材木市も半ばを過ぎると並んでいる板もひとまわり大きなもの、節や穴といった木の欠点が少なめのものが多くなってきます。セリの値も最初から一万、二万、三万円・・・。厚みが10センチ、長さも3メートルから5メートルなんてものは、十万、二十万円から・・・。
こうなるとそう簡単には手がでないのが、わが身かな。
しかたなく「見」を決め込むか、用意されてる仕出し弁当で早々にお昼にするか、というところですが、ここは、もうひと頑張り。
三万円、五万円とセリ落とされる材のはざ間に、ポッと手ごろな値段のものがはさまっていたりするのです。人の集中力もそう続くものでもなく、セリの流れの中でもお客さんの買う気満々の時もあれば、少し引いているときもあるんですね。
そんな空気を読めたなら、控えめに手のひらをセリ師に向けてチョイチョイとかざす。
そうすると、わりと厚みも大きさもしっかりしたいい木が安く買えたりするのです。
何回も材木市場に通ううちにわかった、セリの鉄則のひとつに
「少々高くても、大きい木、幅のある木、木目のよい木を買う」
というのがあります。そのほうが苦労なくいい作品ができるんですよね。
とはいえ、自分の予算と相談しながらですが。
そうこうしているうちにもセリは、どんどん進んでいきます。
一枚、十万円、二十万円とする板を一癖ありそうな親父たちが次々セリ落として行くようになると、もうこれ以上は自分の出る幕はないと、私は仕出し弁当に走りました。次回最終回。