ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け34年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

【拡散願います】海上自衛隊哨戒ヘリの墜落事故について思うこと

2024年04月22日 | 米軍/自衛隊

 昨日2024年4月21日午前に入ってきた情報に拠れば、4月20日22時38分頃、海上自衛隊SH-60Kヘリが伊豆諸島鳥島の東の海域に墜落したとのことだった。私は俄に気になりだし、防衛省のHP等を確認した。以下何が問題なのかを整理しておきたい。

(1)防衛省による公表の経緯と概略
 木原防衛大臣は4月21日(日)、3回の記者会見を開いている。
①21日未明 2時23分から28分(防衛省内)「海自ヘリ(SH-60K)通信途絶事案に係わる木原防衛大臣臨時会見」
➁21日9時14分から9時23分(防衛省内)「海自ヘリ(SH-60K)2機の墜落事案に係わる木原防衛大臣臨時会見」
③21日16時30分から16時37分(防衛省内)「同上」

①は第1報だ。「夜間対潜戦の訓練中、伊豆諸島鳥島の東の洋上において通信途絶いたしました。搭乗員2機8名の内7名が行方不明であり(中略)、当該2機は墜落したものと考えられます。(後略)」と公表した。
 質疑応答の中で、捜索の状況、1名の安否確認中であること、所属2機は1機が大村航空基地、もう1機が小松島航空基地であり、いずれも第22航空群だと答えている。
 海上自衛隊第22航空群は、長崎県大村基地にある部隊であり、「護衛艦」(駆逐艦・水上戦闘艦)に哨戒ヘリを載せる運用部隊だ。その傘下に第22航空隊が大村にあり、第24航空隊が徳島県小松島航空隊にある。この第22航空隊は佐世保軍港の艦載機の運用を担当しており、第24航空隊は呉軍港の艦載機を運用している。
(註)佐世保を母港としている「護衛隊」は、第1護衛隊群(司令部横須賀)の第5護衛隊傘下の4隻と、第2護衛隊群(司令部佐世保)の第2護衛隊の4隻、第4護衛隊群(司令部呉)の第8護衛隊の4隻だ。また呉を母港としている「護衛隊」は第4護衛隊群の第4護衛隊の4隻だ。

➁2報は「2機の墜落事案」と断定したものであり、1名の死亡も確認している。他の7名については捜索態勢を明らかにし、ただ今捜索中だとしている。当該2機のフライトレコーダーを近接した場所で発見し回収したと答えている。質疑の中で2機の艦はそれぞれ別だと答えながら、艦名を伏したままだ。訓練内容についても具体的なことは答えず、後ほど海上幕僚長が記者会見を開き答えられる範囲で答えるとしたに過ぎない。

③3報は亡くなられた「ご遺体につきましては、横須賀病院(引用者註:海上自衛隊の病院)に移送し、検死を実施中」、また、捜索を継続中だとし2個のフライトレコーダーを厚木航空基地に輸送したので、今後解析作業を進めていくとした。
 質疑の中で、墜落した2機以外にもう一機いたことを指摘されたことへの答えは、現在調査中だと具体的に答えていない。また安全管理について問われ、「安全が第一でありますから、改めてその指示を出した上でですね、全自衛隊員に対して、もう一度徹底したい」と答えている。
 記者から哨戒ヘリの夜間訓練で、2021年、2017年にも同じような事故があったが、教訓を活かしているのかと問われている。これに対して、海上幕僚監部に事故調査委員会を立ち上げ、調査を始めたとしているが、以前の事故について「風化させることがないように、常に教育を実施している(中略)痛恨の極み」だと、曖昧にしか答えていない。事故原因をはぐらかしており、これでは解決策を講じ得ないのではなかろうか。
 記者からの質問で、同盟(引用者註:米国)国との訓練に加えて、同志国(引用者註:NATO諸国など)との訓練頻度が増していることが、現場に何らかの影響を与えていないかと質されている。木原大臣は、「特に航空機の安全管理というのは徹底した上で、これはしっかりとその上で訓練は実施する」と考えていると言い切った。さらに「(訓練頻度を下げ運用能力を向上させないままでは)有事があった場合には、なお一層危険性が増すということに繋がるかと思いますから、訓練をした上でですね、充分に練度を上げた上で、そして有事に備えるということが必要だ」と、有事対応をもちだした。

(2)何が問題なのか?
①事故が抽象的にしか語られていない
 事故が起きたのが20日22時38分頃だとすれば、1日も経たずに詳報が分からないことは、やむを得ないことなのだろうか。必ずしもそうではない。今回の対潜戦訓練は、味方陣営の「護衛艦」(駆逐艦・水上戦闘艦)の配置があって行なわれている。ヘリ3機は3隻の護衛艦から発艦したのだろう。敵潜水艦は、大いに脅威となり、これを「護衛艦」やヘリのソナー等で発見し、撃沈するのが対潜戦だ。作戦指揮は「護衛艦」の指揮所から発せられる。演習で、段取りを確認しながらやっていたと読売新聞は伝えており、「護衛艦」はヘリの動きも探知し誘導しながら具体的な指揮を出していたはずだ。
 よって、ヘリから回収したフライトレコーダ-と共に、彼らから事情を聴取し、記録を調べれば、かなり具体的な状況が分かるはずだ。問題は3隻の護衛艦の中でどの艦が指揮を統括してたのかが問題となり、3隻の護衛艦は、それぞれのヘリに対する指示に整合性を持っていたのかが問われるだろう。「護衛艦」とヘリの間の指示命令系統を差し置いた原因究明は、ありえない。それでは、ヘリ搭乗員の失敗に帰すことになりかねない。そうだとすれば、「死人に口なし」となり、彼らに大変失礼な話しとなるだろう。

➁夜間訓練の問題
 SH-60Kは、対潜哨戒を主たる任務としており、SH-60Jの改良型だ。開発はいずれも防衛省技術研究本部であり、60Jは米国シコルスキー社と三菱重工が製作した。60Kの製作は三菱重工だ。Kは僚機間戦術交換装置等を新たに備えており、連携した作戦に優れているはずだ。
 但し、夜間訓練の場合、どこまで安全性を維持できるのかが厳しく問われる。太陽光が射している昼間と夜間は雲底の差がある。特に広い海洋の中で、自己機の位置を常に確認し、僚機との差を確かめながら飛ぶことは、大変困難なことだろう。レーダーやGPS、近距離においては、目視に頼ることになるのだろう。安全限界を、当然広くとらざるをえない。
 ここで問題は、哨戒機の任務にある。潜水艦を発見し、その位置などを探り出し、魚雷や爆弾を投下して潜水艦を撃沈するのだ。演習も同様だろう。つまり、艦艇側もヘリの搭乗員も、ヘリの安全よりも差し迫る危機への対処を優先していくだろう。ヘリの搭乗員は命令を無視できない。目視などの人間の能力が問われれば問われるほど、自らの安全性の保持は疎かにされるだろう。安全性の保持と、この任務は矛盾する。平時から「有事」を意識している限り、なおさらのことだろう。 
 
 4月22日昼時点のことはここまでだ。海上幕僚長は、いつ何を話すのだろうか? 私は注目している。対潜戦(訓練)は沖縄近海でも行なわれているはずだ。他人事ではないのだ。 
 結びに私は、国が有事に備えると称している中で、軍用機の事故は避けられないと考える。機密やごまかしがまかり通れば、尚更だ。「英雄伝」など、戦争を煽る邪道そのものだ。



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