まれ育ったのは東京の阿佐ヶ谷と言う町だった。
高校時代は夏休みになると、午前中から自転車で、二駅離れた中野の「武蔵野推理」という名画座に、
だいたい11時頃から始まる、二本立てや、三本立ての映画を観に行った。
当時300円、三本見終わって、外に出ると夕方だった。
まだ「ぴあ」が出たか出ないかの頃で、「シティロード」と言う情報誌で、映画の情報を得ていた。
目的の映画よりも、同時上映の作品の方が、心に残ることがあり、それが多本立ての醍醐味でもあった。
「名探偵登場」
デビット・ニーブンやピーター・フォーク、ピーター・セラーズ、「ハリーポッター」シリーズでも活躍したマギー・スミス。
(名優アレック・ギネスは、この映画で僕は好きになったなあ)
とにかくそうそうたる俳優が出演していたから、行かねば!と観に行った。
オープニングのアニメーションが楽しかったし、今でもいくつものシーンを覚えている。
だけど、
同時上映されていた、ローレンス・オリビエとマイケル・ケインの「スルース(探偵)」を観て、
「名探偵登場」は霞んでしまった。
知的好奇心をくすぐる小道具の数々、サーの称号を持つ名優ローレンス・オリビエに、
対等に渡り合う、若きマイケル・ケイン、二人の演技での戦い。
結末の驚きは、高校生だった僕には感動で、しばらく席を立てなかった。
数年前、ローレンス・オリビエの役をマイケル・ケインが、マイケル・ケインの役を
ジュード・ロウが演じてリメイクされたが、これは観ていない。
名画座は、だいたい一週間のスパンで上映作品が変わってゆく。
夏休みには、好きな作品は週に二度も三度も観に行った。
「ペーパームーン」「ダウンタウン物語」「赤い靴」「パリのアメリカ人」・・・
時には一日に二回見た作品もある。
二本立てだと一本別な映画を挟んで・・・ 三本立てだと・・・