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中国では、中央や地方政府の公務員になること、国有企業に就職することを「“体制内”に入る」と言う。一党支配の共産党の統治システムの歯車の1つになるのだ。

2025-03-08 03:48:45 | 政治経済問題
倍率1万6000倍?中国若者殺到する“体制内”とは? NHK 2025年3月7日 20時08分

「昔は“体制内”に入るなんて考えられませんでした。でもいまは、“体制内”に入りたい」

ちょうど1年前、あるイベントで知り合った30歳(当時)のエリート青年はこう、つぶやいた。

中国では、中央や地方政府の公務員になること、国有企業に就職することを「“体制内”に入る」と言う。一党支配の共産党の統治システムの歯車の1つになるのだ。

国家公務員試験の倍率は、最も高い職種で1万6000倍になるものも。

なぜ、中国の若者たちは“体制内”を望むのか。その声を追っていく。

(中国総局記者 高島浩)

「“体制内”に入りたい」
私がその青年と出会ったのは、彼がIT企業の退職手続きを終え、有給休暇を消化していた時だった。

地方出身の青年は中国有数の名門大学を卒業したあと、中国の大手IT企業に就職。得意の語学を駆使し、世界を相手にしたプロジェクトにも携わってきた。

「なぜそんなによい条件を捨ててしまうのか」

そう尋ねると、青年は「“体制内”に入りたい。いつリストラされるかわからない状況は理想的ではありません。せめて自分が進む道は自分の手でコントロールしたいんです」と語った。
英語 日本語が堪能でも…
中国ではいま、リストラの嵐が吹き荒れている。

安泰と思われていた大手企業も例外ではない。SNS上では、突然の解雇通知を嘆く若い世代の投稿があふれている。
そうした人たちにコンタクトを取り続け、1人の女性が「取材に応じてもいい」と返事をくれた。

東北部・遼寧省の経済都市、大連に住む韓爽さん。30歳だ。

地元で有数の工業大学で学び、6年間中国企業で働いたあと、キャリアアップを図ろうと3年前にアメリカ系の大手通信会社に転職。大学時代に習得した英語、それに日本語を生かし、日系企業などの技術サポートを担当してきた。
韓爽さん
順調に人生の階段を上っている。そう思っていた矢先、韓さんはことし2月に突然、解雇を言い渡されたと言う。
韓さん
「本当にこの会社が好きで、スキルアップのための研修にも積極的に参加して、自分の成長のために努力もしてきたので、解雇通知の電話を受けたときはとてもショックでした。
夜中に目が覚めて焦燥感に襲われたり、日中も自暴自棄になったりしました。思い描いていた未来がありましたが、今は立ち止まって自分の人生を振り返る時期だと考えるようにしています」
解雇の理由は、景気悪化による中国事業の縮小。

韓さんが所属するチーム30数人のうちおよそ3割がリストラされた。周りの同僚が次々と解雇される中、自分もそうなるのではないか。そんな不安もあったという韓さん。

不景気で再就職をするにも激しい競争が想定される中、「得意の英語や日本語を生かして、海外で働くことも検討している」と明るく話すが、30歳という節目の年齢での失業に、無力感を感じているようにも見えた。
韓さん
「中国を始め、世界中が不景気な状況で、失業は自分でどうこうできることではなく、現実を受け入れなければ前に進めないと思います。ただ、30歳という年齢はもう若くはないですし、大学を卒業したばかりの人たちとは活力も競争力も劣ってしまいます」
倍率1万6000倍の“体制内”
冒頭の青年が身を置くIT業界もリストラが相次ぎ、いつ自分がクビを宣告されるか分からない状態だった。この1年、何度も彼と会う中で、次第に苦しい胸の内を明かしてくれるようになった。
青年
「私が大学を卒業した頃は民間企業がとても勢いがあり、みんな高い給与を求めて就職していました。体制内に入るなんて考えられませんでした。給与が低い“死の賃金”と呼ぶぐらいでしたから。でもいまはそんなことを言っていられません。安定が一番です。私のようなマネージメントの職種では、唯一無二の価値を見いだすのが難しい。だから焦っています」
かつては人気がなかったが、いま“体制内”に入るのは至難の業だ。

中国政府が公表している国家公務員試験の志願者はことし341万人と、コロナ前から2.5倍近く急増している。

定員に対する倍率が平均で86倍。最も倍率の高い職種はなんと1万6000倍で、中国メディアも「史上最も熾烈な競争になっている」と、その衝撃を表現した。

中国の民間人材会社が去年行った調査では、就職を目指す大学生の実に7割以上が“体制内”を希望し、民間企業を希望したのはわずか12.5%にとどまった。
青年
「多くの大学生が“体制内”を目指すようになって競争は非常に激烈になっています。私には新卒という優位性がなく、体制側も新卒枠は多く設けていますが、社会人枠は少ないのが現実です。35歳以下というのが体制内に入るひとつの条件であり、民間企業でも35歳を境に転職の難しさが一段と上がります。それまでに何も成果がなければ、その後の道のりは険しくなってしまいます」
党の学校に試験を受けに来た若者たち(北京 2月)
新卒1200万人 高止まりする失業率
新卒の若者の数自体も右肩上がりに増え続けている。

ことしは1200万人超と過去最多の見込みで、就職戦線の激しさは高止まりする若者の失業率に如実に表れている。

中国の国家統計局は2018年から若者(16歳~24歳)の失業率をいまの形式で発表していて、開始当時は10%程度だったが、コロナ禍を経た2023年6月には倍以上の21.3%と過去最悪となった。

直後に国家統計局は「状況を正確に反映できていない」として失業率の公表を停止した。

公表が再開された半年後の失業率は14.9%。最新のことし1月では16.1%と高止まりしている状態だ。
習主席の言葉と共産党への忠誠を
大学を出ても職が無い、就職できても常にリストラと隣り合わせ。若者が安定を求める大きな理由の1つだ。

こうした中、“体制内”を目指すための私塾が活況を呈している。

地方政府の面接試験を1週間後に控えた2月上旬、上海郊外にあるホテルでは、私塾が受講生およそ20人を集めて泊まり込みの勉強合宿を行っていた。
公務員試験に向けた勉強合宿(上海 2月)
テーブルには面接の予想問題と模範解答集が山積みされ、受講生は朝から晩まで模範解答を頭の中にたたき込んでいた。

私塾の経営者で講師を務める女性によると、ポイントは中国共産党の政策を理解してそれを肯定しつつ、いかにみずからの意見を述べるか、だ。

例えば、経済成長を内需主導へと転換させる政策では、その意義に加え、習近平国家主席が重要会議で述べた言葉を理解して「安定した質の高い成長」が要点であることを肯定した上で、どのような対策が必要かを答えていく。

「党への忠誠心と人民への恩を保持すべき」といった習主席の言葉と共産党への絶対的な忠誠は言うまでもない。

「あなたたちのような優秀な人材が“体制内”に入ってこそ、国家の未来はより大きな希望があるのです。そうは思いませんか。だからあなたたちのいまの努力は価値があるのです」

私塾の講師はそう言って受講生たちを鼓舞していた。
私塾の講師
「恥ずかしくない生活とそこそこの収入を」
受講生の1人が匿名を条件に取材に応じてくれた。

25歳の男性は大学院で土木分野の研究をしていて、以前は給与の高い民間企業への就職を考えていた。

しかし、長引く不動産不況の影響で企業の採用数が激減、要求される学歴もさらに高いものとなり断念せざるを得なかったという。

ただ、公務員試験の面接は独特で苦手なため、内陸部の湖北省からわざわざ上海まで出てきて勉強合宿に参加した。2人1部屋でホテルに10泊、費用は日本円でおよそ20万円。決して安くないが、背に腹は代えられない。

男性は「欲しいのは、将来、失業しない保証です。恥ずかしくない生活とそこそこの収入。それだけあれば、ほかに求めるものはありません」と話していた。
“体制内”目指した青年はいま…
1年前に出会った青年はいま、小さなゲーム会社に就職している。

国有企業への就職はうまくいかず、無職では生活が厳しいからだ。

ゲーム会社も仕事は激務で「疲れています」とこぼしていたが、それでも“体制内”を目指して就職活動は続けている。その理由を、次のように語った。
青年
「民間企業はより効率を求め、台頭するAIが仕事面で人に取って代わることが今後さらに予想されます。リストラの嵐が再びやってくることは確実です。それに比べて、“体制内”は私に居場所を与えてくれるし、保護してくれるのです」
取材を通じて
この1年で出会った若者の多くが安定を求めていることは、いまの中国社会がいかに不確実性に満ちているかをそのまま映している。

今回の記事に書いた3人は前を向いて努力しようとしているが、中には努力が報われないと諦め最低限の暮らしを選ぶ人や、経済的な負担から逃れたいと結婚や子どもを持つことを避ける人もいた。

雇用不安が少子化や消費低迷へとつながり、中国社会が大きな曲がり角にあることを改めて実感した。

3月5日に開幕した全人代=全国人民代表大会で、大半を政策成果の誇示に費やす共産党指導部の姿は、若者の目にどのように映っているのだろうか。建て前を抜きにして“体制内”に何かを期待して目指そうとする若者に私は出会っていない。
(3月5日おはよう日本で放送)
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