西向きのバルコニーから

私立カームラ博物館付属芸能芸術家研究所の日誌

スナフキン

2007年05月22日 21時58分00秒 | Weblog
 彼の鼾(いびき)は、朝昼夜、時間を問わず聞こえてくる。

 彼は、どうやら一人暮らしのようである。

 彼の部屋の前には、時々マウンテンバイクが停めてある。私は、彼がその自転車で疾走している姿を、少なくとも二度見たことがある。

 深夜のスーパーで、買い物をしている彼の姿を見かけたこともある。その時はハンチング帽を被っていたので、一瞬別人にも見えたが、その帽子の下に隠れた薄い頭髪を、私はしっかりと憶えていた。
 我が新居の真下に住む彼に引越しの挨拶に行った際、彼はその髪の薄い頭を下げて、私にひと言、上品そうな声でこう言った。「それはどうもご丁寧に」。第一印象は、初老の紳士といった印象であった。

 私は、彼の部屋から時折聞こえてくるギターの音色が好きだ。妻が彼のことを「スナフキン」と呼び始めたのも、恐らく彼が弾いているのであろうそのギターの音を聞いた時からだ。



 いやいや……、他人の詮索は、あまり感心できないのであるが……。