今はどうか知りませんが、私が子供だった頃の歴史の教科書の明治維新のところに「武士の商法」というイラストが載っていたのが強く印象に残っています。時代が変わった事に気付かずに、江戸時代のプライドを捨てられずにふんぞり返って商売をしている士族を風刺した漫画です。
30年くらい前、テレビ業界で、ちょうど同じ様にからかわれていた人種がいました。映画産業が斜陽化したため、テレビに仕事を移した人々です。「ディレクターと呼ばれたら返事もせず、監督という呼称に執着する演出家」とか「必ず『ここは本編(※映画のこと)ではこうやる』と頑なに映画の技法を曲げない技術スタッフ」などです(笑)。テレビマンにとって、彼らの姿勢は、まさしく時代を認識できない「武士の商法」のように映っていました。
ファミコンブームが起こり、子供たちがテレビゲームに熱中していた時代、製作会議で「ゴールデンの視聴率トップはCX、全日は日テレ……」などと喧々囂々の議論がなされている中、ある外部スタッフがポツリともらした言葉。「でも、今週、日本のテレビに一番映ってたのは、『ひょうきん族』でも『元気が出るテレビ』でもなく『ドラゴンクエスト』だったんじゃないか?」参加者全員が面白いジョークとして笑っていたそうです(笑)。
さて、現代に話は飛びます。多くのテレビマンは未だにテレビが情報産業のトップに君臨して、その立場は揺るがないという認識でいるとしか思えません。彼らにとってインターネットなどは「海の物とも山の物とも解らないゲテモノ」でしかありません。テレビとネット(IT)との様々な軋轢が生じる度に、テレビ側から出て来る見解にはそういう意識が見え隠れしています。あるいは楽天やライブドアなどの企業は、彼らにとっては普段顎で社員を使っている製作会社程度の三流企業くらいにしか思っていない感じです。
ある試算によると、TBSと楽天で持株会社を設立した場合、比率は楽天2:1TBSになるそうな。
経済的な立場において、すでにテレビ局というのは、かつて彼らが馬鹿にしていた斜陽映画産業に片足を踏み入れていると言っても、あながち間違いではない気がします。そして、その認識を持たず、プライドだけで「武士の商法」を続けていけば、情報発信者の立場においても、取り残された存在になってしまう危険性はもう十分過ぎるほど現れています。
奢れる者は久しからず……。
【おまけ】本社移転と視聴率
ちょうどバブルの頃、在京キー局は揃って手狭になった都心の一等地を売却して広い土地へ移転する計画を立てました。真っ先に着手したのがTBSで緑山にスタジオを建設。「風雲たけし城」なんてだだっ広い敷地で収録する番組を製りました。ところが、この緑山スタジオは出演者から大不評。「遠すぎる」、「(他局と)掛け持ちしにくい」。で結局、貸しスタジオになって、TBS本社はまた高い赤坂に建設。なんかグリーンピアとかかんぽの宿みたいです。
六本木人になったANB。こちらも本社移転はかなり迷走しました。古くなった社屋を建て替える代わりに、あの地区を再開発する森ビルとの等価交換で先にできていた六本木アークヒルズに移転。しかし、これも評判が悪かった。元の立地よりも交通の便が悪くなったうえに全部地下。テレ朝はモグラの巣という悪評が。でもって、結局はアークヒルズを引き払い、元の六本木放送センターの場所に新本社建設。これが現在の六本木ヒルズのANBです。なんかアークヒルズは現在の新本社建設のための仮住まいだったような事を言ってるようですが、当時のANB社員は「アークの新本社に移転」とハッキリ言ってましたが。
これに対して、すっきり本社を移転できたのが日テレ(麹町→汐留)とCX(河田町→お台場)ですね。お台場は遠いという不評はかなり聞きますが、それでもTBSやANBに比較すれば成功したと言えるでしょう。
巨人戦の視聴率低迷でかなり荒れましたが、それでも視聴率競争の勝者グループ(日テレ・CX)と敗者グループ(TBS・ANB)が、本社移転でも同じく色分けされているのは興味深い感じがします。
もちろん偶然かもしれませんが、あるいは時流や情勢を見る能力が無い上層部は、数字が取れる番組の企画書も見極められないと言えるかもしれません(笑)。
30年くらい前、テレビ業界で、ちょうど同じ様にからかわれていた人種がいました。映画産業が斜陽化したため、テレビに仕事を移した人々です。「ディレクターと呼ばれたら返事もせず、監督という呼称に執着する演出家」とか「必ず『ここは本編(※映画のこと)ではこうやる』と頑なに映画の技法を曲げない技術スタッフ」などです(笑)。テレビマンにとって、彼らの姿勢は、まさしく時代を認識できない「武士の商法」のように映っていました。
ファミコンブームが起こり、子供たちがテレビゲームに熱中していた時代、製作会議で「ゴールデンの視聴率トップはCX、全日は日テレ……」などと喧々囂々の議論がなされている中、ある外部スタッフがポツリともらした言葉。「でも、今週、日本のテレビに一番映ってたのは、『ひょうきん族』でも『元気が出るテレビ』でもなく『ドラゴンクエスト』だったんじゃないか?」参加者全員が面白いジョークとして笑っていたそうです(笑)。
さて、現代に話は飛びます。多くのテレビマンは未だにテレビが情報産業のトップに君臨して、その立場は揺るがないという認識でいるとしか思えません。彼らにとってインターネットなどは「海の物とも山の物とも解らないゲテモノ」でしかありません。テレビとネット(IT)との様々な軋轢が生じる度に、テレビ側から出て来る見解にはそういう意識が見え隠れしています。あるいは楽天やライブドアなどの企業は、彼らにとっては普段顎で社員を使っている製作会社程度の三流企業くらいにしか思っていない感じです。
ある試算によると、TBSと楽天で持株会社を設立した場合、比率は楽天2:1TBSになるそうな。
経済的な立場において、すでにテレビ局というのは、かつて彼らが馬鹿にしていた斜陽映画産業に片足を踏み入れていると言っても、あながち間違いではない気がします。そして、その認識を持たず、プライドだけで「武士の商法」を続けていけば、情報発信者の立場においても、取り残された存在になってしまう危険性はもう十分過ぎるほど現れています。
奢れる者は久しからず……。
【おまけ】本社移転と視聴率
ちょうどバブルの頃、在京キー局は揃って手狭になった都心の一等地を売却して広い土地へ移転する計画を立てました。真っ先に着手したのがTBSで緑山にスタジオを建設。「風雲たけし城」なんてだだっ広い敷地で収録する番組を製りました。ところが、この緑山スタジオは出演者から大不評。「遠すぎる」、「(他局と)掛け持ちしにくい」。で結局、貸しスタジオになって、TBS本社はまた高い赤坂に建設。なんかグリーンピアとかかんぽの宿みたいです。
六本木人になったANB。こちらも本社移転はかなり迷走しました。古くなった社屋を建て替える代わりに、あの地区を再開発する森ビルとの等価交換で先にできていた六本木アークヒルズに移転。しかし、これも評判が悪かった。元の立地よりも交通の便が悪くなったうえに全部地下。テレ朝はモグラの巣という悪評が。でもって、結局はアークヒルズを引き払い、元の六本木放送センターの場所に新本社建設。これが現在の六本木ヒルズのANBです。なんかアークヒルズは現在の新本社建設のための仮住まいだったような事を言ってるようですが、当時のANB社員は「アークの新本社に移転」とハッキリ言ってましたが。
これに対して、すっきり本社を移転できたのが日テレ(麹町→汐留)とCX(河田町→お台場)ですね。お台場は遠いという不評はかなり聞きますが、それでもTBSやANBに比較すれば成功したと言えるでしょう。
巨人戦の視聴率低迷でかなり荒れましたが、それでも視聴率競争の勝者グループ(日テレ・CX)と敗者グループ(TBS・ANB)が、本社移転でも同じく色分けされているのは興味深い感じがします。
もちろん偶然かもしれませんが、あるいは時流や情勢を見る能力が無い上層部は、数字が取れる番組の企画書も見極められないと言えるかもしれません(笑)。