ヤマヒデの沖縄便りⅣ 歩き続けて 歩き続ける 再び

「基地の島」沖縄を歩き続け34年、気ままに綴ります。自然観察大好き。琉球諸島を戦場に据える「島嶼防衛」は愚の骨頂。
 

沖縄県が出した熊野鉱山への措置命令について

2021年04月17日 | 沖縄県の動き

 2021年4月16日午後、玉城デニー知事が記者会見を行い、遺骨混じりの鉱山開発を進めようとしてきた熊野鉱山について新たな行政手続きに踏み込んだことを明らかにした。「人道上の立場」「風景を保護する」との立場と、この措置命令には乖離が大きいようだ。改めて内容を示し、問題点と今後の課題を私なりに考える。

1:沖縄県がとった処分

《令和3年4月16日環境部自然保護課第52号 弁明通知書》(行政手続法第13条第1項第2号の規定による)

①弁明の件名:令和2年11月9日付けで届け出のある沖縄県糸満市字米須(黒塗りにつき不明)における掘採行為について

②不利益処分の内容:別紙1に示す措置を執るべき旨を命ずる処分

③根拠法令:自然公園法第33条第2項

④不利益処分の原因となる事実:別紙2のとおり、風景を保護するために必要があると認められる場合に該当する。

⑤弁明書の提出期限:令和3年4月30日

《別紙1の措置命令とは?》

①戦跡公園としての風景の保全と、人道的な配慮から遺骨の有無の確認と遺骨の収集に支障がないよう措置を講じる

②採掘区域の周辺に接している慰霊碑の区域における風景へ影響をあたえないように、植栽等の措置

③周辺植生と同様な植物群落に原状回復

④掘採前に県に報告し、協議する

 沖縄県はこうした措置命令を行なった。ひとまず申請業者の弁明を聞き、具体的な対応を決めるとしている。まだ細部について未定なのだ。

2 沖縄県が執った処分の問題点

 自然公園法第33条2項に基づく禁止にしなかったのは、鉱業権の尊重(同法4条など)の前に、提訴された際、勝てないと判断したからだろう。

①しかしどうすれば遺骨の収集を完全に行い、掘採できるのだろうか。遺骨はバラバラに散在しており、局部のみにあるものでもない。だとすれば遺族に納得される人道的な方法がありうるのだろうか?

②景観の保全も既に業者が勝手に山林を伐採し、原状が大きく破壊されている。景観は壊されているのだ。さらに掘採は斜面上部から下へ約30m掘るものだ。自ずから景観は更に破壊される。原状回復(もとどおりにする)というが、申請業者は、工事にとりかかる前の状況を確認し、記録しているのかすら、大いに疑わしい。

③周辺を植栽して、取り繕うことにも限界がある。例えば魂魄の塔や広島の塔などに向かう人にとって、高度の高い予定地の崖は露骨に見えてしまう。農地の脇にひょんと高木を植えたら、まったくおかしなことになる。

④そもそも予定地の周辺は農地と、ガマを含む慰霊の施設だ。こうした場所から石灰岩を搬出することは農地法上、農地転用が農業委員会で認められなければ不可能だ。

 こう考えると県・糸満市と申請業者の協議はどうなっていくのか。着地点は見えない。掘採というウルトラリアルな行為がもつ破壊力は、糸満市・八重瀬町などに広がる鉱山の展開を見れば、明らかだろう。

3 今後の問題

①私たちは、戦跡公園が戦跡公園として機能するためには、従前の対処を大幅に超えた基準・新たな条例を含む方針をもたねばなるまい。要するにこの国は沖縄に沖縄戦を強いながら、遺骨の収集さえ満足にやってこなかったのだ。それを名ばかりの「戦跡公園」を与え、誤魔化してきた事が大問題なのだ。戦後76年が経ち、それも新たな戦争に備える新基地建設のために、こうした土砂を使用する可能性を示唆することじたいが、人道にもとるのだ。

②ここで重要なことは、人道上許されないという観点ばかりか、歴史を歪めてはならないと言うことだ。歴史教科書問題などで露骨に示されてきたこの国のスパイ視した上での住民への惨殺、降伏させず自決を強いた歴史とガマの存在など、戦跡として残すべき課題は少なくないはずだ。

③残すべき景観について補足する。この景観には2つある。現在の諸々の慰霊施設から見る景観と、かっての戦場となった場所から見る景観だ。両者は、無論重なっているが、景観もクソリアルなのだ。「象徴空間」にごまかされない景観論を私たちは育むべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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