日米ガイドラインの見直しや安保法制整備の要因の一つに東シナ海情勢があり、
その原因にはアメリカが尖閣領有権が日本にあるとは認めないという事実がある。
これがいかに決定的か、日本人はもっと認識すべきだ。
◆オバマ大統領が習近平国家主席を前に叫んだ言葉――米議会調査局報告書
2013年6月、オバマ大統領と習近平国家主席は
カリフォルニアのアネンバーグ邸で二人だけの会談を行ったあと、
共同記者会見を開いた。その席でオバマ大統領は
「尖閣諸島の領有権に関して、
アメリカは(領有権紛争者の)どちらの側にも立たない」と、
大きな声で宣言した。その姿勢はニクソン政権以来変わってないと、
アメリカは何度も言っている。
―中略ー
アメリカ政府は、少なくともニクソン政権までさかのぼって、
アメリカ合衆国は領有権紛争のどちらの側にも立たないと宣言してきた。
である。つまり、オバマ政権にいたるもなお、
ニクソン政権が沖縄返還に際して
「返還するのは沖縄の施政権だけであって、
アメリカは尖閣諸島の領有権とはいかなる関係もない」
と宣言したアメリカの立場を引き継いでいるということだ。
なぜならサンフランシスコ平和条約で、
アメリカが日本から委任を受けたのは沖縄の施政権だけだったからだ、
というのがアメリカ側の理由。
しかし尖閣諸島に関して、1969年に国連のECAFE
(Economic Commission for Asia and the Far East。アジア極東経済委員会)が
尖閣諸島などの東シナ海に海底油田や天然ガスが眠っているようだと報告するまで、
誰一人関心を示したことはない。
ところがECAFE報告のあと、アメリカが中華人民共和国に接近し始め、
それまで中国の代表だった「中華民国」が
国連から追い出されそうになったのをきっかけに、
在米台湾留学生が台湾の領有権を主張し始めた。
留学生たちは「蒋介石が無能だから、このようなことになる」
として抗議デモを始めたのだ。
そのデモが全米に広がるのを見て、
ニクソン政権時代のキッシンジャー国務長官は、
ときのニクソン大統領やピーターソン大統領補佐官(国際経済担当)などと密談。
この密談内容がアメリカ公文書館の外交関係ドキュメント
Volume17のCHINA(1669-1972)に収められている。
トップシークレットだったが、機密扱いの期限が切れ公開された。
そのドキュメント113~115には、CRSリポートのサマリーに書いてある
ニクソン政権の宣言を導く秘密会談が詳細に書いてある。
これらのドキュメントを分析すれば、
アメリカが米中国交正常化をして中華人民共和国を
「中国の代表」として国連に加盟させるために、「中華民国」(台湾)に対して、
アメリカの立場を守るために、
苦しい自己弁護をしていることが手に取るようにわかる。
◆中国との決定的な対立を避ける――
尖閣領有権が日本にあるとは絶対に言わないアメリカ
中国は嬉しくてならないだろう。
米中国交正常化に際して「一つの中国」をアメリカに認めさせ、
中華民国が自国の領土と主張した尖閣諸島を
「台湾のものは中国(大陸)のもの」として、
領有権を堂々と主張していられるのだから。
日本ではCRSリポートのことなど、筆者がどんなに発信しても、
誰も関心を示さないが、中国はこのCRSリポートを宝物のように重要視している。
アメリカが「領有権に関しては、どちらの側にも立たない」と言っているということは、
すなわち「アメリカは尖閣諸島の領有権が日本にあるとは言っていない」
ということになると解釈して、堂々と中国の領有権を主張しているのである。
だからこそ「東シナ海情勢」が危ないのだ。
中国が強硬路線を通せる状況をアメリカは自分で作っておきながら、
東シナ海の厳しい情勢があるが故に
「日米ガイドラインの見直し」「安保法制の整備」
などの美辞麗句で日本を持ち上げているのである。
自分で原因を作っておきながら、
その現象があるので何とかしなくてはならないと日本を「励まして」いるわけだ。
◆日米、どちらも偽善者
安倍首相もオバマ大統領も、誇らしげに「強固な日米同盟」を繰り返し、
「未来の日米関係」に期待を抱かせている。
しかし、その背後に横たわっているのは、
アメリカの尖閣諸島領有権に対する立場だ。
もちろん、北朝鮮の問題や対テロ工作など、
さまざまな理由は挙げられるだろう。
それら、誰もが納得するであろう理由でカモフラージュしながら、
肝心の原因には、互いに目をつぶっている。
本当に強固な日米関係があるなら、真実を直視すべきだろう。
しかし、互いにしない。見て見ぬふりをしている。
そこに「真の信頼関係」があると、互いに断言できるのであろうか?
この厳然たる事実に目をつぶる日本もアメリカも、
偽善者としか言いようがない。
それ故にこそ、アメリカはついに、
日本をアメリカと対等な軍事的立場にまで持ち上げようとしているのである。
これが、安倍首相が言うところの「歴史の新しい1頁」の一つであることを、
どうか日本人は見逃さないようにしてほしい。
-遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
2015年4月29日 19時39分配信 -
極めて重要なリポートの存在が明らかになった。
またしてもアメリカの無責任な外交戦略が
国際紛争の火種を作ったことを
国家機密だったリポートの内容が示している。
戦後のアメリカ外交はいつもそうだ。
キューバ革命以前のアメリカの対キューバ政策も、
イランのパーレビ国王への肩入れが招いたイラン革命。
アフガニスタンのイスラム過激派の育成とその結果の末の動乱。
イラク戦争後の処理の失敗と、それが原因となったISISの台頭。
それらすべての混乱の種をまいた他に、
朝鮮戦争の教訓を生かさなかった
ベトナム戦争の泥沼化。
アメリカの政策が如何に身勝手で、無能で、近視眼的か、
歴史が示している。
東アジアの不安定化を増長させた原因がアメリカにあるにも関わらず、
その尻拭いを日本にさせようとする昨今の図式は、
その狡猾さに於いて、日露戦争前夜の欧米列強の
日本に対する武力行使のけしかけ行為に相通ずる。
図らずもその時も今日も、中国大陸が関係している。
日本は日本で、それらの狡猾さを逆手にとった
独自路線の開拓を推し進める口実に利用するわけで、
極めて危険な領域に踏み込む状況を
自ら突き進もうとしていると云える。
対中戦争が現実に目の前に近づいている。
南沙諸島を舞台にした日本の外交・防衛分野の行動は、
その端緒となるだろう。
アメリカは尖閣諸島も日米安保条約の防衛対象であると
日本のマスコミの前では言及してきたが、
全くもって信用できない。
沖縄の米軍基地の存在と、沖縄県民の過重な負担を思うと
虚しさが漂う感じがする。
アメリカ軍の日本国内での存在が、中国をけん制する意義は否定できない。
しかし紛争の原因を作り放置し、
今後の責任を日本に負わせる動きが持つ意味を、
日本の国民としてしっかりと受け止め、
覚悟を決めた対応を考えなければならない。
紛争の渦中に飛び込むのも、回避するのも
地獄をみるのは間違いないと感じるオヤジが一句。
直視した 先の中国 見たくない
お粗末。
その原因にはアメリカが尖閣領有権が日本にあるとは認めないという事実がある。
これがいかに決定的か、日本人はもっと認識すべきだ。
◆オバマ大統領が習近平国家主席を前に叫んだ言葉――米議会調査局報告書
2013年6月、オバマ大統領と習近平国家主席は
カリフォルニアのアネンバーグ邸で二人だけの会談を行ったあと、
共同記者会見を開いた。その席でオバマ大統領は
「尖閣諸島の領有権に関して、
アメリカは(領有権紛争者の)どちらの側にも立たない」と、
大きな声で宣言した。その姿勢はニクソン政権以来変わってないと、
アメリカは何度も言っている。
―中略ー
アメリカ政府は、少なくともニクソン政権までさかのぼって、
アメリカ合衆国は領有権紛争のどちらの側にも立たないと宣言してきた。
である。つまり、オバマ政権にいたるもなお、
ニクソン政権が沖縄返還に際して
「返還するのは沖縄の施政権だけであって、
アメリカは尖閣諸島の領有権とはいかなる関係もない」
と宣言したアメリカの立場を引き継いでいるということだ。
なぜならサンフランシスコ平和条約で、
アメリカが日本から委任を受けたのは沖縄の施政権だけだったからだ、
というのがアメリカ側の理由。
しかし尖閣諸島に関して、1969年に国連のECAFE
(Economic Commission for Asia and the Far East。アジア極東経済委員会)が
尖閣諸島などの東シナ海に海底油田や天然ガスが眠っているようだと報告するまで、
誰一人関心を示したことはない。
ところがECAFE報告のあと、アメリカが中華人民共和国に接近し始め、
それまで中国の代表だった「中華民国」が
国連から追い出されそうになったのをきっかけに、
在米台湾留学生が台湾の領有権を主張し始めた。
留学生たちは「蒋介石が無能だから、このようなことになる」
として抗議デモを始めたのだ。
そのデモが全米に広がるのを見て、
ニクソン政権時代のキッシンジャー国務長官は、
ときのニクソン大統領やピーターソン大統領補佐官(国際経済担当)などと密談。
この密談内容がアメリカ公文書館の外交関係ドキュメント
Volume17のCHINA(1669-1972)に収められている。
トップシークレットだったが、機密扱いの期限が切れ公開された。
そのドキュメント113~115には、CRSリポートのサマリーに書いてある
ニクソン政権の宣言を導く秘密会談が詳細に書いてある。
これらのドキュメントを分析すれば、
アメリカが米中国交正常化をして中華人民共和国を
「中国の代表」として国連に加盟させるために、「中華民国」(台湾)に対して、
アメリカの立場を守るために、
苦しい自己弁護をしていることが手に取るようにわかる。
◆中国との決定的な対立を避ける――
尖閣領有権が日本にあるとは絶対に言わないアメリカ
中国は嬉しくてならないだろう。
米中国交正常化に際して「一つの中国」をアメリカに認めさせ、
中華民国が自国の領土と主張した尖閣諸島を
「台湾のものは中国(大陸)のもの」として、
領有権を堂々と主張していられるのだから。
日本ではCRSリポートのことなど、筆者がどんなに発信しても、
誰も関心を示さないが、中国はこのCRSリポートを宝物のように重要視している。
アメリカが「領有権に関しては、どちらの側にも立たない」と言っているということは、
すなわち「アメリカは尖閣諸島の領有権が日本にあるとは言っていない」
ということになると解釈して、堂々と中国の領有権を主張しているのである。
だからこそ「東シナ海情勢」が危ないのだ。
中国が強硬路線を通せる状況をアメリカは自分で作っておきながら、
東シナ海の厳しい情勢があるが故に
「日米ガイドラインの見直し」「安保法制の整備」
などの美辞麗句で日本を持ち上げているのである。
自分で原因を作っておきながら、
その現象があるので何とかしなくてはならないと日本を「励まして」いるわけだ。
◆日米、どちらも偽善者
安倍首相もオバマ大統領も、誇らしげに「強固な日米同盟」を繰り返し、
「未来の日米関係」に期待を抱かせている。
しかし、その背後に横たわっているのは、
アメリカの尖閣諸島領有権に対する立場だ。
もちろん、北朝鮮の問題や対テロ工作など、
さまざまな理由は挙げられるだろう。
それら、誰もが納得するであろう理由でカモフラージュしながら、
肝心の原因には、互いに目をつぶっている。
本当に強固な日米関係があるなら、真実を直視すべきだろう。
しかし、互いにしない。見て見ぬふりをしている。
そこに「真の信頼関係」があると、互いに断言できるのであろうか?
この厳然たる事実に目をつぶる日本もアメリカも、
偽善者としか言いようがない。
それ故にこそ、アメリカはついに、
日本をアメリカと対等な軍事的立場にまで持ち上げようとしているのである。
これが、安倍首相が言うところの「歴史の新しい1頁」の一つであることを、
どうか日本人は見逃さないようにしてほしい。
-遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
2015年4月29日 19時39分配信 -
極めて重要なリポートの存在が明らかになった。
またしてもアメリカの無責任な外交戦略が
国際紛争の火種を作ったことを
国家機密だったリポートの内容が示している。
戦後のアメリカ外交はいつもそうだ。
キューバ革命以前のアメリカの対キューバ政策も、
イランのパーレビ国王への肩入れが招いたイラン革命。
アフガニスタンのイスラム過激派の育成とその結果の末の動乱。
イラク戦争後の処理の失敗と、それが原因となったISISの台頭。
それらすべての混乱の種をまいた他に、
朝鮮戦争の教訓を生かさなかった
ベトナム戦争の泥沼化。
アメリカの政策が如何に身勝手で、無能で、近視眼的か、
歴史が示している。
東アジアの不安定化を増長させた原因がアメリカにあるにも関わらず、
その尻拭いを日本にさせようとする昨今の図式は、
その狡猾さに於いて、日露戦争前夜の欧米列強の
日本に対する武力行使のけしかけ行為に相通ずる。
図らずもその時も今日も、中国大陸が関係している。
日本は日本で、それらの狡猾さを逆手にとった
独自路線の開拓を推し進める口実に利用するわけで、
極めて危険な領域に踏み込む状況を
自ら突き進もうとしていると云える。
対中戦争が現実に目の前に近づいている。
南沙諸島を舞台にした日本の外交・防衛分野の行動は、
その端緒となるだろう。
アメリカは尖閣諸島も日米安保条約の防衛対象であると
日本のマスコミの前では言及してきたが、
全くもって信用できない。
沖縄の米軍基地の存在と、沖縄県民の過重な負担を思うと
虚しさが漂う感じがする。
アメリカ軍の日本国内での存在が、中国をけん制する意義は否定できない。
しかし紛争の原因を作り放置し、
今後の責任を日本に負わせる動きが持つ意味を、
日本の国民としてしっかりと受け止め、
覚悟を決めた対応を考えなければならない。
紛争の渦中に飛び込むのも、回避するのも
地獄をみるのは間違いないと感じるオヤジが一句。
直視した 先の中国 見たくない
お粗末。