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ハッとして!BAD

2005年12月31日 23時59分00秒 | 社会・経済
「ヒヤリハット(ハットヒヤリ)事例」という言葉がある。事故が発生しそうな業種で用いられる言葉だ。例えば鉄道や航空などの運輸業、建設業、工場、発電所など。
勤務していて「冷やり」としたり「ハッと」した事例のことで、安全管理責任者などが調査を行い、統計・分析して事故防止に役立てる事を目的とする。ひとつの事故が発生する陰には、数十倍の「ヒヤリハット事例」が起きているとも言われる。

この「ヒヤリハット事例」の聞き取りに当たって、絶対に守らなくてはならない大原則がある。それは「この調査が、処分目的の調査ではない」ということだ。
例えば「残業中にビールを飲んで作業していたら、ケガしそうになった」とか「工場裏で喫煙していた煙草の火の不始末で、小火を起こした」とかいう報告が有ったとする。勤務中に飲酒したり、小火を起こしたなどは、処分に値する行為だ。しかし決して処分してはならない。なぜならば報告が処分に繋がれば、以降だれも報告しなくなるからだ。「ヒヤリハット事例の報告」の目的は大事故の芽を摘むことである。

アメリカで航空機事故などが発生した時に組織される事故調査委員会はFBIや州警察とは完全に独立しており、たとえ事故責任者から刑事罰に繋がる聴取を行っても、それを警察に報告することはないと聞いた。だから事故責任者は自分の違法行為も隠さずに話し、事故の原因究明に役立つとか。

福知山線事故のマスコミ報道で、一番疑問を持ったのは「運転士叩き」が行われたことだった。「同運転士は過去にオーバーランを起こして日勤教育を受けており、この日もオーバーランで列車に遅れを生じさせたために、それを取り戻そうとスピード超過で運転していた」という物だったと記憶している。マスコミに取って幸運だったのは、該当運転士が死亡していた事だろう(乱暴な表現ですが、これはマスコミに向けての物。亡くなった全ての方には哀悼の意を表します)。
あの時のマスコミ報道が決して真相究明ではなく、逆に真実が隠れてしまう危惧のある物だった事がご理解頂けるかと思う。もしも運転士が存命ならば、バッシング報道に恐れをなして不利な事実を話さなくなった――という展開が考えられる。
何か事件が起きる度に義憤に燃えて怒鳴り散らしているみのもんたが決してキャスターではなく、「世の不満をぼやいてるブログ親父レベル」と再三再四言っているのは、こういう理由からである。

もちろん事故犠牲者の遺族や負傷者の怒り、苦痛、哀しみは痛いほどに解る。いや「部外者」が「解る」などと言ってはならない程の物だろう。
しかし、それはマスコミの仕事ではない。マスコミの仕事は「事実の報道」だ。「処罰」は司法の仕事、「怒る」のは国民の役目だ。分を弁えないマスコミは、オジャマモンのマスゴミでしかない。