河内国喜志村覚え書き帖

大坂の東南、南河内は富田林市喜志村の歴史と文化の紹介です。
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俄のオチ

2022年09月12日 | 祭と河内にわか

 河内俄のオチは単なる駄洒落ではない。なぞかけ(三段なぞ)」の発想に近い。
 前回、紹介した俄を例にすると、
〇「亭主の浮気」とかけて、
 「女房が牛の刻詣りをしたが効きめがなかった」と解く。
 その心は「浮気の相手が糠屋の娘」
〇「百姓息子の改心」とかけて
 「大根」と解く
 その心は「いつか孝行になる」

 A「こないだ、嫁はんに浮気がバレてしもうた」
 B「えらいこっちゃ、どないしたんや?」
 A「うちの嫁はん一升飲み干すほどの酒好きやから、仲直りしよう思うて、五合徳利に酒を買うて、持って帰ったがな」
 B「ホー、嫁はん、喜んだやろ!」
 A「それがや。えらい怒られたがな」
 B「ハテ、なんて怒られたんや?」
 A「一生(一升)つまらん、言われた」

〇「酒飲みの女房への浮気のお詫び」とかけて
 「五合徳利の酒」と解く
 その心は「一生つまらんと怒られた」

 大阪人が社交辞令で「おいおい、そんなん言うたら、破れた太鼓やがな、どんならんわ(どうしようもない)」。
 江戸時代に流行した「洒落言葉」という遊びである。前に挙げた「五合徳利で、一生つまらん」も洒落言葉を利用したものである。
 よく知られているのは、
  「屋根屋のふんどしで、みあげたものだ」  
  「猿の小便で、気(木)にかかる」
  「便所の火事で、やけくそ」
 これを単純に俄のオチにすると、
〇屋根屋の親父が腕をあげた息子に、股ぐらからふんどしを取り出し、
 「見上げたもんや」
〇動物園のサルの飼育員が「猿の小便」と書いたビンを出して、
 「気にかかるわい」
 便所の火事は物ではないのでオチには使えない。河内俄は物を取り出してオチにするという制約がある。
 そう思っていたら、昔、どこかの俄で、紙に「便所の火事」と書いてオチにしたのがあった。
 やけくそだったのに違いない。

※挿絵は大正・明治の「道頓堀」 大阪市立図書館アーカイブより


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