日本政府は、2010年の防衛計画大綱において、「島嶼防衛」を掲げ、琉球諸島の島々に対艦ミサイル部隊と対空ミサイル部隊を設置する案を固め、進めてきた。これまでに、与那国島にレーダー基地を、石垣島、宮古島、奄美大島に対艦ミサイル・対空ミサイル部隊と、警備隊(基地警備)等を新設するとしてきた。このうち、与那国島は2016年、奄美大島に2019年、宮古島に2020年配備を完了させ、本格稼働に向けて、様々な動きが強まっている。石垣島にも工事が強行されおり、配備の年限は明らかにされていない(2022・23年度?)。
2021年8月20日の琉球新報は、陸自勝連分屯地に地対艦ミサイル中隊を置くとする防衛省の動きを伝えた。この動きは極めて衝撃的なものだ。詳細は別途書く予定だが、「島嶼防衛戦略」とは、米国の対中包囲網を琉球諸島に陣地構築し、軍事力を配列し、米・中が張り合うものだ。米国は、中国の艦隊、航空母艦が太平洋に出てくることを極度に警戒しているのだ。
勝連分屯地ゲート 第15高射特科連隊第2中隊とでている。(20210821撮影)
ゲートの左手で土木作業が始まっている。工事用の作業道路の設定か。20210821撮影
与那国島・石垣島・宮古島・沖縄島・奄美大島・馬毛島(種子島)・九州各地・日本列島の基地群に軍事網を連結し、陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊の統合部隊と、米軍の統合部隊が連結し、中国軍と対峙する。満々がいちに島が攻め落とされた場合(軍事的に小さな島を守ることは殆ど不可能)、一旦、自衛隊は撤収し、あらためて部隊を再編成し、「島嶼奪還作戦」に出るという代物だ。島民の命の営みなど、顧みない、住民を盾にして戦うことが想定されているのだ。
勝連分屯地は、うるま市の勝連半島の東の丘にあり、ホワイトビーチ(米日の海軍基地)の西側だ。勝連分屯地の東隣に与勝高校がある。ここは第15高射特科連隊(八重瀬分屯地)の第2高射中隊が駐屯している。因みに第1中隊は南城市知念、第3中隊が沖縄市白川、第4中隊が八重瀬町安里に置かれている。高射特科連隊は、対空ミサイル部隊であり、戦闘機からの攻撃、空からの対地ミサイルへの反撃・防空が主目的だ。もっともその防衛は、嘉手納基地や普天間基地、那覇駐屯地などを守るものであり、住民の暮らしを守るものではない。
だから沖縄島への配備は対艦ミサイルの追加配備だとも言える。しかし従来の守りとは大きく異なってくる。押し合いへし合いの中で、敵艦艇を撃破する攻守入り乱れての陣地戦となりかねないのが「島嶼防衛」の本筋だ。
人数は180人程度であり、それはこの基地だけをとれば、たいした数ではないようにみえるが、繰り返すが一連のセットとして機能し、佐世保に配備されている水陸機動団(辺野古にもその水陸機動連隊が配備される動き)、北海道から、四国・九州までに配備されている即応機動連隊、海上自衛隊に新設される空母艦隊等、航空自衛隊の様々な戦闘部隊、宇宙戦争部隊、電子戦部隊、などを含めれば、自衛隊が防災・災害救援とは全く別の姿の殺戮部隊になっていることを認識しなければならないのだ。
沖縄が再び戦場になることは、あってはならないだろう。私たちの暮らし・命を守るのは、人間の英知であって、外交の努力であって、軍事力では、不可能だ。
私たちは、これまでの与那国島・石垣島・宮古島・奄美大島・種子島などでの闘いから学びながら、沖縄島からも共に闘い抜くことを決意していこう。皆、人間が住んでいる島だから。
勝連駐屯地を見上げる。丘の上。2021年08月21日撮影