急に思い立って温泉に行きたくなった。
それならばと、やっぱり好きな場所、奥会津に行こうと。
そしてすぐに宿探しをした。
決めたのが「旅館 ひのえまた」。
奥会津でもまだ泊ったことのない「檜枝岐温泉」の宿だった。
檜枝岐温泉は福島県側から尾瀬への玄関口の檜枝岐村にある。
[塩原の紅葉]
檜枝岐村までは「湯の香ライン」と名付けられている、国道400号を通って行った。
「湯の香」ラインの通っている塩原の下の方はまだまだ紅葉も見ごろだったため、観光客も多く賑わっていた。
でも、標高が上がるにつれて冬枯れの山になり、ずっと寂しげな様子の街道をひたすら走って檜枝岐村に着いた。
村に入ってからも人影はなく、村全体がひっそりと静まり返っていた。
民家の軒下に干してある大根や柿などで冬の到来が感じられた。
宿は通り沿いにあったため、すぐに分かった。
思ったよりも大きな宿だった。
玄関を入ったところから、館内全体に木が使われていて、ホッとするような造りになっていた。
通された部屋は落ち着いた雰囲気の和室、二間続きになっていた。
いつも通り着いたらすぐに待望のお風呂に入った。
お風呂は「燧ケ岳の湯」、「水芭蕉の湯」となっていて、それぞれに内風呂と半露天風呂があり、時間で男女の入れ替え制になっていた。
最初は「燧ケ岳の湯」だった。
[燧ケ岳の湯]
[燧ケ岳の湯・半露天風呂]
温泉は優しいお湯で少し温め、長湯するにはちょうど良かったかも。
半露天風呂の浴槽は総ひのき造り、周りは畳敷きになっていて、下を流れる川や村の様子を眺めることができた。
[水芭蕉の湯]
お風呂の後はお楽しみの食事。
「山人(やもーど)料理」となっていて、一般的な宿の決まりきった食事ではなく、土地の食材をふんだんに使った料理だった。
普段お目にかかれない食材ばかりだったので、添えられていたお品書きの丁寧に書かれた説明が嬉しかった。
また、今回この宿を選んだ理由の一つは「裁ち蕎麦」を食べたかったから。
今年はまだ新蕎麦を食べていなかったので、この宿の蕎麦料理を楽しみにしていた。
檜枝岐の蕎麦は昔から布を裁つようにして切ることから「裁ち蕎麦」と呼ばれている。
もちろん夕食にはこの「裁ち蕎麦」もあった。
鍋には蕎麦をつまんだ「つめっこ」、蕎麦粉ともち米でできた「はっとう」などの蕎麦料理があり、そのあとにはつなぎ無しの蕎麦粉100%の「裁ち蕎麦」を出してくれた。
「蕎麦は光っているうちに食べて」と言われていたが、出してくれた蕎麦は本当に光っていて美味しかった。
そのほかにもサンショウ魚の唐揚げなど、初めて食べたものも多く、素材の味を生かした「山人料理」を十分に堪能することができた。
派手な接客ではなく、気さくな若いご主人と女将さん、丁寧で適度に距離を保ってくださっている従業員の方々だったのでとても心地よい良い時を過ごすことができた。
檜枝岐村では伝承されている「檜枝岐歌舞伎」が毎年3回行われている。
開催される日には村の人口以上の見物客が集まるらしい。
来年の開催日も決まっているので、その時にもう一度行ってみたいと思っている。