風の吹くまま

大好きな自動車について、思いついたことを投稿します。

伝統について

2008-02-27 14:58:43 | スポーツカー
昔のフェラーリの車名が、
1気筒あたりの排気量から名づけられていたのは有名な話です。
250GTOなら1気筒250cc、275GTBなら1気筒275ccといった具合。

これは、レーシングチームとして創設されたフェラーリ社が、
1940年代後半に自社で12気筒のマシンをつくり始めてから、
長い間守られてきた伝統のようなものでした。

フェラーリの歴史の詳細に明るくない僕が私見を書くのは、
本当に詳しい方々からヒンシュクを買ってしまうかもしれませんが、
想像するに、当時の車名は、

「ウチ(フェラーリ)は、世界最高の12気筒マシンをメインに製作するメーカーです。基本は12気筒マシンなのだから、総排気量をわざわざ車名に入れる必要などありません。1気筒分の排気量さえ分かれば、後は名前を見た人が勝手に12で掛けてくれればいいのです」

というポリシーを表していたのではないでしょうか。
(※4気筒レースカーの750MONZAなど、一部例外は存在しますが)
そうした背景から、フェラーリのオールドファンの中には、
市販車もレーシングカーも含めて、

「12気筒でなければフェラーリではない」

と考える方も多かったようですし、
それはフェラーリF1マシンの開発陣にとっても同じだったのでしょう。
V6が主流だったターボ時代を除いて、NAのフェラーリF1マシンは、
常に12気筒エンジンにこだわり続けました。
1990年代半ば、他のメーカーが高性能なV10エンジンをつくり、
すでに性能的重量的に不利になっていたにも関わらず、
フェラーリだけは12気筒マシンで数年間粘り、
「超高音のむせび泣くような12気筒サウンド」をサーキットに轟かせていたのです。
もっともF1マシンの型番に関しては、
1気筒あたりの排気量を表してはいませんでしたが……。

市販車に目を転ずれば、そんなフェラーリの伝統を破ったのは、
いまだにフェラーリ・ファンの垂涎の的であり続ける、
究極に美しいミッドシップカーのディーノ206GTでした。
自動車ファンなら誰もがご存じのことですが、
ディーノはV6エンジンを搭載し、
ネーミングも2000ccの6気筒を表していました。
後に排気量が2400ccにアップして、246GTとなりました。

ディーノに関して、これも勝手な想像ですが、エンツォは、

「ディーノはワタシの名前(フェラーリ)ではなく、若くして亡くなった愛しい息子のアルフレード(愛称ディーノ)の名からとった、新しいブランド名である。だからどこにもフェラーリのエンブレムはつけない。フェラーリではないのだから、12気筒である必要はなく、フェラーリの伝統を破ったことにはならない。こういう形なら、オールドファンたちが目くじらを立てることもあるまい。いずれ時が経てば、彼らにもディーノの良さを分かってもらえるはずだ」

と考えていたのではないでしょうか。
ディーノが世界中のスポーツカーファンから愛され、
ピッコロ・フェラーリが確たる地位を築いてからは、
そうした区別をつける必要がなくなり、
やがてすべてフェラーリと名づけられるようになったのでしょう。

さて、そんなフェラーリの伝統を守った最後の市販マシンが、
「大阪オートメッセ」に展示されていました。
カウンタックと並んでスーパーカーブームの主役を演じた、
フェラーリ365GT4/BBです。言うまでもなく、
1気筒あたり365ccの12気筒エンジンを搭載しています(笑)。
のちにマイナーチェンジをしたとき、512BBと名前が変わり、
フェラーリのネーミングの伝統は、ここで終了したわけです。
蛇足ですが、512は「5リットル12気筒」を表しています。

365と512の外観上の主な違いは、
テールランプが左右3灯ずつだったのが2灯ずつになり、
テールカッターが左右3本ずつだったのが2本ずつになり、
左右のドアの後ろにエアインテークが追加されたことくらいでしょうか。
そんなに大きく変わっているわけではありませんが、
「365のほうがカッコいい」という意見もあるようです。
僕はどっちも大好きです(笑)。

長くなりました。
それでは写真を掲載して今日の更新を終わりたいと思います。