ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「喪中欠礼」

2013-02-15 | エッセイ
2013年2月15日(金)

今日は、先日のエッセイの合評会に出したエッセイを・・。(文中仮名)
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「喪中欠礼」                             
 亡夫の末弟から、喪中欠礼の挨拶状が届いた。九月に長年同居していた妻・咲子さんのお母さんが
亡くなったそうだが、初耳だ。私の夫が亡くなって九年、夫の親族の祝い事も不幸の折りもきちんと
連絡があり、私は夫に代わり参列してきた。そういえば、夫が入院中の頃の咲子さんのお父さんの
葬式にも、夫の兄弟たちと参列し、うちの娘と同い年の従姉妹・奈々ちゃんが、就職したてのスーツ姿
だったことまで覚えている。今回は、どうして知らせてくれなかったのだろう。内輪で行った家族葬だから、
親族は外したのだろうが、兄弟では初めてのことで、戸惑ってしまう。今からでも、ご仏前の
お菓子でもお送りしたほうが良いだろうか。とにかく、夫の兄に相談するのが良さそうだ。
 電話に出た兄は、怒った口調だった。既に、他の姉や弟からも電話が入っていたそうだが、
兄をはじめ誰も、咲子さんのお母さんが亡くなったことを知らなかったのだ。兄の、
「我々にも知らせないなんて、あいつは何を消極的になっているんだ!」
 という言葉に、連絡もなかったのは不本意だったとひしひしと伝わってきて、
「今は高齢の方は家族葬が増えていますし……」 
 とは言い出せなかった。夫の両親亡き後、姉弟たちを纏めてきた自負があり、実際、そう動いて
きてくれた兄にとって、連絡も無かったことが、寂しかったのだと思う。夫の兄弟たちはみな年を
取ってきて、兄自身、しょっちゅう脚が痛い、腰が痛いと病院通いをしているのに、
「それはそれ、これはこれ」だそうだ。末の弟の家の一大事に兄弟が側に居てやりたい、それが
当たり前だと強く思っている様子が伝わってくる。その勢いに、
〈私の母のときには連絡をして遠くから来ていただくのも心苦しい、家族葬にしても良いのでは〉
と、少し考えもしたが、そんなことをしたら、どんなに兄の気持ちを蔑ろにするかと思いが及び、
電話のこちら側でただ兄の言葉に相槌を打っていた。
 その後、当の弟に電話して、お悔みを伝えると、
「何年も前から施設に入っていてね、九十過ぎて他の身寄りも亡くなったから、家族だけでやったんだよ」
と、淡々としている。孫のうち、奈々ちゃん一家は、今はアメリカの東海岸に住んでいるので、
時差が小さな子には辛いだろうからと、呼ばなかったそうだ。血の繋がった奈々ちゃんさえ呼ばない
のだから、家族葬に、私達、喪主・咲子さんの連れ合いの兄弟はますます呼ばれるはずは無かったのだろう。
カッカとしている兄との隔たりは大きい感じだ。
私の母も九十歳過ぎで、長く入院している。息子である弟をしょっちゅう自身の弟(叔父)と間違える母に
万一のことが起きたら、どのような葬式にするのか。とはいえ、私のことも時々分かるのか分からない
のかとなった母だけれど、葬式のことを早々と口にするのも躊躇われるし、喪主となる弟の考えに
こちらから口出しするのもどうかと思ってきた。けれど、今回のように家族葬として家族と親族の間に
しっかり線引きをしてしまうと、夫が亡くなってからも何かと心配りしてくれた夫の兄を切り捨てるようで、
申し訳ない。
 もやもやした思いを抱えていると、夕方、弟の連れ合いの紀子さんが、頂き物の紅鮭のお裾分けに
来てくれた。丁度良いと、紀子さんに夫の末弟の「家族葬」の話をすると、
「え~、お義母さんの時には、私の姉たちも絶対、来ますよ」
 と、明るく言い切った。よし、これで少なくとも親族葬にはなりそうだ。夫の兄弟たちにも
お知らせできると、つっかえていたものが、するすると解けたような気分になった。
 翌日、夫の兄から電話があって、末弟の隣の市に住む別の弟が、兄弟を代表してお線香をあげに
行ってくれると、話がまとまったそうだ。そこで、
「悪いけれど、彼の口座にご仏前代を振り込んで欲しいんだが」
と言われた。いつものように兄弟の一員として声をかけてもらうのがうれしく、
「もちろんです」と、私は、メモに番号を書き取っていった。
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昨年末の「喪中挨拶状」をテーマにしたんだけれど、合評会では、
「最近は家族葬も増えてきて、お葬式のやり方が変ってきている・・」
と、みなさん、それぞれの心情を聞かせてもらいました。
先生の評も、好意的~。やった~♪(^^)
コメント
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