河内俄のオチは単なる駄洒落ではない。なぞかけ(三段なぞ)」の発想に近い。
前回、紹介した俄を例にすると、
〇「亭主の浮気」とかけて、
「女房が牛の刻詣りをしたが効きめがなかった」と解く。
その心は「浮気の相手が糠屋の娘」
〇「百姓息子の改心」とかけて
「大根」と解く
その心は「いつか孝行になる」
A「こないだ、嫁はんに浮気がバレてしもうた」
B「えらいこっちゃ、どないしたんや?」
A「うちの嫁はん一升飲み干すほどの酒好きやから、仲直りしよう思うて、五合徳利に酒を買うて、持って帰ったがな」
B「ホー、嫁はん、喜んだやろ!」
A「それがや。えらい怒られたがな」
B「ハテ、なんて怒られたんや?」
A「一生(一升)つまらん、言われた」
〇「酒飲みの女房への浮気のお詫び」とかけて
「五合徳利の酒」と解く
その心は「一生つまらんと怒られた」
大阪人が社交辞令で「おいおい、そんなん言うたら、破れた太鼓やがな、どんならんわ(どうしようもない)」。
江戸時代に流行した「洒落言葉」という遊びである。前に挙げた「五合徳利で、一生つまらん」も洒落言葉を利用したものである。
よく知られているのは、
「屋根屋のふんどしで、みあげたものだ」
「猿の小便で、気(木)にかかる」
「便所の火事で、やけくそ」
これを単純に俄のオチにすると、
〇屋根屋の親父が腕をあげた息子に、股ぐらからふんどしを取り出し、
「見上げたもんや」
〇動物園のサルの飼育員が「猿の小便」と書いたビンを出して、
「気にかかるわい」
便所の火事は物ではないのでオチには使えない。河内俄は物を取り出してオチにするという制約がある。
そう思っていたら、昔、どこかの俄で、紙に「便所の火事」と書いてオチにしたのがあった。
やけくそだったのに違いない。
※挿絵は大正・明治の「道頓堀」 大阪市立図書館アーカイブより
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