キネマ旬報シアターにて鑑賞。
キネ旬の経営する映画館。懐かしい映画パンフレットなどが並んでおりました。平日なので客層はばあさんばかりだったが。
柏に来たのがそもそも初めてかもしれない。
本作は去年公開され、当劇場では少し遅れての公開。
監督:ヴィム・ヴェンダース
脚本:ヴィム・ヴェンダース、高崎卓馬
製作:柳井康治
製作総指揮:役所広司
出演:役所広司、柄本時生、アオイヤマダ、中野有紗、石川さゆり
配給:ビターズ・エンド
上映時間:124分
製作国:日本、ドイツ
そういえば、役所広司て、『たどんとちくわ』でタクシー運転手の役やってたな。シリアスな役がよく似合う。
本作は役所広司主演かつヴィム・ヴェンダース監督という特異すぎる映画。
恥ずかしながらヴェンダース作品、未見でした。
町山智浩が推していたので鑑賞。
「こねくと」聴いていたので、大まかなあらすじは知っていた。
TOTOやユニクロが資本提供している電通製作の作品であり、ヴェンダースは雇われ監督。
ただ落ちぶれた中年が、トイレ清掃をする日々を描いただけの映画なのに、見入ってしまうのだから監督の成せる業は凄い。
てっきりトイレ清掃という一見地味な仕事でも、一生懸命やり抜いて自分らしく生きていけばいいという作品かと思いきや、後半になると、主人公が実は元エリートだったのではないかということが示唆される。
結婚歴があるのかどうかとかは不明。ただ、文学的素養がとてもある。
必ず朝は自販機でコーヒーを買い、仕事終わりは戦闘に入り、行きつけの居酒屋でなぜか酒は飲まずに水を飲むというルーティンがある。
姪との自転車を漕ぐシーンでの「この世界は一つのように見えて色々な世界がある。交わっているようで、交わってない」みたいなことを言う台詞が心に響いた。普段、交差点を歩いて行き交う人とも交わってないのだ。
役所広司演じる平山は、世界と交わることを避けている、というか諦めている。テーマ曲の『PERFECT DAYS』は最高。
石川さゆり演じる女将に密かに惚れていた平山、失恋(では結局なかったのだが)して初めてここで酒を衝動的に飲む。タバコも吸う。分かりやすい
日本でのキャッチコピーの「こんな風に生きていけたらな」というのにはとても違和感を覚える。週刊プレイボーイでの高橋ヨシキ氏の評論では「日本にはトイレくらいしか誇ることがなくなった、そもそも平山のように生きていくことすら現代人は難しい」と語る。そもそも本作では現代の暗部までは描かれていない。平山もリアリティのない人物として描かれている。
芸人の大島育宙さんが論じる。「平山は東京の悪魔だ。」ここまで言い切った。平山は自炊もしないし、排せつもしない。
平山のようになりたいとは思えなかった。まあ、それは私がまだ20代であるから当然なのかもしれない。周りにいたおばあちゃんの観客たちは、キャッチコピー通りのことを思ったのかもしれない。
それにしても、柄本が演じてた男が連れてた女、ガールズバーの女の子だったことを、Wikipedia 読んで知ったよ。。どうしようもない。絶対そんな奴に金は渡さない。