作品名:「19分25秒」
作者:引間徹

あらすじ)
世界記録を凌駕するような圧倒的な速度で歩く男。漆黒の衣服に身を包み、正確かつ驚異的な速度で歩を進める男の片足には義足がついていたが、男はそんなハンディを物ともしない。
主人公はそんなサイボーグじみた男に惹かれはじめ、自分も未体験の競歩にのめり込んでいく。
感想)
一文一文に脈動を感じる。挑む者の呼吸を。そして孤独に奮闘する男の筋肉のうねりすらも。
本作は、一般の人にとって馴染みの少ない「競歩」というスポーツジャンルを取り扱った異色作。運動科学の面からもためになる作品。
競歩には以下の縛り(ルール)がある。
① どちらかの足が地面に付いていなければならない
② 接地した脚は、地面と垂直になるまで、膝を伸ばさなければならない
作中にも描かれているが、この競歩ルールに則った「歩き方」は最初の数分間こそ比較的楽だが、それ以降は未知の体験になる。試しに実践してみると10分も実践しないうちにその壮絶さがよくわかる。
この小説を読み終わった後では。「ただ(惰性的に)走る」という行為が以下に易しい行為であるのかを痛感する。
群れることを嫌い、世間からの評価を下らないと見下す孤高の男には、近寄りがたい印象を受けるが、同時に優しさを感じるのはなぜだろうか。
男がどのような経緯で「義足」というアイデンティティを持つに至ったかの経緯は終始描かれていないが、それでもなお圧倒的な疾走力を披露する様子からは、男がどれほど自分に過酷な行いを強いてきたかを想像するのが難くない。
一昔前の作品のため、登場する女の子や、装飾物(ウォークマン等)の描写にも懐かしいものを感じるが、今読んでも違和感をそこまで感じる事がない。
男は完全に社会から孤立している。
取り立てて大きな野心もなく、ただ漠然と就職する事が確定していた大学生の主人公にとっては、ただひたすらに孤高を貫く男との出会いは自分の価値観を根本から揺るがすこととなるが、誰にも頼ることなく、自分の体だけを頼りに生きていくという
男の凄味が非凡な人間の精神にどのように影響を及ぼしていくかの過程も面白い。
作者:引間徹
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あらすじ)
世界記録を凌駕するような圧倒的な速度で歩く男。漆黒の衣服に身を包み、正確かつ驚異的な速度で歩を進める男の片足には義足がついていたが、男はそんなハンディを物ともしない。
主人公はそんなサイボーグじみた男に惹かれはじめ、自分も未体験の競歩にのめり込んでいく。
感想)
一文一文に脈動を感じる。挑む者の呼吸を。そして孤独に奮闘する男の筋肉のうねりすらも。
本作は、一般の人にとって馴染みの少ない「競歩」というスポーツジャンルを取り扱った異色作。運動科学の面からもためになる作品。
競歩には以下の縛り(ルール)がある。
① どちらかの足が地面に付いていなければならない
② 接地した脚は、地面と垂直になるまで、膝を伸ばさなければならない
作中にも描かれているが、この競歩ルールに則った「歩き方」は最初の数分間こそ比較的楽だが、それ以降は未知の体験になる。試しに実践してみると10分も実践しないうちにその壮絶さがよくわかる。
この小説を読み終わった後では。「ただ(惰性的に)走る」という行為が以下に易しい行為であるのかを痛感する。
群れることを嫌い、世間からの評価を下らないと見下す孤高の男には、近寄りがたい印象を受けるが、同時に優しさを感じるのはなぜだろうか。
男がどのような経緯で「義足」というアイデンティティを持つに至ったかの経緯は終始描かれていないが、それでもなお圧倒的な疾走力を披露する様子からは、男がどれほど自分に過酷な行いを強いてきたかを想像するのが難くない。
一昔前の作品のため、登場する女の子や、装飾物(ウォークマン等)の描写にも懐かしいものを感じるが、今読んでも違和感をそこまで感じる事がない。
男は完全に社会から孤立している。
取り立てて大きな野心もなく、ただ漠然と就職する事が確定していた大学生の主人公にとっては、ただひたすらに孤高を貫く男との出会いは自分の価値観を根本から揺るがすこととなるが、誰にも頼ることなく、自分の体だけを頼りに生きていくという
男の凄味が非凡な人間の精神にどのように影響を及ぼしていくかの過程も面白い。