ぶらつくらずべりい

短歌と詩のサイト

詩「火山と土星と大切な人」

2010-01-28 04:49:49 | 
僕の海中の最も深い場所にある休火山が、とてつもなく長い眠りから醒め、考えられる限りに用意周到に噴火の準備を始める。

一方、僕の宇宙の最も低い場所では土星がその周回軌道上を外れ、今にもすぐそこに姿を見せ始めようとしている。

またまたその一方、僕の大切な人達は相変わらず僕の手の平から溢れんばかりの、その自由さで落ちてしまいそうだ。

ああ、今日もどうにかそのいずれも起きていませんように、また起きませんようにと目を閉じる。そして、目を開ける。

また少し、マグマが温度を上げ、リングが回転を増し、指が僕の手から一本、また一本と外れていく。

ああ、僕はもうこの状態に我慢出来ない。

だから起こるのなら、今だ。今、この瞬間に起こればいい。

そう決めた時、火山はまた休火山になり、土星は軌道を修正し、大切な人は僕の手の平にはい上がった。