ジョカトーレさんが面白い記事を書いている。
http://giocatore.blog9.fc2.com/blog-entry-4014.html
それに関連して私論を述べていこう。
国際競争力を高めるために、法人税減税と消費税増税をセットで考えるべき、という話は、私自身、日本経済新聞を購読しているので、毎日のように目にする。
今月6日の日経の記事に、「日本再生なるか」と題したページが掲載されていた。それにしても、日本の競争力低下は目を覆わんばかり。
液晶パネルは1995年には100%のシェアを記録していたのに、2005年にはわずか10%、同じくDVDプレーヤーは1997年には95%のシェアだったものが、2006年には20%にまで落ち込んでいる。
こうした競争力低下を、経済学者や評論家の多くが、日本は法人税率が高い、これでは売れないのが当たり前、と考え、国際競争力向上のため、「同じ土俵」に乗せるべきだという主張なのだろう。
しかし、肝心なことが欠落しているのではないか。つまり、日本の製品、商品って、本当に今、「世界一の水準」なのか?ということを。
最も顕著な例、それは携帯電話ではないか。
日本では、20世紀末期に携帯電話の爆発的普及が起こり、「失われた10年」が続いていた当時の日本経済としては数少ない急成長分野だったため、各メーカーは次々とモデルチェンジを図っていった。 また、早めに「買い替え」したほうがユーザーにとってみても「安上がり」というシステムがとられていたため、頻繁にモデルチェンジをしても儲けられたというわけだ。
ところが、21世紀に入ると、携帯電話の加入者数が頭打ちとなり、加えて諸外国と比較して通話料が割高であるとの批判が出始めたこともあり、従来型のビジネスモデルは通用しなくなっていった。そして、国内市場での疲弊が露呈するようになり、海外市場への対応まで手が回らなくなってしまった。
結果、早期にCDMAという世界基準の移動システムをいち早く取り入れた韓国のサムソンやLGが海外市場を席巻するようになり、メイドインジャパン携帯は海外市場から締め出されてしまった。
おまけに、携帯電話通信システムとして、日本では画期的と言われたiモードは、海外ではほとんど普及していない。
この携帯電話の「つまづき」が、他の業種にも影響しているというのが、今の日本の現状ではないか。そうした認識をしっかりと把握できていなければ、いくら法人税を引き下げたところで、日本の国際競争力など向上しない。
かつてのメイドインジャパンの強さは、諸外国の状況を踏まえた対応の良さにあったはずだ。それが今や、上記の携帯電話に代表されるように、世界のニーズに合わないものが多くなった。だから売れない、というのが現状だろう。
特に今、大企業経営者の経営感覚の「鈍さ」が影響しているような気がしてならない。もっといえば、今の大企業経営者は、モノを作って儲けることよりも、カネを転がして利ざやを掬い取ることのほうに興味がいっているみたい。こうした考えである限り、大企業に雇用を創出する力は生まれない。
また、確かに大企業の内部留保は膨れ上がっているんだが、結局これは、過去の蓄積がかろうじてまだ生きているだけに過ぎず、いずれ海外企業の製品が広くあまねく日本市場を席巻するようになると、恐らく、今のままでは内部留保は藻屑のごとく消えかねない。
となれば今、日本では新たな産業分野の開拓が待たれるところ。
単純な国際競争力という言葉だけにに囚われていた自公政権とは違い、政権交代を実現させた鳩山内閣では、環境、医療・介護分野への重点戦略を打ち出し、菅内閣でもそれは概ね継承されることになったが、その一方で、具体的なプランをまだ打ち出せていないのが現状。
これまで述べてきたことを踏まえると、法人税減税云々の論議よりも、民主党を中心とする政権が掲げる、重点戦略を先にまとめることのほうが大事なのではないのか。それをなおざりにしたまま、法人税減税ばかり先走っても、それこそ、携帯電話のごとくになりかねず、結局は、庶民だけに重い負担だけを強いることになりかねない。