万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌4246 沖つ波3926

2022年01月16日 | 万葉短歌

2022-0116-man4246
万葉短歌4246 沖つ波3926

沖つ波 辺波な立ちそ 君が船
漕ぎ帰り来て 津に泊つるまで  〇

3926     万葉短歌4246 ShuJ250 2022-0116-man4246

□おきつなみ へなみなたちそ きみがふね
  こぎかへりきて つにはつるまで
○=作者未詳。「〔長反歌は〕天平五年(733)の入唐使〔同六年種子島帰着、七年帰京〕・・・一行の一人の妻の立場で詠まれている。」
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第108首。前歌(4245、長歌)題詞に、「天平五年贈入唐使歌一首 并短歌 作主未詳」、その「反歌一首」。
【訓注】辺波な立ちそ(へなみなたちそ=辺波莫起)[「〔波が〕船の往来を阻むほどには立ってくれるな」]。入唐使[天平五年の入唐使は、多治比真人広成(島の子)]。


万葉短歌4244 あらたまの3925

2022年01月15日 | 万葉短歌

2022-0115-man4244
万葉短歌4244 あらたまの3925

あらたまの 年の緒長く 我が思へる
子らに恋ふべき 月近づきぬ  藤原清河

3925     万葉短歌4244 ShuJ246 2022-0115-man4244

□あらたまの としのをながく あがおもへる
  こらにこふべき つきちかづきぬ
○藤原清河(ふじはらの きよかは)=19-4241歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第106首。題詞に、「大使藤原朝臣清河歌一首」。
【原文】19-4244  荒玉之 年緒長 吾念有 児等尓可恋 月近付奴  藤原清河


万葉短歌4243 住吉に3924

2022年01月14日 | 万葉短歌

2022-0114-man4243
万葉短歌4243 住吉に3924

住吉に 斎く祝が 神言と
行くとも来とも 船は早けむ  多治比土作

3924     万葉短歌4243 ShuJ246 2022-0114-man4243

□すみのえに いつくはふりが かむごとと
  ゆくともくとも ふねははやけむ
○多治比土作(たぢひの はにし)=原文は、「多治比真人土作(~まひと~)」。「文武朝の左大臣正二位丹比真人島の孫。水守の子(・・・)。・・・・天平十八年〔(746)〕民部少輔・・・、天平勝宝元年〔(749)〕紫微大忠を兼ねた。宝亀二年(771)没」。下記編者注。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第105首。題詞に、「民部少輔(みんぶのせうふ)多治比真人土作歌一首」。
【訓注】住吉(すみのえ)[「摂津の住吉(すみよし)。・・・航海の安全を守る神・・・」]。斎く祝(いつくはふり=伊都久祝)。神言(かむごと)[集中、ここだけ]。
【編者注-紫微大忠】官職の一。「紫微中台(しび‐ちゅうだい)=奈良時代、天平勝宝元年孝謙天皇の時、藤原仲麻呂(恵美押勝)が一時改称した皇后宮職の称。令・大小弼・大〔(紫微大忠)〕少忠・大少疏の官職を設け、仲麻呂みずから紫微令に就任した。天平宝字二年さらに坤宮官と改称。(『広辞苑』)」


万葉短歌4242 天雲の3923

2022年01月13日 | 万葉短歌

2022-0113-man4242
万葉短歌4242 天雲の3923

天雲の 行き帰りなむ ものゆゑに
思ひぞ我がする 別れ悲しみ  藤原仲麻呂

3923     万葉短歌4242 ShuJ245 2022-0113-man4242

□あまくもの ゆきかへりなむ ものゆゑに
  おもひぞあがする わかれかなしみ
○藤原仲麻呂(ふじはらの なかまろ)=慶雲3(706)~天平宝字8(764)。「武智麿の子、母は安部真虎女(尊)。・・・。〔天平宝字八年九月〕仲麿謀反。・・・近江に逃亡した後追討により高島の湖畔に斬首。歳五十九。・・・天平十・一の天皇御在所での雪の宴に参席。天平勝宝三・四入唐使の時に大納言。天平宝字元・十一内裏の肆宴に内相」(『万葉集事典』「藤原朝臣仲麿」条、跋)。恵美押勝(ゑみの おしかつ)。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第104首。題詞に、「大納言藤原家餞之入唐使等(にふたうしらを せんする)宴(うたげの)日歌一首 即主人卿(すなはち あるじ まへつきみ)作之」。
【原文】19-4242  天雲乃 去還奈牟 毛能由恵尓 念曽吾為流 別悲美  藤原仲麻呂


万葉短歌4241 春日野に3922

2022年01月12日 | 万葉短歌

2022-0112-man4241
万葉短歌4241 春日野に3922

春日野に 斎くみもろの 梅の花
さきてあり待て 帰り来るまで  藤原清河

3922     万葉短歌4241 ShuJ242 2022-0112-man4241

□かすがのに いつくみもろの うめのはな
  さきてありまて かへりくるまで
○藤原清河(ふじはらの きよかは)=「北家の祖房前(不比等第二子)の第四子。・・・光明皇后の甥」。前歌併照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第103首。題詞に、「大使藤原朝臣清河歌一首」。
【訓注】斎くみもろ(いつくみもろ=伊都久三諸)[「<斎く>は、ここは神を祭るために盛り土をして祭壇を築くこと。<みもろ>は木を植えて髪を招(お)ぎ降ろす場所。藤原氏の祖神を祭ってあったもので、これがのちに春日神社となる」]。さきてあり(栄而在)[諸説<さかえて>に対して、依拠本は<咲きて=栄えて>説を採る]。


万葉短歌4240 大船に3921

2022年01月11日 | 万葉短歌

2022-0111-man4240
万葉短歌4240 大船に3921

大船に 真楫しじ貫き この我子を
唐国へ遣る 斎へ神たち  光明皇后

3921     万葉短歌4240 ShuJ242 2022-0111-man4240

□おほぶねに まかぢしじぬき このあこを
  からくにへやる いはへかみたち
○光明皇后(くゎうみゃう くゎうごう)=08-1658歌注参照。原文は、「藤原太后」。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第102首。題詞に、「春日(かすがにして)祭神之日(かみをまつるひに)藤原太后(おほきさきの)御作(つくらす)歌一首 即賜入唐大使(にふたうたいし)藤原朝臣清河(きよかはに) 參議従四位下遣唐使」。
【訓注】真楫しじ貫き(まかぢしじぬき=真梶繁貫)[「〔船出の〕慣用句」。用字を変えて、集中に12か所出現]。唐国(からくに=韓国)。斎へ神たち(いはへかみたち=伊波敝神多智)[修飾なしの <かみたち> は、ここだけ]。入唐[藤原清河は、天平勝宝四年(752)に入唐]。


万葉短歌4239 二上の3920

2022年01月10日 | 万葉短歌

2022-0110-man4239
万葉短歌4239 二上の3920

二上の 峰の上の茂に 隠りにし
そのほととぎす 待てど来鳴かず  大伴家持

3920     万葉短歌4239 ShuJ240 2022-0110-man4239

□ふたがみの をのうへのしげに こもりにし
  そのほととぎす まてどきなかず
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第101首。題詞に、「詠霍公鳥歌一首」、左注に、「右四月十六日大伴宿祢家持作之」。
【訓注】二上(ふたがみ)。峰の上の茂(をのうへのしげ=峰於乃繁)。そのほととぎす(彼霍公鳥)


万葉短歌4238 君が行き3919

2022年01月09日 | 万葉短歌

2022-0109-man4238
万葉短歌4238 君が行き3919

君が行き もし久にあらば 梅柳
誰れとともにか 我がかづらかむ  大伴家持

3919     万葉短歌4238 ShuJ238 2022-0109-man4238

□きみがゆき もしひさにあらば うめやなぎ
  たれとともにか わがかづらかむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第100首。題詞に、「二月二日会集于守館宴(うたげして)作歌一首」、左注に、「右判官(じょう)久米朝臣広縄以正税帳(せいせいちゃうを もちて)応入(〔い〕らむとす)京師 仍(よりて)守大伴宿祢家持作此歌也 但越中風土(ふうと)梅花柳絮(ばいくゎりうしょ)三月初咲耳」。
【訓注】もし久にあらば(もしひさにあらば=若久尓有婆)。梅柳(うめやなぎ)。我がかづらかむ(わがかづらかむ=吾縵可牟)[「<かづらく>は縵にして頭に載せる意」]。


万葉短歌4237 うつつにと3918

2022年01月08日 | 万葉短歌

2022-0108-man4237
万葉短歌4237 うつつにと3918

うつつにと 思ひてしかも 夢のみに
手本まき寝と 見ればすべなし  〇

3918     万葉短歌4237 ShuJ231 2022-0108-man4237

□うつつにと おもひてしかも いめのみに
  たもとまきぬと みればすべなし
○=作者未詳。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第99首。前歌(4236、長歌)の題詞に、「悲傷死妻(〔し〕にし〔つま〕を かなしぶる)歌一首 并短歌 作主未詳」、その「反歌一首」。左注に、「右二首伝誦遊行女婦蒲生是也」。
【訓注】うつつにと(寤尓等)。夢(いめ)。思ひてしかも(おもひてしかも=念氐之可毛)[「<てしかも>は願望を表わす」]。手本まき寝(たもとまきぬ=手本巻寐)。


万葉短歌4235 天雲を3917

2022年01月07日 | 万葉短歌

2022-0107-man4235
万葉短歌4235 天雲を3917

天雲を ほろに踏みあだし 鳴る神も
今日にまさりて 畏けめやも  県犬養三千代

3917     万葉短歌4235 ShuJ231 2022-0107-man4235

□あまくもを ほろにふみあだし なるかみも
  けふにまさりて かしこけめやも
○県犬養三千代(あがたのいぬかひの みちよ)=原文は「県犬養命婦」(あがたのいぬかひの みゃうぶ)。「県犬養宿祢三千代。・・・天平五年(733)没」。<708年(和銅1)11月、歴代の天皇に仕えた功により橘宿祢の氏姓を賜った(平凡社『世界大百科事典』)>」。橘三千代。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第97首。題詞に、「太政大臣(だじゃうだいじん)藤原家之(ふぢはらけの)県犬養命婦奉 天皇(すめらみことに たてまつる)歌一首」、左注に、「右一首伝誦(でんしょうすろは)掾久米朝臣広縄也」。
【訓注】ほろに踏みあだし(ほろにふみあだし=富呂尓布美安太之)[「<ほろに>はばらばらに砕けるさま。・・・<あだす>〔は〕・・・乱す、荒す、打ち砕く・・・」]。畏けめやも(かしこけめやも=可之古家米也母)[「雷への恐怖も天皇への畏懼にはとうてい及ばない・・・」]。


万葉短歌4234 鳴く鶏は3916

2022年01月06日 | 万葉短歌

2022-0106-man4234
万葉短歌4234 鳴く鶏は3916

鳴く鶏は いやしき鳴けど 降る雪の
千重に積めこそ 我が立ちかてね  大伴家持

3916     万葉短歌4234 ShuJ230 2022-0106-man4234

□なくとりは いやしきなけど ふるゆきの
  ちへにつめこそ わがたちかてね
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第96首。題詞に、「守大伴宿祢家持和歌一首」。
【訓注】いやしき(弥及)。降る雪(ふるゆき=落雪)。積めこそ(つめこそ=積許曽)[「積めばこそ」]。我が立ちかてね(わがたちかてね=吾等立可氐祢)[「私どもは腰をあげかねているのです」]。


万葉短歌4233 うち羽振き3915

2022年01月05日 | 万葉短歌

2022-0105-man4233
万葉短歌4233 うち羽振き3915

うち羽振き 鶏は鳴くとも かくばかり
降り敷く雪に 君いまさめやも  内蔵縄麻呂

3915     万葉短歌4233 ShuJ230 2022-0105-man4233

□うちはぶき とりはなくとも かくばかり
  ふりしくゆきに きみいまさめやも
○内蔵縄麻呂(くらの つなまろ)=17-3996歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第95首。題詞に、「于是(ここに)諸人(もろひと)酒酣(たけなはにして)更深(よふけて)鷄鳴 因此(これによりて)主人(あるじ)内蔵伊美吉(くらのいみき)縄麻呂作歌一首」。
【訓注】うち羽振き(うちはぶき=打羽振)。かくばかり(如此許)。降り敷く雪(ふりしくゆき=零敷雪)。いまさめやも(伊麻左米也母)[「どうして帰られましょうか」「<います>は帰り行く意の尊敬語」]。


万葉短歌4232 雪の山斎3914

2022年01月04日 | 万葉短歌

2022-0104-man4232
万葉短歌4232 雪の山斎3914

雪の山斎 巌に植ゑたる なでしこは
千代に咲かぬか 君がかざしに  蒲生娘子

3914     万葉短歌4232 ShuJ227 2022-0104-man4232

□ゆきのしま いはほにうゑたる なでしこは
  ちよにさかぬか きみがかざしに
○蒲生娘子(かまふの をとめ)=「伝未詳」。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第94首。題詞に、「遊行女婦(うかれめ)蒲生娘子歌一首」。
【訓注】雪の山斎(ゆきのしま=雪島)[「<山斎>は泉水や築山などのある庭」。03-0452吾山斎者(わがしまは)、20-4511(題詞)属目山斎(しまをみて)、(歌)伎美我許乃之麻(きみがこのしま)]。なでしこ(奈泥之故)。


万葉短歌4231 なでしこは3913

2022年01月03日 | 万葉短歌

2022-0103-man4231
万葉短歌4231 なでしこは3913

なでしこは 秋咲くものを 君が家の
雪の巌に 咲けりけるかも  久米広縄

3913     万葉短歌4231 ShuJ227 2022-0103-man4231

□なでしこは あきさくものを きみがいへの
  ゆきのいはほに さけりけるかも
○久米広縄(くめの ひろつな)=18-4050歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第93首。題詞に、「于時([とき]に)積雪彫成(ゑりなし)重巖之起(ちょうがんの たてるを)奇巧(たくみに)綵発(いろどりいだす)草樹之花 属此(これにつきて)掾久米朝臣広縄作歌一首」。
【訓注】なでしこ(奈泥之故)。秋咲くもの(あきさくもの=秋咲物)。君が家(きみがいへ=君宅)。雪の巌(ゆきのいはほ=雪巌)[「雪で作り成した巌」。館主縄麻呂が造花の撫子と一体化させた]。


万葉短歌4230 降る雪を3912

2022年01月02日 | 万葉短歌

2022-0102-man4230
万葉短歌4230 降る雪を3912

降る雪を 腰になづみて 参り来し
験もあるか 年の初めに  大伴家持

3912     万葉短歌4230 ShuJ227 2022-0102-man4230

□ふるゆきを こしになづみて まゐりこし
  しるしもあるか としのはじめに
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻19(4139~4292、百五十四首)の第92首。左注に、「右一首三日会集([くゎいしふ]して)介内蔵忌寸縄麻呂之館(すけ くらのいみきが たちに)宴楽(ゑんらくする)時大伴宿祢家持作之」([ ]内は編者補遺)。
【訓注】降る雪(ふるゆき=落雪)。年の初め(としのはじめ=年之初)。内蔵忌寸縄麻呂[17-3996歌注参照]。