ヒット大地、短大で「出産」を教えていた。
今日は、女性への感謝の気持ちを表して、
出産について科学しよう。
ヒット大地、女性には、本当に幸福になって欲しいと思っている。
(もちろん、男性にも幸福になって欲しいが・・・)
まず出産は、どのくらい大変なことか?
・・・と問われると、
「かなり大変なこと」と答えざるを得ない。
なぜかって?
今でこそ、妊娠出産で、命を落とす女性は少ない。
(2006年には出産10万件当たり約5人。これは世界でもトップクラス)
しかし昔は違った。
わが国の妊婦死亡率は、明治33年には出産10万件当たり400人程度もあった。
今の80倍。
結構、命を落としていたわけだ。
しかし、現在でも、出産は大変なことだ。
何と言っても、一番怖いのが、出産時の出血だ。
現在、産婦人科学会では、500ml以上が、
「出血過多」と定義されている。
これが1000mlを超えると、生命の危険がある。
だから、出産においては常に
「自己血輸血(自家輸血)」や「血液製剤輸血(濃厚赤血球など)」
などの準備をしておく。
また「前置胎盤」などは、出血過多の可能性が高いので、
ほとんどが、帝王切開することになっている。
(前置胎盤にも、いろいろ種類があるが、省略する)
ところで、実際の出産は、医学的に「分娩」と呼ばれる。
じゃあ、いつから分娩・・・と呼ぶのだろうか?
オナカが痛くなったら、そこから、分娩と呼ぶのか?
違う。
ただ単に、屁がしたいだけ気も知れぬ。
またベンピ・・・かもしれぬ。
(なお、現在は、分娩促進剤の投与で、分娩の日にちや時間も、かなり操作できる)
正確には、分娩は普通、
約10分間隔の陣痛が、始まったときからだ。
そして、子宮の出口(子宮口という)が、
10センチほどに全開大するまでを、
「分娩第1期」という。
(注:全開大は医学用語だ)
「さあ、いよいよ、胎児が、子宮から出てくるそ!」という
準備段階だ。
しかし、ここまでが非常に長い。
初産婦(初めて出産する母親)では、平均、10~12時間だ。
経産婦(出産経験者)でも、平均、4~6時間にもなる。
ところで・・・
ここで大きな注意点がある。
子宮口全開大までは、決して、力んではいけない!・・・これだ。
(医学用語では、「力む」ことを、「いきむ」「努責(どせき)」という)
理由は「胎児に、余計な圧力が加わる」からだ。
もう一つの注意点がある。
それは・・・・
破水するまでは、歩き回ってもかまわない!・・・これだ。
(シャワーもOK)
ただし破水後は、感染の危険性がある。
歩行やシャワーは、厳禁だ。
さらに、ここで、もう一つの大切な注意点を述べよう。
「食欲があるうちは、ものを食べた方がいい」・・・これだ。
出産は体力勝負だ。
とくに炭水化物系を食べておいた方がいい。
エネルギーになるからだ。
オニギリ・・・などは、お勧めだ。
さて、「分娩第1期」という以上、「分娩第2期」もある。
「分娩第2期」とは、
「子宮口全開大から、胎児が、膣の外に出るまで」を言う。
所要時間は、結構、長い。
初産婦で平均、1~2時間だ。
経産婦で平均、1~1.5時間だ。
この間、母親のいきみ・・・が続く。
すなわち、「子宮口全開大のあと、いきみ解禁」ということになる。
ただし、1~2時間、ずっといきんでいては、体力が持たない。
「休み、休み」ということになる。
ここでヒット大地、北海道帯広の「ばんえい競馬」を思い出す。
ソリを引く馬たちも、「休み、休み」だ。
でないと、逆に、途中で動けなくなるだろう。
マラソンも、マイペースが肝心だ。
急ぐと、へばるだろう。
いきみを休んでいる間、母親の思うことは、もちろん、思うことはひとつ!
「早く、出てくれ!」・・・これしかない!
休んでいるうちは、気持ちを、できるだけ楽にもつことだ。
実際、極度の疲労のため、ウトウトする母親もいる。
これも、結構なことだ。
気持ちを楽に持てば、逆に、スムースに胎児が生まれるものなのだ。
胎児の頭が、膣口に現れたとき、
これを医学用語で、「排臨(はいりん)」という。
その後、「発露(はつろ)」というものがある。
これは、「膣口に、赤ちゃんの頭の一番大きなところが現れる」ことだ。
そして、この辺りで、一部の女性が恐怖する「会陰切開」が行われる。
会陰とは、膣と肛門の間のこと。
「会陰切開」とは、ここを切るのだ。
理由は、2つある。
①スムースに出産するため、
②切らなくても、膣口が裂けることが多いので、
前もって切ることにより、傷の治りをスムースにする
・・・この二つだ。
(しかし、切らない方が、早く治りやすい・・・とも言われる)
切る道具は、ハサミまたはメスの2種類だ。
切るとき、妊産婦には、ジャリ・・・という音が聞こえることも多い。
麻酔はかけないことも多い。
かけなくても、痛くなし。
(女性は安心して欲しい!)
なぜなら陣痛の痛みの方が大きいからだ。
(ただし医師に頼めば、かけてくれる)
もちろん、分娩後、縫合するときは、麻酔をかける。
これは当然だ。
ところで、「会陰切開」は必ずするのか?
もちろん違う。
7割くらいの割合で行われている。
(これも、医師に頼めば、よほどの難産は別として、
切らない方向で、努力してくれる)
こうして、めでたく、分娩した。
母親は一安心だ。
しかし分娩直後、医師や助産師のやることは多い。
(注:助産師だけは、女性しか免許は与えられない。
看護師は、男性でもなれる)
まず、することは、
鼻や口にたまった羊水を、吸い取り、
ヘソの緒(医学用語では臍帯という)を切ることだ。
当然、ヘソの緒は、二箇所を縛ってから切る。
次に、医師や助産婦のやることは、
赤ちゃん(医学用語では、新生児という)の、状態を調べることだ。
アプガースコアーというのを調べるのだ。
これは出生1分後および5分後、
赤ちゃんの心拍数、呼吸数、皮膚の色、活発度・・・などを、
点数で表し、合計を10点満点で出す。
8点以上が、合格だ。
昔は、分娩後の赤ちゃんは、すぐに産湯につけて、全身を洗った。
ところが、現在では、「清拭」と言って、
体を拭くのが、勧められている。
理由は、産湯に漬けた後の、体温の下降や、感染防止のためだ。
そしてまた、できるだけ早く、
赤ちゃんを母親と面会させることが勧められる。
(ただし、未熟児などの場合は、赤ちゃんは、すぐに保育器に入れられる)
このとき、直に、皮膚と皮膚を接触させるべきだとされる。
これをカンガルーケアと呼んでいる。
さあ、こうして、やっと赤ちゃんが誕生した。
だが、これで終わりではない。
「分娩第3期」もある。
「分娩第3期」とは・・・
胎児出産後、胎盤が出てくるまでの期間だ。
これは後産(あとざん、こうざん)と呼ばれるが、短い。
所要時間は、
初産婦で平均、15~30分だ。
経産婦で平均、10~20分だ。
ただし胎盤がなかなか、子宮から剥がれ落ちないときもある。
この場合は、医師が産道に手を入れて、胎盤を引っ張ることもある。
その際、出血には十分注意する。
こうして分娩は終わる。
しかし首尾よく、すべてが出てきても、
まだ安心とは行かない。
「子宮復古」が、スムースに行われないといけないからだ。
「子宮復古」とは、「子宮が元に戻ること」だが、
これについては、次回に述べることとしよう。