
【発生1週間】大船渡 山林火災 なぜ延焼続く?鎮火のめどは? NHK 2025年3月5日 15時47分
先月26日から発生している岩手県大船渡市の山林火災。今月5日で発生から1週間となりましたが、鎮火のめどは立っていません。日々延焼が拡大する現場。最新の状況や消火が難しい要因など、いま知りたい情報をまとめました。
今回の山林火災 いつ どこで発生した?
大船渡市で山林火災が発生したのは、先月26日の午後です。
大船渡市の赤崎町合足地区と、三陸町綾里の小路地区と田浜地区など複数の場所で火災が起きました。
当日、大船渡市を含む岩手県の沿岸南部では1週間余り前の18日から乾燥注意報が発表されるなど空気が乾いた状態が続いていたうえ、強風注意報も発表されていて、大船渡市では26日の午後1時半ごろに18.1メートルの最大瞬間風速を観測していました。
「乾いた空気」と「強い風」のもと、赤崎町合足地区から北東に向けて延焼が広がっていきました。
その日の午後5時の時点で焼失した面積は600ヘクタール以上にのぼり、あっという間に被害が拡大しました。
翌27日には赤崎町合足地区の西側に向けて燃え広がっていることが確認され、28日午前には2日前と比べて2倍にあたるおよそ1200ヘクタールが焼失しました。
その後も火の勢いは収まらず、今月2日には、赤崎町合足地区や三陸町綾里の広い範囲が焼け、焼失した面積はおよそ1800ヘクタールに、3日には、およそ2100ヘクタールにまで拡大しました。
被害の最新状況は
最新の県の発表では、今月5日午前6時の時点で焼失した面積はおよそ2900ヘクタールにまで拡大しています。
これがどのくらいの広さかというと、大船渡市全体の実に9%に相当しています。
三陸町綾里や赤崎地区の山林の広い範囲が延焼したとみられています。
懸念される住宅地や建物の被害ですが、実は詳しい状況が分かっていません。
大船渡市は、火災が起きた26日夜の時点で、少なくともあわせて84棟の住宅などの建物が延焼したとみられると発表していますが、それ以降、追加の発表がないからです。
連日、岩手県や大船渡市からは焼失エリアやどの地域に延焼が広がっているか、消火活動の態勢などさまざまな情報が公表されていますが、建物などの被害について言及はありません。
延焼が続く中、消火活動に専念していることから、被害の調査を行うことができていないためです。
これまでに三陸町綾里の小路地区で男性とみられる1人の遺体が見つかっています。
大船渡市は、三陸町の綾里全域と越喜来の3つの地区、それに赤崎町の13の地区に避難指示を出しています。
市の14%にあたる住民が対象で、先行きの見えない避難が続いています。
なぜ延焼が拡大している?
延焼が拡大している要因について森林総合研究所の玉井幸治研究ディレクターは、空気の乾燥や強風といった火災のリスクの高い状態が続き、落ち葉など地表が燃えただけでなく、木の枝葉全体が燃える樹冠火も発生し、延焼のスピードが上がったためと分析しています。
消火活動はどのように行われている?
消防と自衛隊による上空と地上からの消火活動が続けられています。
消防では全国各地の消防から派遣された2000人を超える隊員が県内の消防とともに消火にあたっています。
例えば今月4日でみてみると、総務省消防庁の要請を受けて、北海道、東北や関東などの14都道県の消防から「緊急消防援助隊」として542隊2043人が派遣され、消火活動にあたりました。
さらに自衛隊や各自治体のヘリコプターなどあわせて19機が上空から放水や火災の状況の確認などを行いました。
消火活動を難しくしているのは?
現場で活動の調整を担当している仙台市消防局は、消火活動を難しくしている要因として「変わりやすい気象条件」や「複雑な地形」をあげています。
現地では、火災の発生以降、雨や雪が少なく乾燥した状態が続いているうえ、風の向きや強さも変わっているため、消火にあたる消防隊員の配置が決めづらい課題があるということです。
さらに狭い湾が入り組んだリアス式の海岸線をもつ大船渡市特有の地形があります。
湾に沿って傾斜が急な山々も連なり、道路も狭くカーブが多くなっています。
このため大型の消防車両が火災現場まで接近しづらく、地上からホースでの消火が思うようにできないことや、湾の海水を使おうとしても車両の移動がスムーズに出来ないところもあるということです。
さらに、山林火災の延焼範囲が広い上、消火活動に制限があることも指摘されています。
日中は自衛隊や消防のヘリコプターが上空から放水していますが、2次災害を防ぐため、夜間は行われていません。
消防大学校の元教授の冨岡豊彦さんは日中の消火活動でいったん下火になったとしても、夜に再び火の勢いが戻ってしまっている可能性があると指摘しています。
また、急な斜面が連なる現場は、安全管理の難しさもあります。
冨岡さんによると1971年に広島県で起きた山林火災では、飛び火で周囲に燃え広がり20人近くの隊員が殉職した教訓から、山林火災の消防活動は慎重な対応が求められるといいます。
5日は雨 鎮火の見通しは?
発生から1週間となった5日時点で、鎮火の見通しは立っていません。
大船渡市では5日未明から雪が降ったあと、午前中には雨に変わりました。
大船渡市を含む岩手県の沿岸南部では、6日昼までの24時間に40ミリの雨が降ると予測されています。
先月26日の火災発生以降、初めてまとまった雨が降る見込みです。
予想される雨量が降った場合、山林火災の収束に与える影響はあるのか。
さきほどの森林総合研究所の玉井幸治研究ディレクターに聞いたところ、この雨の効果について玉井さんは「数ミリ程度の雨だと枝葉にさえぎられたり落ち葉を湿らしたりして終わるが、数十ミリ降れば地中に水がしみこんで火種を消すことにもつながる。鎮圧に大きな進展がある」と話しています。
そのうえで「この時期はまだ落葉樹が芽吹いていないので林床に届く光の量が多い。晴れた日が2、3日続くと落ち葉が乾燥して再び火災のリスクが上がるため、火の取り扱いには今後も注意が必要だ」と呼びかけています。
先月26日から発生している岩手県大船渡市の山林火災。今月5日で発生から1週間となりましたが、鎮火のめどは立っていません。日々延焼が拡大する現場。最新の状況や消火が難しい要因など、いま知りたい情報をまとめました。
今回の山林火災 いつ どこで発生した?
大船渡市で山林火災が発生したのは、先月26日の午後です。
大船渡市の赤崎町合足地区と、三陸町綾里の小路地区と田浜地区など複数の場所で火災が起きました。
当日、大船渡市を含む岩手県の沿岸南部では1週間余り前の18日から乾燥注意報が発表されるなど空気が乾いた状態が続いていたうえ、強風注意報も発表されていて、大船渡市では26日の午後1時半ごろに18.1メートルの最大瞬間風速を観測していました。
「乾いた空気」と「強い風」のもと、赤崎町合足地区から北東に向けて延焼が広がっていきました。
その日の午後5時の時点で焼失した面積は600ヘクタール以上にのぼり、あっという間に被害が拡大しました。
翌27日には赤崎町合足地区の西側に向けて燃え広がっていることが確認され、28日午前には2日前と比べて2倍にあたるおよそ1200ヘクタールが焼失しました。
その後も火の勢いは収まらず、今月2日には、赤崎町合足地区や三陸町綾里の広い範囲が焼け、焼失した面積はおよそ1800ヘクタールに、3日には、およそ2100ヘクタールにまで拡大しました。
被害の最新状況は
最新の県の発表では、今月5日午前6時の時点で焼失した面積はおよそ2900ヘクタールにまで拡大しています。
これがどのくらいの広さかというと、大船渡市全体の実に9%に相当しています。
三陸町綾里や赤崎地区の山林の広い範囲が延焼したとみられています。
懸念される住宅地や建物の被害ですが、実は詳しい状況が分かっていません。
大船渡市は、火災が起きた26日夜の時点で、少なくともあわせて84棟の住宅などの建物が延焼したとみられると発表していますが、それ以降、追加の発表がないからです。
連日、岩手県や大船渡市からは焼失エリアやどの地域に延焼が広がっているか、消火活動の態勢などさまざまな情報が公表されていますが、建物などの被害について言及はありません。
延焼が続く中、消火活動に専念していることから、被害の調査を行うことができていないためです。
これまでに三陸町綾里の小路地区で男性とみられる1人の遺体が見つかっています。
大船渡市は、三陸町の綾里全域と越喜来の3つの地区、それに赤崎町の13の地区に避難指示を出しています。
市の14%にあたる住民が対象で、先行きの見えない避難が続いています。
なぜ延焼が拡大している?
延焼が拡大している要因について森林総合研究所の玉井幸治研究ディレクターは、空気の乾燥や強風といった火災のリスクの高い状態が続き、落ち葉など地表が燃えただけでなく、木の枝葉全体が燃える樹冠火も発生し、延焼のスピードが上がったためと分析しています。
消火活動はどのように行われている?
消防と自衛隊による上空と地上からの消火活動が続けられています。
消防では全国各地の消防から派遣された2000人を超える隊員が県内の消防とともに消火にあたっています。
例えば今月4日でみてみると、総務省消防庁の要請を受けて、北海道、東北や関東などの14都道県の消防から「緊急消防援助隊」として542隊2043人が派遣され、消火活動にあたりました。
さらに自衛隊や各自治体のヘリコプターなどあわせて19機が上空から放水や火災の状況の確認などを行いました。
消火活動を難しくしているのは?
現場で活動の調整を担当している仙台市消防局は、消火活動を難しくしている要因として「変わりやすい気象条件」や「複雑な地形」をあげています。
現地では、火災の発生以降、雨や雪が少なく乾燥した状態が続いているうえ、風の向きや強さも変わっているため、消火にあたる消防隊員の配置が決めづらい課題があるということです。
さらに狭い湾が入り組んだリアス式の海岸線をもつ大船渡市特有の地形があります。
湾に沿って傾斜が急な山々も連なり、道路も狭くカーブが多くなっています。
このため大型の消防車両が火災現場まで接近しづらく、地上からホースでの消火が思うようにできないことや、湾の海水を使おうとしても車両の移動がスムーズに出来ないところもあるということです。
さらに、山林火災の延焼範囲が広い上、消火活動に制限があることも指摘されています。
日中は自衛隊や消防のヘリコプターが上空から放水していますが、2次災害を防ぐため、夜間は行われていません。
消防大学校の元教授の冨岡豊彦さんは日中の消火活動でいったん下火になったとしても、夜に再び火の勢いが戻ってしまっている可能性があると指摘しています。
また、急な斜面が連なる現場は、安全管理の難しさもあります。
冨岡さんによると1971年に広島県で起きた山林火災では、飛び火で周囲に燃え広がり20人近くの隊員が殉職した教訓から、山林火災の消防活動は慎重な対応が求められるといいます。
5日は雨 鎮火の見通しは?
発生から1週間となった5日時点で、鎮火の見通しは立っていません。
大船渡市では5日未明から雪が降ったあと、午前中には雨に変わりました。
大船渡市を含む岩手県の沿岸南部では、6日昼までの24時間に40ミリの雨が降ると予測されています。
先月26日の火災発生以降、初めてまとまった雨が降る見込みです。
予想される雨量が降った場合、山林火災の収束に与える影響はあるのか。
さきほどの森林総合研究所の玉井幸治研究ディレクターに聞いたところ、この雨の効果について玉井さんは「数ミリ程度の雨だと枝葉にさえぎられたり落ち葉を湿らしたりして終わるが、数十ミリ降れば地中に水がしみこんで火種を消すことにもつながる。鎮圧に大きな進展がある」と話しています。
そのうえで「この時期はまだ落葉樹が芽吹いていないので林床に届く光の量が多い。晴れた日が2、3日続くと落ち葉が乾燥して再び火災のリスクが上がるため、火の取り扱いには今後も注意が必要だ」と呼びかけています。